第29話 同じ塾で隣の席の女の子とデートしました。 ③

「うわっ……なんか凄いことになってる」


「見たことないゲーム機いっぱいだね! あっカフェもできてるよ!」


「なんか一気に都会のゲームセンターみたいな感じになったなぁ」


 俺達はゲームセンターの外装を見て、思わず惚けてしまった。


 前まではメダルゲームの台が結構場所を取っていたイメージだったけど、今はプリクラの台は増えてるし、なんかコスプレ部屋みたいなのも出来ている。


 あのコスプレでプリクラを撮るのだろうか?


「前に比べてゲーム機の種類増えたねぇ……あ、音ゲーとかVRとかもあるよ!」


「凄いなぁ。 見たことないのばっかりだ」


「なにで遊ぶ?」


「俺は身体動かすのとかよくやるからやりたいな」


「おっそうなんだ。 私も結構やるよ? あのバスケのやつとか!」


 松田さんがそう言って指さすのは、時間内にゴールにたくさんのバスケットボールを入れるゲームだ。


 あれは俺もよくやるな。 最後の方はとりあえず全力でゴールに向かって投げ込むんだ。


 で、ほとんど入らないのがお約束なんだよな。


「いいね。 俺もあれはよくやるよ」


「じゃあ、やろっか! 対戦モードでいい?」


「いいよ!」


 俺達は荷物を横のカゴに置いてお金を入れる。


 すると軽快な音楽が流れると同時に、たくさんのバスケットボールが俺の前に流れ込んできた。


「しゃあ、先手必勝!」


「え、早い!」


 俺が放ったボールは見事に入る。 よしっ! この調子この調子!


「いいもん! 私は確実に入れていくから!」


 松田さんは一球一球丁寧に放って点を取っていく。


 それに対して俺は早く放って時々入るという感じだ。


 俺達は時間がなくなるまでずっとボールを放る。


 そして、点数が均衡した状態で、残る時間はあと数秒というところまできた。


 そんな時、まさかのハプニングが俺に襲い掛かった。


「あぁ! ボールがこない!?」


 俺はボールを早く放りすぎたため、まさかの手元にボールが返ってきていない時間ができてしまった。


 少しずつボールが手元に返ってこようとしているが、返ってくる頃にはゲームが終わっているだろうし、手を伸ばしたところで柵があるから手が届かない。


 俺はもうシュートを打つことができなくなってしまった。


「へへっ! これは私の勝ちだね!」


 横を見ると綺麗なフォームでボールを放り、それがゴールに入っていく松田さん。


 手元には充分すぎるほどのボールがあった。


 あっこれ俺の負けだわ。


「やったー! 勝ったー!」


 俺が負けを確信すると同時に流れたのは勝利のファンファーレ。


 松田さんの画面には『WIN』、俺の画面には『LOST』と表示されていた。


「くそー! 負けたー!」


「へへっ! 私の勝ちぃ! でも、まさかボールこなくて負けるだなんて春名くんついてないね」


 松田さんは面白可笑しそうに笑う。


 確かに言われてみればそうだ。


 大事なボールが使えなくて負けるなんて予想してなかったし、可笑しすぎる。


「ついてねぇ……ついてねぇよ……」


 俺がうなだれると笑いながら松田さんが肩を叩いてくる。


 くそ……このままじゃ終われねぇ!


「松田さん次は音ゲーで勝負しよう」


「いいよ。 でも、私結構音ゲー得意だよ?」


「俺も得意だよ」


 俺達は荷物を回収して、音ゲーコーナーに向かい対戦する。


「え、春名くん指の動き早っ!?」


「負けてたまるかぁぁ!!」


 俺は音ゲーで松田さんに勝ち、1勝1敗となった。


「ぐぬぬ……結構自信あったのにぃ……! なんなのよその指の動き! キモッ!」


「フハハ。 なんとでも言うがいい。 音ゲーは俺の勝ちだ!」


「次! 次いくよ! 次はあのホッケーやるよ!」


 俺達はお互いに負けたことが悔しくて色々なゲームで対戦した。


 ホッケーにガンシューティング、レースゲームにUFOキャッチャー。


 とにかく色々なゲームで対戦をした。


 ちなみは勝負は引き分けだった。


「はぁぁぁ今日は楽しかったぁ! 誘ってくれてありがとね春名くん!」


「どういたしまして。 俺も楽しかったよ。 また、一緒に遊ぼう! そして、次遊ぶ時は今日できなかったショッピングしようよ!」


「そうしようそうしよう!」


 俺達はゲームセンターでもかなり時間を使い、気が付いたら空は茜色になっていた。


 そろそろお開きの時間だ。


「今日撮ったプリクラは夜に送っとくね」


「オッケー! 楽しみにしてる!」


 俺達は会話しながらそれぞれの自転車を回収し、押しながら帰路に就く。


 楽しい時間は本当にあっという間に過ぎるな。


 こんな時間をもっと松田さんと一緒に味わいたいな。


 俺はそんなことを思いながら松田さんと楽しく会話をし、家に帰ったのだった。


 ちなみに送ってもらったプリクラをスマホの待ち受けにして一人でニヤニヤしていたけど、よくよく考えたら恥ずかしくなって直ぐに前の待ち受けに戻したのは俺だけの秘密だ。








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