第26話 デート当日です。

「母さん、ちょっといい?」


「んあ?」


 今日は松田さんとのデートの日。


 俺は朝起きて私服に着替えてから、リビングでリラックスしながら煎餅を食べている母さんに話しかけた。


 ちょ、粉が落ちる落ちる。


「粉落ちるよ?」


「大丈夫よ。 それに落ちたとしても、この後掃除するから問題ないわ。 で、なにか用事があるんでしょ? 一体何よ」


「今日ユウマ達と遊ぶからお金が欲しいんだ。 くれないかな?」


「あんたねぇ……そういうことは当日に言うんじゃないわよ。 もし、私がお金持ってなかったらどうするつもりだったのよ」


「ごめんごめん」


「まったく……で、何円いるのよ?」


「できれば1万円欲しい……」


「はぁ? いつもは5000円とかじゃない。 なんで今日はそんなにいるのよ?」


 女の子とデートするから。


 なんて母さんには口が裂けても言えない。


 言ったらお金はくれるだろう。 むしろ1万円以上くれるかもしれない。


 でも、実の母親に女の子とデートするからお金ちょうだいと言うのは、なんか気恥ずかしかった。


「今日はショッピングする予定だからさ、もしかしたら服とか買うかもしれないから多めに欲しいんだよ……ダメかな?」


「……まぁ、いいわよ」


「やった!」


 ダメ元で聞いてみたけど、言う価値あったな!


 後はこっそり貯めていた5000円を入れたら、今日の所持金は1万5000円になる。


 デートってどれぐらいお金を使うのかは知らないけど、中学生のデートだったらこれぐらいあれば十分だろ。


 俺はそんなことを思いながら、財布からお金を出している母さんから貰う。


 よっしゃ! これで資金面は問題ないな!


「……まぁ、最近あんた、勉強と部活頑張ってるみたいだし、もう少しあげるわ」


「え……」


 俺が喜んでいると、母さんはそう言って更に3000円渡してくれる。


 え、本当にいいの?


「貰っていいの?」


「まああんた最近テストの点数上がってるし、陸上の自主練も頑張るようになったでしょ? それにご飯をよく食べるようになったわね……あんたが努力し始めてるのはちゃんと分かってるわ。 だから、今回は母さんからのご褒美よ」


「か、母さん……」


 俺は母さんの優しさで泣きそうになる。


 母さん、ちゃんと俺のこと見てくれているんだな……!


「母さんありがとう!」


「どういたしまして。 あ、でもこのことは父さんには内緒にしなさいよ? ばれたら私が怒られちゃうわ」


「うん! 絶対内緒にするよ! じゃあ、俺時間が近づいてるからそろそろ出かけるね」


「分かったわ。 あ、あんた今日の晩御飯はいるの?」


「晩御飯までには帰るから作っておいて!」


「はいはい」


「じゃあ、行ってきまーす!」


 俺は所持金1万8000円を持って自転車に乗る。


 さぁ、デートの始まりだ。


 しっかり楽しんで、松田さんにも楽しんでもらうぞ!


 俺は自転車を漕ぎながら、待ち合わせ場所であるショッピングモールへと向かうのだった。









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