第10話 図書館デート? ②

「……もしかして、あたしお邪魔だったかしら?」


「ううん、大丈夫だよ。 私たち恋人同士とかじゃないし。 むしろ、来てくれて助かる。 ねっ春名くん」


「うん。 松田さんに聞いたけど、頭凄くいいんでしょ? 来てくれて力強いよ」


 村上さんと合流して自分たちの席に着くと、村上さんは気まずそうな顔で申し訳なさそうに聞いてきた。


 村上さんの誤解は分かる。


 俺だって同じような状況になったら、同じ反応すると思うし。


「本当にいいのかしら? 力強いって言われるのは嬉しいのだけど……」


「全然いいよ! ねっ春名くん」


「うん。 大丈夫」  


「なら、ご一緒させてもらうわね」


 村上さんは俺の横にある椅子に荷物を置き、松田さんの隣に座る。


 今まで俺の人生でこんなに女の子達が近くにいたことあっただろうか。


「理科を勉強してるのね」


「そうなんだよ。 だから分からないところあったら、私たち凛に聞いていい? 勿論お礼するからさ!」


「別にいいわよ。 人に教えることで自分の力になるし」


「やったー! 凛愛してる!」


「はいはい。 じゃあ、勉強始めましょう。 春名くんはどこをやってるの?」


「俺はここやってる。 でも、なかなか覚えられないんだ。 なんか覚えやすい方法とかある?」


「あたしは関連づけて覚えてるわ。 例えばなんだけど—————」


 村上さんに時々教えてもらいながら、俺たちは勉強を進める。


 村上さんの教え方は分かりやすく、ユーモアがあって理解しやすかった。 


 あと、クールなイメージが強かった村上さんの印象が、今回の勉強会で少し変わった。


 案外冗談も言ってくるし、ノリが良い人だったんだな。


「あぁ疲れた~! もう一週間分は勉強したよ~!」


「でも、まだまだテストまでは日にちがあるのよね……」


「もう凛ったら! 現実に引き戻すのが早すぎだよ!」


「理科だけじゃなくて、あと4教科もテストがあるの辛いよね」


「春名くんもやめてよ! 考えないようにしてたのに!」


 帰り道で自転車を押しながら前を歩く松田さんは頭を振る。 今の時刻は17時。


 図書館で4時間勉強した俺たちは、松田さんの『頭痛くなってきたからそろそろおしまいにしよう』という一言で、勉強会をおしまいにした。


 俺も限界だったから正直助かった。 


「ねぇ、春名くん」


「どうしたの村上さん」


「今日の勉強会って、どっちが提案したことなの?」


「俺だけど……」


「! ふーん……」


 俺の横を歩いている村上さんが聞いてくる。


 俺から提案したことを聞くと、村上さんは少し目を見開いてびっくりしていた。


「なんか意外ね。 てっきり鈴から誘ったもんなんだと思ってたわ。 春名くん案外やるわね」


「いや、なんか連絡とってたらそういう流れになったというか、無意識で誘っていたというか……」


「無意識で鈴を図書館デートに誘ったのなら、あなたけっこう凄いわよ?」


「いや、別に凄くないって……ってか、やっぱり図書館デートに見えたの?」


「見えたわよ。 だから、最初やっちゃったわと思ったのよ」


 やっぱり図書館デートに見えたのか。


「あたしはさ、最近二人が塾でも仲が良いから、少し怪しいなと思ってたの。 で、そんなことを思っていたら二人が一緒に勉強会しているわけよ。 もうそこまでいってる!?って思って焦っちゃったわ」


 村上さんはそう言ってケラケラと笑う。 


 知らない内にどうやら村上さんを焦らせていたみたいだ。


「確かに最近仲良くさせてもらってるけどさ、そんな関係じゃ本当にないんだよ?」


「それは分かったわ。 だって勉強してるとき、恋人同士特有の甘い感じとかなかったもの」


 恋人同士特有の甘い感じとか分かるの? 女の子ってすごい。


「でも……いや、なんでもないわ」


「えっなにそれ気になるんだけど」


「まぁまぁ気にしないで」


「いやいや気になるんだけど」


「アハハッ」


「なにその笑い!」


「ねえ二人とも! コンビニで新商品だって! 買ってみようよ!」


 俺が村上さんに詰め寄ると、前を歩いていた松田さんが振り返って声を掛けてくる。 


 なになに……新商品チョコバナナアイスクリーム? えっ美味しそう。


「凛! お礼これでいい?」


「それでいいわ。 あたしも気になるし」


「じゃあ、買いに行こうか!」


 俺たちはコンビニで自転車を止めて、中に入る。 


「ふふっ……」


「え、どうしたの?」


「いや、なんどもないわ。 ねぇ、春名くんってスマホ持ってるかしら?」


「持ってるけど」


「じゃああたしと連絡先交換しましょ」


 そう言って村上さんはスマホを取り出す。 


 別に断る理由もないし、むしろ女の子の連絡先増えて嬉しいな。


「じゃあ登録したからよろしくね」


「うん。 よろしく」


「買ってきたよー……って、二人ともスマホ出してどうしたの?」


「村上さんと連絡先交換してたんだ」


「そうなんだ。 ちなみに春名くんから聞いたの?」


「ううん。 村上さんからだよ」


「へ~そうなんだ」

 

「塾も一緒だし、なにかと連絡するかもしれないわね」


 村上さんは松田さんからアイスクリームを受け取り、俺たちはコンビニを出る。


 そのまま自転車置き場で松田さんと村上さんがアイスクリームを食べ終わるまで、会話を楽しんだ。


 今日はいっぱい勉強できて頭も良くなったし、松田さんと村上さんと仲良くなれたな。 


 しかも、村上さんの連絡先までゲットしてしまった。


 今日は本当に良い一日だったな。 


 俺は楽しそうに話す松田さんと村上さんを見て、そう思うのだった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1話〜10話まで読んでいただきありがとうございます。


15話まで毎日更新することにしたので、これからもこの小説をよろしくお願い致します。


                  作者

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る