第14話 同じ塾の女の子たちと、貰った手作りお菓子を食べた。
「あ、春名くん。 この後予定ある?」
今日の塾も終わり、後は帰るだけというタイミングで松田さんに話しかけられた。
どうしたんだろう?
「ほら、数日前にお菓子作ってあげるって話したの覚えてる?」
「覚えてるよ。 もしかして……」
「そう。 今日持ってきたからみんなで食べようよ!」
おお! 松田さんのお菓子が食べられるのか。 嬉しいなぁ。
でも、みんなっていうのは一体誰なんだ?
「おっ! どうやらそっちも終わったみたいねー!」
「場所はどうする?」
「塾の駐輪場でいいんじゃない? 今日みんな自転車で来ているし」
俺たちに近づいてくるのは阿部さんと村上さんと近藤さん。
もしかしなくても、この三人が松田さんの言うみんななんだろうな。
「なら塾の駐輪場に行こっか! ほら、春名くんも早く早く!」
俺は松田さんに呼ばれて4人の後についていく。
外に出ると室内との温度差で一瞬身震いしてしまった。
ってか、俺これから可愛い女の子4人と、可愛い女の子が作った手作りお菓子食べるの?
もしかして、今の身震いって男子たちの怨念が俺に届いたとかじゃないよね?
そんな馬鹿なことを思っていると、松田さんはカバンからお菓子を取り出して一人ひとりに渡していく。
これは……チョコレートクッキー?
「鈴はチョコレートクッキーを作ったのね」
「そうなんだよー! 簡単なケーキと迷ったんだけど、やっぱりお菓子作り初心者はクッキーっていうイメージがあったから、クッキーにしたの!」
「全部1人でしたの?」
「そうだよ」
「鈴やるじゃない」
「えへへ……それほどでもないよ凛」
「うわー! これ美味しいじゃん! 鈴本当に初めて作ったの?」
松田さんと村上さんが話していると、いつの間にか食べ始めていた阿部さんが驚きの声をあげ、松田さんに近づく。
そんなに美味しいのか……。
「あ、本当だ。 サクサクで美味しい。 甘さも丁度いい感じ」
「琴の作るチョコレートクッキーには負けるけどね~」
「お菓子作るのが趣味なわたしより、初めて作った鈴の方が美味しかったらショックだよ~」
松田さんと近藤さんがお菓子を食べながら話す。 近藤さんってお菓子作りが趣味なのか……。 なんか似合うな。
「そ、それで春名くんどう? 美味しい?」
松田さんが一通りみんなから感想を聞き、最後に俺のところに来る。
不安からか少し瞳は揺れていた。
「じゃあ、いただきます」
「ど、どうぞ」
俺はチョコレートクッキーを食べる。 噛んだ瞬間にサクッという心地よい音が聞こえたと思うと、口の中に広がる甘い味。
勉強疲れの脳が覚醒し、一気に元気になったように感じた。
「これ美味しい! いくらでも食べられちゃうよ!」
「えへへ……良かったぁ」
俺は袋からクッキーを取り出して食べていく。 うん、美味しい。 こんな美味しいクッキーは当分食べてなかったな。
「ちょっと~なんか春名くんとうちらとじゃ反応違うくない? あっやしいなぁ~」
「別に怪しくないよ! 女の子と男の子に渡すなら反応が違うのは普通でしょ?」
「そりゃそうだけどさ~……本当にそれだけ?」
「本当にそれだけ!」
ニヤニヤ笑いながら近づいてくる阿部さんに、松田さんは少し赤い顔で反論する。
俺がここでなにか言っても、火に油を注ぐ感じになりそうだな。
俺はチョコレートクッキーを食べながら静かにしていると、近藤さんが話しかけてくれた。
そこから村上さんも混ざって3人で少し雑談をする。
へぇ~近藤さんって小学生の頃からお菓子作りが趣味なんだ。
「まぁともかく、春名くんは運が良いよね」
「へっ?」
「だって美少女な鈴に手作りお菓子を貰えて、うちも含めた美少女4人と一緒に食べているんだよ? これ、学校の男子が知ったら嫉妬するよ?」
阿部さんにそう言われて確かにと思う。 これはユウマたちとかには気軽に話せないな。
「春名くんは感謝して食べるんだよ!」
「光は何様のつもりなのよ……」
「まぁまぁ凛。 あれは光の冗談だから気にしちゃだめだよ」
俺たちは雑談をしながらクッキーを食べる。
そして、クッキーもなくなったし、夜遅くまで帰ってこないと親が心配するからという理由で、この日は解散となった。
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