第14話 指令

 僕達はバタバタしながら学校まで走って行くことになった。


 その間、考えていたことは三枝先輩のように九重先輩や他の女生徒が同じような状況にならないようにすることだった。


 あの日は、警察が来る前にあの黒服軍団は逃げるどころか、警察に情報提供してから撤収したとのこと。


 三枝先輩も事件では被害者であり、学校名や個人情報の公開は情報提供の見返りとして不問にしてもらったらしい。


 三枝先輩は体調を崩したことにして、しばらく入院して検査後に何もなかったように学校に戻るらしい。ただし、麻薬などが使用されていた場合は、長期療養が必要となるため転校することになるとのこと。


 これは三枝先輩にとっても悪い話ではないだろう。

 学校が生徒を守るのなら、最適な処遇だと思うし、あとは自分の問題だ。



 あいつら裏のメンバー達は格闘技を中心とした体育会系の部活で活躍している中で、口が堅い者を一本釣りしているらしい。

 まあ、フルフェイスのメットに防弾仕様の服装ならほぼ大丈夫だろう。


 3人が1チームでカバーしていたのも身柄を確保される恐れを排除していた。

 かなり訓練されている。


 一方で瞳からも的確なアドバイスを投げてくれたから、迷うことはなかった。

 だからといって安心はできない。


 三枝先輩の事件はチンピラに弱みを握られて、ぼったくりバーの呼び込みを強要されていたらしい。他の余罪は調査中とのこと。


 これがあるから女子は安心して学校生活ができるように守る必要かあるわけだ。


 こんな内容を九重先輩が寝た後にママさんから聞かされた。

 そして、夢乃さん達を守って欲しいともお願いされた訳だが。

 次の日、学校に行く玄関で一言追加があった。


「かず君、あたし、見ちゃった! かず君ったら、私が残したものを美味しそうに飲んでるところ。

 未成年なのに、いいのかな? ダメじゃん!」


「あっ、あれれ? 嵌めやがったな?!」


「うふふ、まあ、夢乃ちゃんを守ってくれるのなら忘れてもいいわ」


「…………」


 あの手この手で俺は九重家に束縛されていく。

 まっ、あの時は……、やっぱ俺の考えが甘すぎたか。


 自業自得とはいえ、頭が痛い。

 ビールでなくても、和室で寝ていた写真も撮られているんだろうな。



 ……済んだことは諦めよう。


 九重ママの心配は俺も考えていた。

 あれだけ派手に顔を見られているのなら、慎重にならざるを得ない。


 ダメな噂しかない俺を巻き込むことも予定通りだったということだろうな。

 だが、俺にも意地がある。

 俺のダチに手を出す奴は必ず潰す。

 その噂を嘘にしないように動くだけだ。


 俺は渡されていたスマホから裏と表のメンバー全員に女子メンバーを守るようにと、女子メンバーには1人行動を禁止するように指令を放った。

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