第15話 心の中

 藤井サイド


 俺の気持ちもは裏腹にどんどん人と関わる方向に動いている状況は全然面白くなかった。

 だが、それほど嫌でもない。


 どうやら俺自身も知らぬうちに一生懸命頑張る九重先輩を応援したいらしい。

 はなはだ遺憾ではあるが。


 だが、同情なんて気持ちに動かされることはない。

 どうして俺は動いているんだろうか?

 昔みたいに無視して放置プレイでも良かったんじゃあないのか?


 ……焼きが回ったというのは、こんな時に使うのだろうな。



 あの、あざとさにも落ちた感もある?のかな??



 夢乃サイド


 そろそろ藤井くんから名前呼びして欲しいけど、彼から見ると私ってウザいよね。

 誠治取り入ってペアまではなれたけれど、本当のペアには程遠い。


 焦って色々失敗するよりは一歩一歩知っていく方が良いんだけれど、それでもじれったい。 


 初めは彼を利用したいと思っていただけなのに、体を張って助けてくれた背中はとても大きくて、気持ちも温かい人だった。


 何人も男の子には言い寄られ、告白されているけれど、薄っぺらい言葉なんて気持ち悪いだけだった。

 下心が透けて見えて、もう恋愛なんて縁がないと思っていた矢先、行動で表してくれる藤井くんの姿は憧れに変わっていった。


 まだ瞳にしか話していないけれど、瞳からアドバイスされたけど、決心はつかない。


「優良物件はすぐに無くなるのは世の常、失敗も傷つくことも無く手に入るものに価値はあるのでしょうか? 夢乃さんにとって必要なら素直になるべきです。そうしないと誰かに取られた時の傷の方が大きいと思いますよ」


 私にとって正論過ぎて返事のしようもない。



 ただ、もう少しだけ、いまの関係のままが、いまの距離感が心地良い。


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