第9話 伯爵の屋敷
食事を終えた翠は、地球にはない数々の食事にとても感動を覚えていた。陛下達と少しの雑談をした後部屋へと戻り、セリナが応接間に案内してくれるという話になっているので、翠は時間まで部屋でゆっくり寛いでいた
ふぅ…お腹いっぱい。地球にはない料理ばっかりだったな。あとで料理人レシピに聞いてみようかな
先程まで食べていた地球料理とは違った味を思い出しているとコンコンと扉をノックする音が聞こえる
翠「はい」
セリナ「翠様そろそろお時間です」
翠「はい。今行きます」
翠は急ぎ応接間に向かう準備をし、外で待つセリナさんの元に向かった。応接間の前まで到着し、セリナさんが扉をコンコンとノックする
セリナ「聖神翠様をお連れ致しました」
陛下「入って良いぞ」
セリナさんが扉を開けてくれる
セリナ「どうぞ」
翠「ありがとうございます」
そして翠は部屋に入り中で待っていた陛下へと遅れた謝罪を述べる
翠「遅れて申し訳ないです」
陛下「構わんよ。席に座ってくれ」
翠「はい」
陛下「では呼んだ理由だが、残りの褒美の準備が出来たからである」
翠「も、もうですか?随分と早いですね…」
陛下「婚約の話もあるから急がせたのだ」
翠「なるほど。有難う御座います」
陛下「よい。セバス」
セバス「はい」
陛下がセバスを呼ぶと、セバスは一流の動きで、用意していた物を丁寧に机へと置く。置いたそれは銀のトレーに載せられており、地図とカードのようなものが載せられていた
セバス「では私から説明させて頂きます。まずこの地図ですが、この王城から屋敷までの道のりを示したものです」
陛下「もしそれでもわからなければセバスに聞いてくれ」
翠「わかりました」
セバス「そしてこのカードですが、それは屋敷に入るための認証カードです」
翠「認証カード?」
セバス「はい。認証カードとは誰も住む人がいない状態の家につけられるセキュリティー警報装置で、そのカードはその警報を解除するためのものです」
翠「そ、そんなものがあるんですね…」
セバス「はい。無人の屋敷は管理するものがいないため人に入られてしまうことがあるのです。それを防ぐため、無人の屋敷にはセキュリティー制御装置をつけたのです」
このセキュリティー制御装置は国が管理しており、魔法で構築されているため、制御方法、構築方法は極秘になっている。ただ分かっているのは、優秀な魔導士が何年、何十年もかけて開発した代物ということだけである
陛下「まぁ流石に全部ではないがな。国が管理している土地で、それなりの価値がある屋敷にはついている」
翠「じゃあもしかして結構良いところ用意してくれたんですか?」
陛下「当たり前だ!娘の婚約者になる者が住む屋敷だからな」
翠「…ありがとうございます」
セバス「ですが、これは最初の認証をするだけでその後は機能しません」
陛下「その後のセキュリティーは人を雇うなり、新たなセキュリティーをつけるのも自由だ」
一般的には公開されていないセキュリティー機能を個人的につけるのは不可能である。だが個人的な願いで、セキュリティー機能を自分の屋敷に取り付ける方法が1つあり、セキュリティー装置を作成した優秀な魔導士達であれば、それを実行可能だ。そのため彼らを高い賃金で雇うことによって、取り付けることが可能である。だが彼らはお金に興味が少なく、気に入った者しか手伝わないということで有名であり、貴族の大半がセキュリティー装置をつけることを望んだが、ほとんど断られていたのである。
翠はこの時は、このことを知らずにいたが、後にどんでもないことをやらかして、これを知ることになった…
翠「分かりました」
陛下「これで褒美の話は終わりだ。次に婚約パーティーの件だが、基本貴族は自分の屋敷に他の貴族を呼んでパーティーをするという話はしたな?」
翠「はい。聞きました」
陛下「うむ。本来は名誉子爵の爵位が呼べる貴族は基本繋がりなどがなければ、騎士爵、准男爵、男爵そして同等の子爵を招待することができる。だが翠は私の娘と婚約をすると周りが知っているため、取り入ろうと多くの貴族が来たがるだろう。あとで自分のところには招待状が来なかった‼︎とか言い出して文句言われるのも嫌だからちゃんと出すんだぞ!いいな!絶対だぞ!!」
翠「…はい」
なんでそんな強調するんだろ?
何故そんな強調するのか不思議がっているとセリ
ナさんが耳打ちをしてその理由を教えてくれた
セリナ「陛下は自分のところに文句を言いに来た貴族を相手にするのが面倒なんですよ」
翠「…あぁなるほど」
陛下「セリナよ。何か言ったか?」
セリナ「いえ何も言ってませんよ陛下」
陛下「そうか…もちろん私にも招待状を送るんだ!良いな?」
翠「もちろんですよ!婚約する相手の父君を呼ばないわけにはいかないですからね」
日本では婚約を結ぶ相手の両親を呼ぶのは常識であり、こちらの世界でも同じ事だと考えていた。もちろん今回は、当事者の親ということで呼ばれるのは必然ではあったのだが、陛下が誰かの婚約パーティーに出ることはない。ましてや爵位が低いものなら尚更である
陛下「そうかそうか!!この後すぐ屋敷に向かうか?一応掃除などは一通りしてあるが、家具や置物などはまだ何もないから、自分で好きなのを用意してもらえると助かる」
翠「わかりました。お金も貰ったので、いろいろ調達してこようと思います。準備が出来たら招待状を送らせて貰いますね!」
陛下「うむ。了解した」
陛下と話を終えた翠はセリナとセバスに見送られ王城を出た。その際シルにまた準備したら戻ってくるからと伝言を頼み、貰った屋敷へ向かった
陛下から屋敷を貰った翠は地図を頼りにその屋敷へと向かっていた
…これが僕の屋敷か?で、でかくね?
そこには広大な土地に加えて、大きい屋敷が立っていた。もちろん王城と比べると劣ってしまうが、普通の子爵が持てる屋敷のサイズではなく公爵や辺境伯並の財力と力を持っていないと建てられないほどの大きさの屋敷であった
そう言えば…陛下が言ってたな。良いところをくれたって…それにしても大きすぎではないですかね?
実際、この屋敷の元所有者は伯爵が持っていたもので、その伯爵は税金を誤魔化して着服しており、この様な屋敷を建てることが出来ていたのである。王家もこの屋敷の扱いには困っていたところ丁度良く翠が来たため、すんなりと翠に屋敷を譲渡できたというのが裏話である
まぁ広いにこしたことはないけど…それにしても異世界にセ○ムのようなセキュリティーシステムがあるとは驚いた…
翠は現実にあったセキュリティー会社を思い出しながら、屋敷の門のセキュリティーを解除し、門を開け、屋敷へと入っていく
翠「陛下が言っていた通りに中は広いし、掃除もされていて綺麗だけど家具は何もないね」
さてこの後どうするか?確か陛下はこのセキュリティーシステムが使えるのは最初だけだから、人を雇ったほうがいいって言ってたな。でも、どうやって人を集めるんだ?…この世界にタ○ンワークなんてあるのか?駄目だ…どうしても現実世界の会社名を基準に考えてしまう
ピーに聞いてみるか。ピー
…
…ピー?
…ふん
なんで怒ってるの?
…マスターが私を呼んでくれないからです
ごめんって忙しかったんだよ!
なら呼んでくれたら良かったのに…私はマスターから呼んでくれるのを待ってたんですよ
悪かったって!今度からは話しかけるようにするからさ
…分かりました
僕も人間で忘れることもあるから、そのときはピーからも話しかけてよね。わかった?
…わかりません
いやわかるだろ!!
ハァ…やれやれ。ピーってこんな性格だったっけ?…
じゃあこの話は終わりね
早速だけど人を雇いたいんだけど方法ってある?
はい。いくつか方法はありますが1つは正規の使用人を雇う方法です。これは比較的安心ですが、通常より資金が必要になります
なるほど。信用はあるけどお金は高いのか…いくら陛下に大金を貰ったからと言っても限度はあるし…
2つ目は奴隷商に行って奴隷を買うという方法です。
奴隷商?奴隷を買うの?
はい
奴隷ね…地球には奴隷制度がなかったからあんまりそこの感覚が分からないんだよな…それってこの国のルールというか規則としては大丈夫なの?
はい。この国は奴隷制度を認めています。ただし誘拐や乱暴な扱いは厳しく罰せられています。そのため国に認められた奴隷商は比較的クリーンなイメージが浸透しています
そうなんだ。でもなぁ…奴隷になるって事は悪いことしてるってことでしょ?
奴隷には2つの種類がございます。1つは犯罪奴隷です。これは先程マスターが仰った通り犯罪を犯した者達のことです。この者たちは比較的安く売られていることが多いです。発掘上や採掘場の体を酷使して行われる仕事に使われることが多いです。そしてもう1つが借金奴隷です
借金奴隷?
借金奴隷とは自らが借金をして、その借金が返せなくなった場合や誰かの保証人になってその本人に逃げられてしまい借金奴隷になった者、親の借金を払えずに奴隷になった者のことを指します。
なるほど。そっちの人のほうがあんまり悪い人はいなそうだね。
はい。ただその分犯罪奴隷よりは高くなってしまうのですが…
犯罪奴隷を雇うよりは少し高くついても借金奴隷を買うほうが安全面的にも気持ち的な面でもいいと思う
わかりました。今すぐ行きますか?
うん。そうしようかな
わかりました。奴隷商までの道のりを案内します
ありがとうピー
その後ピーの案内で奴隷商まで向かった翠
第9話終わり
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