第15話 女の子達と手作りお菓子を食べていた姿を、男友達に見られてた。

「え~それではこれから尋問を行いたいと思います」


「えっ何急にどした?」


 今日は“女子日”ではないが、ユウマたちに誘われて塾に行った。


 北山先生に分からないことを聞いた俺は、ユウマたちの授業が終わるのを自習しつつ待ち、ユウマたちと久しぶりにいつもの近くのコンビニでホットスナックなどを買って、少し雑談をしていた。


 そんな時、ユウマが尋問を行いますと言った瞬間に周りの雰囲気が変わった。


 さっきまでは楽しそうにしていたのに、みんななにか“いまからやりますか!”という雰囲気を出している。


 ツバサは肩を回しているし、チアキは深呼吸をしている。 


 えっなにするか知ってる感じなの? 知らないの俺だけ?


「え~では尋問を始めたいと思います。 春名陸さん」


「え、なに」


「あなたが前の“女子日”で、松田鈴さんから手作りチョコクッキーを貰い、更に阿部光さん、村上凛さん、近藤琴美さんも交えて、楽しそうに雑談をしていたという目撃情報があったのですが、本当でしょうか」


 ユウマの発言に場が緊張感に満たされる。 な、なぜばれている!?


 俺は言ってもないし、そんなことをしたと匂わせてもいなかったはず。 なぜなんだ!?


 と、とりあえずポーカーフェイスで場を乗り切ろう。


「え、なにそれ? 確かに松田さんからはクッキーを貰ったよ? でも、家で大切に食べたよ」


 どうだ!? 嘘の中に本当の情報を入れることにより、雑談をしていたという情報の信憑性は低くなったんじゃないか!?


「はぁ~……姑息、姑息ですなぁ」


「どうしたのツバサ?」


 俺は後ろからため息が聞こえて振り返る。 


 そこにいたのはヤレヤレというポーズをとったあとに、しきりにメガネを中指でクイッと持ち上げ続けるツバサの姿があった。


 なんだあいつ? 少し気持ち悪いな。


「嘘の中に本当の情報を入れるなんて姑息。 まさか、陸がそんなやつだったなんてなぁ……」


「ツバサ本当にどうした?」


「これを見てもまだ、あの4人と雑談をしていなかったと言えるのかね?」


 ツバサはそう言ってスマホを取り出して俺の方に見せる。


 そこにいたのは楽しそうにみんなとお菓子を食べながら雑談をしている俺の姿があった。


 な、動画を撮られていただと!? これでは言い訳ができない!?


「陸、ちゃんとこの尋問が終わったら動画は消すから安心してね。でも陸、ボクは陸が妬ましい。 なんで、美少女のお菓子を貰えて、美少女たちと楽しそうにお話しているの? ボクにもその甘いひと時を楽しませておくれよ」


「いや、チアキには言われたくないよ」


「「俺たちもそれは思う」」


「あれぇ!? ツバサとユウマはボクの味方なんじゃないの!?」


 一番モテるチアキに言われると、お前が言うな状態だよ。


 俺たちは知ってるんだぞ。 この前陸上部の先輩に手作りお菓子を貰ったことも、後輩とデートをしていたことも知っているんだぞ。


「まあ今はチアキのことではない。 陸のことについてだ。 さて、陸は嘘をついていたので罰を与えたいと思う」


「え……嫌だよ」


「罰を与えたいと思う」


「え、だから嫌だって————」


「罰を、与えたいと、思う!!」


「あ、はい」


 これはもうなに言っても駄目だな。


「陸には3つある罰から、1つ選んでもらおうと思う」


「わかったよ」


「1つ目はカラースプレーで自転車の籠を赤色にする」


「え、罰重くない? 俺のシルバーチャリが籠だけ赤くなるの?」


「2つ目は俺たちに今ジュースを奢る」


「なんか罰軽くなったね」


「3つ目は北山先生に愛の告白をする」


「間に軽いの入れて、最後に重い一撃入れてくるのやめてくれねぇ!?」


 北山先生に告白とか絶対悲しい未来しか見えないじゃん。 ただただ気まずくなるじゃん。


 北山先生は気にしないでくれるかもしれないけど、俺が気にしちゃうじゃん。


「さて、陸よ選ぶがいい。 ちなみにおれたちのオススメは2つ目だ」


「尋問とか罰とか言いながら、なんだかんだ優しいのをオススメしてくれるんだな」


「1つ目は自転車を買ってくれた親に申し訳ない、3つ目は流石に中坊に嘘で告白されるなんて北山先生に申し訳ないからな」


「なら選択肢にあげるなよ……」


 なんなんだこいつら。 


 ってか、罰を受ける義理なんて俺にはないよな。


 ……逃げるか。


 俺は思い立ってすぐに行動を起こす。 


 まずは少し遠くまである自転車まで全力で走り、乗る。


 そして、追いかけてきたユウマたちに向かって突撃をするフリをして、この場から脱出するんだ!


「逃げたぞー!」


「突撃するフリやめろよ!  本当じゃないって分かっててもこえーよ!」


「追いかけようよ!」


 坂道を必死に漕いでいる俺の後ろから、徐々に3台のチャリが近づいているのが聞こえる。


 そして、俺はあっという間に3人に確保されるのだった。


 ちなみに、羨ましくてあんなことをしただけで、罰はさせる気はなかったらしい。


 でも、俺は分かっているぞ。 オススメは2つ目だと言ったユウマの目が本気だったことを……。



————————————

1~15話まで読んでいただきありがとうございます。


20話まで毎日更新することにしたので、これからもこの小説をよろしくお願いいたします。

                                      作者


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