第29話 元Aランク冒険者との決闘


モーガンの申し出を受けた翠は闘技場で決闘の準備を始めていた。ルールはどちらが降参するまで行い、直接死に至る攻撃、アイテムの使用は禁止、闘技場から出たら失格というルールが定められた


元Aランク冒険者とAランクモンスターのソイルルーパーを倒してきたかもしれない少年の決闘に興味を持った冒険者達で闘技場が溢れかえっていた


モーガン「このルールで問題ないか?」


翠「はい」


翠は、決闘が始まる前にスキルオーディアンで解析した、モーガンのスキルを確認していた



――――――――――――――――――――――――

名前【モーガン】

性別【男】

年齢【45歳】

レベル【102】


【パラメーター】

攻撃力 1500

防御力 1000

俊敏  800

魔力  500

運   500

知力  1000


【スキル】


加速(B)レベル4

身体能力向上(C)レベル4

隠蔽(D)レベル4

ファイヤーブレード(B)レベル4

自己回復小(C)レベル3

鑑定(D)レベル4


【称号】

炎龍の加護を受けし者

元Aランク冒険者

冒険者協会の長


 ――――――――――――――――――――――――


翠「リギートより強いじゃん!!」


スキルオーディアンで、モーガンのステータスを確認した翠は、負けはしないと考えつつも、王国騎士団団長のリギートよりもはるかに強いステータスを誇っていたモーガンに驚いていた


モーガン「何か言ったか。もしかして今更、怖気付いた訳じゃないよな」


翠「いや、何でもないです」


翠が何か言ったことに対して、怖気付いたかと確認するモーガン。だがモーガンも翠が只者ではないことに気付いていた。それはモーガンのスキル鑑定で翠を確認したところ、全ての表記がエラー表示にされてしまったからである。この世界で鑑定を防げるのは、鑑定より上位のスキルを持った者か同等のスキルでレベルが高い、もしくは本人達のレベル差があるのいずれかが理由であるため、少なくともモーガンは自分と同等以上の実力は持っているであろうと確信していた


モーガン「では始めるぞ!!」


モーガンがスタートの合図と同時に身体能力向上のスキルを発動させ、スキルファイヤーブレードを発動する。ファイヤーブレードとは簡単に言えば燃える剣であり、炎の剣を具現化するスキルであった。ファイヤーブレードの特徴は、取手から剣先まで炎が広がっており、相手はどの部分に触れても火傷では済まないレベルの高温で焼かれる、もしくは斬られてしまうところにあった。勿論ファイヤーブレードの使用者には熱がいかない仕組みになっていたが、斬られた相手は燃えてしまうため、使い所が難しい武器スキルでもあった


モーガン「死んでくれるなよ?」


死に至る魔法は禁止と定めてはいたが、直接死に至る魔法ではないため、今回は使用が許されている魔法であった。だが使い方を間違えれば、相手を殺すこともできるスキルである


翠「ズル!!」


それに気づいた翠は、卑怯だと考えながらも戦闘に集中することにした


翠はスキル、スサノートを発動して能力を増加し、オーディアンの4属性魔法の1つである初級魔法ウォーターで、モーガンのファイヤーブレードに当て、炎の部分を消そうとした。だが、炎の勢いが強く、弱点の水属性ですら跳ね返してしまう程の炎圧であった


モーガン「どうした!!もう終わりか!!」


翠を挑発しながら2メートル以上あるファイヤーブレードを振り回し、攻撃を続けるモーガン。それを回避し続ける翠。このモーガンからの猛攻が2分以上続いていた


翠「おいおい。まじかよ…この人どんだけ体力あるんだ…」


ピー「流石元Aランク冒険者ですね」


翠「感心してる場合じゃないよピーちゃん。俺オーディアンの4属性魔法以外の攻撃系のスキル無いんだけど…」


ピー「何言ってるんですかマスター」


翠「え?」


ピー「普通に剣を掴めばいいじゃないですか?」


翠「…………はい?」


ピー「盗賊と戦った時と同じように剣を掴めば良いんじゃないですか?」


翠「いや無理でしょ!!あの剣燃えてるって!!」


ピー「大丈夫ですよ。スキルスサノート発動してますよね?」


翠「発動してるけどさ…」


自身の力をもっと把握するべきだとピーから怒られた翠は意を決してモーガンのファイヤーブレードを避けるのを止め、剣を掴もうとする。少し怖がっていた翠は目を瞑ってしまう。目を開けるとそこにはファイヤーブレードが自分の手によって掴まれていること、そしてそれに驚くモーガンと観客達の顔が目の前に広がっていた


翠「おぉ!!熱くない!!」


翠の身体はスサノートの熱耐性、防御力増加によって、ファイヤーブレードの熱、剣で斬られてもビクともしない強度を誇っていた


モーガン「は?」


流石にファイヤーブレードを素手で止められるとは思っていなかったのか、モーガンや観客達は唖然としており、固まってしまっていた。その間に翠はモーガンにルール違反ではないものの、死に至りそうなスキル、ファイヤーブレードを使われたことに少しムカついていたため、拳に力を入れて、腹を思い切り殴った。唖然としていたモーガンはダイレクトにその攻撃を受けてしまい、闘技場のリングの上を転がり、伸びてしまっていた


その後、唖然としていた審判であったが、モーガンの安否確認をし、戦闘不能であることがわかったため、翠の勝利とし、モーガンとの決闘は翠の勝利で終了となった


少し時間が経つと、モーガンが目を覚ます


モーガン「…」


翠「あ、起きました?」


目を覚ましたモーガンはその光景に目が奪われる


モーガン「何を食べてるんだ?」


モーガンが目を覚ますと、そこにはテーブルいっぱいに置かれた食事があり、それを子供のように食べている翠の姿があった。翠がモーガンに勝利したあと、冒険者協会の中では、あの元Aランク冒険者のモーガンを倒した新しいルーキーを讃える宴が開かれていた


翠「なんか冒険者の皆さんがいっぱいくれました」


モーガン「…そうか」


モーガンは改めて、自分が敗北したことを再確認し、力量が足りなかったなと反省していた


モーガン「…そういえばお前ダンジョンに行きたがっていたな?」


翠「え、はい」


モーガンが受付嬢に合図を出すと、受付嬢は銅色の冒険者プレートと今回の闘技時で儲けた50%である白金貨10枚、そしてFランクダンジョンの鍵を持ってきて、翠へと渡す


モーガン「今回の報酬という名の迷惑料だ。受け取ってくれ」


そこには銅色の冒険者プレートと白金貨10枚、そして水色の鍵が置かれていた


翠「ありがとうございます…あれ?これはなんですか?」


モーガン「それはFランクダンジョンの鍵だ」


翠「…これがダンジョンの鍵」


モーガン「お前と戦って実力はわかった。もっとランクの高いダンジョンに挑むことも可能だろう。が、まだCランク冒険者になったばかりだ。油断すると命が一瞬で消えることもある。だからダンジョンは一番下のFランクダンジョンから挑戦してくれということでFランクダンジョンの鍵を渡せて貰った」


Cランクになったとはいえ、いきなり高ランクのダンジョンに挑ませるのはどうかということで、冒険者協会からはFランクダンジョンの鍵が手渡された

 

翠「そうですね。まずはFランクダンジョンから挑戦したいと思います」


モーガン「ダンジョンへはいつ頃挑戦するんだ?」


翠「う〜ん…そうですね。まずはCランク冒険者になることを目標としていたので、あんまり決めていなくて…気持ち的には明日から挑戦してみてもいいかなとは」


モーガン「流石俺を倒したやつだぜ!!!ガハハ!!」


それを聞いたモーガンは呆れ果て、笑っていた


         第29話終わり



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