第22話 みんなでファミレスに行くことになりました。

「陸飯食いに行こうぜー」


「何食う?」


「ボクは甘い物があるファミレスがいいな」


 今日は特別授業の日。


 いつもと違う大きな教室には、俺を含めた8人が授業を受けていた。


 男の子では俺とユウマ、ツバサにチアキ、女の子では村上さんと近藤さん、阿部さんと松田さんが受けている。


 今は昼前の授業が終わったところだ。


「俺もチアキに賛成かな。 ファミレスなら色々あるでしょ」


「じゃあファミレスにすっかー」


 俺たちは塾から近いファミレスに行くことにした。


 あそこのファミレス値段安いし、塾から徒歩で行ける範囲だから便利なんだよな。


 お金がない中学生にはありがたい限りだ。


 俺は財布をお尻のポケットに入れて、チアキ達について行こうとする。


 そんな俺たちに阿部さんが話しかけてきた。


「男子達ファミレス行くん? なら、うちらも行くから一緒に行こうよ」


 振り返って見ると、各々カバンを持って外に出ようとしている女の子達がいた。


 俺たちは雑にポケットに財布入れてるけど、女の子達はしっかりしてるなぁ。


「お、なら一緒に行くか」


「そうしょーそうしよー!」


 ユウマと阿部さんがそう言うと、一気に人が増える。


 ここだけ人口密度高いな。


「春名くんはなに食べるか決めた?」


 俺がみんなについて行って靴を履き替えていると、同じように靴を履き替えている松田さんに話しかけられた。


 松田さん可愛いな……ワンピースがとっても似合ってる。


 自分の気持ちを自覚したからか、いつもより可愛く見えるような気がした。


「俺は肉食べたいな。 あとは食後のデザート」


「お、流石男の子だね。 私はスパゲティ食べようかなーあとは私もデザート食べたい」


 俺たちは人の迷惑にならないようにしながらファミレスに向かう。


 気づいたら俺と松田さんが最後尾になっていた。


 一番後ろだからみんなの様子がよく見える。


 あ、ユウマが阿部さんに肩叩かれてる。


 それを見て村上さんとツバサが笑ってるな。


 近藤さんとチアキはなんか楽しそうに話してる。


 みんな楽しそうだ。


「春名くんはデザートなに食べたいの?」


 俺がみんなを見てると松田さんに話しかけられた。


 デザートか…できればなんだけど……。


「パ、パフェ食べたい……」


「え、なに? ごめん聞こえなかった」


「パ、パフェ食べたいんだ!」


 俺が恥ずかしそうにそう言うと、松田さんはキョトンとした顔になる。


 は、恥ずかしい……。


 俺は実は前からパフェを食べてみたいと思ってたんだ。


 でも、男友達だけでパフェ頼むのがなんか恥ずかしいし、家族と食べに行った時に頼むのも恥ずかしかった。


 だから、俺はパフェに興味があるけど一度も食べたことがないんだ。


「春名くんパフェ食べたいの?」


「うん……。 でも、パフェ食べたことないんだ」


「え、本当?」


「本当本当」


「えーと……なんで食べたことないの?」


「友達とか家族とファミレスに行っても、注文するのが恥ずかしかったから…」


 俺の言ったことを聞いた松田さんは不思議そうな顔をしている。


 まぁ、理解は出来ないだろうな。


「理由は聞いてもいい感じ?」


「別にいいよ、大した理由じゃないし。  男友達の中でパフェ頼むのがなんか恥ずかしいんだ。 俺以外は誰もパフェに興味示したことないし……家族と行った時はなんだか周りの目が気になって」


 家族とファミレスに来てパフェを食べるっていうのがなんか恥ずかしいんだ。


 それに、親にパフェを食べたいって言うのがなんか恥ずかしい。


「そうなんだ。 なら、私もパフェ食べたいから一緒に注文しようか?」


「え、いいの?」


「いいよいいよーそれに多分なんとかなくだけど、春名くんの気持ちは分かるから!」


「そうなの?」


「多分、女の子が一人でラーメン屋さんに入りにくいとか、そんな感じなんだろうなーって」


「多分そんな感じなんだと思う」


 俺と松田さんは話しながら歩く。


 話しているうちに、いつの間にかファミレスが見えてきていた。


「でも、春名くんパフェ食べてみたかったんだ。 可愛いね!」


「うぐっ…」


 可愛いって言うのはやめてくれぇ!


「パフェ、楽しみだね!」


「……うん」


「じゃあ、パフェが私達を待ってるから行こうか!!」


 松田さんは満面の笑みで俺を見る。


 その笑みを見て、俺も釣られて笑ってしまうのだった。


「行こう行こう! パフェが俺たちを待っている!」












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