第21話 自分の気持ちを自覚しました。

 自分の気持ちを自覚した晩、俺は自分の部屋でストレッチをしながら、これまでのことを振り返った。


 俺は松田さんのことが好き。


 それは今日、先輩と話したことで分かった。


 でも、どのタイミングで好きになったんだろう?


 きっかけはなんだ?


 俺は松田さんと出会ってからの日々を振り返る。


 コンビニで会って一緒に塾に行ったことあったなぁ。


 教科書を借りに教室に来たこともあったっけ。


 一緒に勉強する為に図書館にも行ったし、手作りお菓子も貰えた。


 相合傘だってしたな。


 俺は身体を前に伸ばしながら振り返る。


 頬に当たる床の冷たさが、火照った体にはちょうどよかった。


「……なんだよ。 好きになる要素結構あるじゃん」


 今まで女の子と縁がなかった俺だ。


 同級生の女の子とコンビニで会って話すだけでちょっと嬉しい。


 可愛い女の子に教科書貸しただけで、その子のことを少し意識してしまう。


 二人っきりで図書館で勉強してデートかな!?っとドキドキしたし、手作りお菓子を貰えて幸せな気持ちになった。


 相合傘で今までにないぐらい近くにいて、最後には初めての男の子相合傘が春名くんで嬉しいと言ってもらえた。


 全部経験したことがないことで、女の子にモテたことがなかった俺には刺激的だった。


 こうやって振り返ってみると、俺が松田さんに好意を向けるのは普通だよな。


 むしろ、なんで俺は今まで気づかなかったんだろう??


「先輩に感謝しないとな」


 俺はストレッチをやめて勉強机へ向かう。


 机の上にあるボードには期末試験の範囲の紙と、カレンダーが貼られていた。


「とりあえず期末試験頑張るか……目指せ平均点70点だな」


 俺は勉強はあんまり得意じゃない。


 スポーツだって走るのは得意だけど、球技は苦手だ。 俺にとって自信があることじゃない。


 顔だってイケメンとか男前と言われる感じではない。 良くて中の中だろうな。


 それに比べて松田さんはどうだ?


 勉強はあんまり出来ないけど、可愛いし、コミュニケーション能力だって高い。


 それに私服を見たことが何回かあるけど、お洒落さんだ。


 とても魅力的な女の子だ。


 でも、俺は男として魅力あるのか?


 自分では分からないけど、とりあえず自信を持って"春名はここが凄いぞ!"と言える、他人から見て感じるようなものはまだないと思う。


 正直、俺がもし松田さんと付き合うことができたとしても、釣り合わないだろうな。


 だから、俺はこれから勉強と部活を今まで以上に頑張ることにする。


 "春名はここが凄いぞ!"と言える、他人から見て感じられるような男になるんだ!


 まずは期末試験で平均点70点をとる。


 そして部活では、夏休み中にある陸上大会で予選は突破する。


 このどっちかをクリア出来たら、俺は松田さんを自分から夏休みに遊びに誘おう!


 俺は今日、自分の気持ちを自覚した。


 でも、まだ自分に自信はない。


 告白する勇気だってない。


 そんな臆病な俺だけど、目標を決めて頑張りたい。


 どうなるか分からないし、何をすれば良いのかも分からないけど、なにもしないのは嫌だった。


「うっし! 頑張るぞ俺!」


 俺は自分の頬を叩いて気合を入れる。


 そして、椅子を引いて座り、机に置かれている問題集に取り組むのだった。

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