第5話 豪華な褒美

急遽開催することになった謁見のため、セリナさんと共に謁見の準備をする翠だった。一方式場の中では貴族達が集められていた。


陛下「今日はよく集まってくれた皆のもの」


貴族「陛下のお呼びとあれば来ないわけにはいきませんよハッハッハ」


陛下「今日は重大な話があるからそのつもりで頼む。ファルバール侯爵よ」

 

ファルバール侯爵「…重大な話ですか?」


陛下「ああ。それは後に話す」


陛下が重大な話をするということで式場の中が少しだけざわつき始めた…式場の後ろに控えている執事から準備ができたとの連絡があり、陛下は式開始の合図を出す


陛下「ではあちらも準備ができたようだな。では始めよう。今回集まってもらったのは他でもない。私の娘シルフィードが盗賊に襲われた件についてだ」


そんな出来事が起きていたなんて知らなかった、貴族達の多くが騒ぎ出す。第二王女様はご無事なのか、その盗賊たちは今どこに…等色々な声が上がっていた。中には第一王女様ではないから後継の件は問題ないが…などという声も上がっている。陛下はやれやれといった気持ちを抑えつつ、その騒ぎを制するように手を掲げる。すると、その場はすぐに静まる


陛下「だがそこに通りがかった者に助けられ無事だ」


それを聞き安堵する者たちの声が聞こえた


陛下「今からその者に褒美を与えたいと思う。では入ってきたまえ」


一斉にその場の人達の目線が謁見の間の扉へと向く


セリナ「では扉が開いたら、そのままお進みください。その後は先程言った通りにお願いします」


翠「…はい」


…シルさん手伝ってくれるという話は一体どこへ


シルのサポートがあると聞いていたが、シルが現れないことを不安に思っていると謁見の間の扉が開かれる。


セリナ「行ってらっしゃいませ!」


翠「…はい」


翠はそのまま真っ直ぐ進み、金色の線があるところで片膝をついて頭を下げた。そして初めて翠を見た貴族たちは各々声を上げていた


貴族「若いな…」


貴族「なんだあの者は?」


貴族「あんなものが?」


などと色々な声をあげていた。それはどれも否定的なものばかりであり、蔑むような視線や懐疑的な視線で見るものばかりであった


陛下「面をあげよ」


翠が陛下に言われた通りに頭を上げるとそこには見覚えのある人物がいた


あれ?あそこにシルいるじゃん…


シルフィードと目が合うと、ニコッという笑顔でこちらを見た。すると前の方から声が聞こえてきた


陛下「此度は盗賊から私の娘を救っていただいこと心より感謝する。ありがとう」


陛下はそういうと翠に対し、頭を下げる。それを見た貴族たちは驚きの声を上げる


翠「……あ、頭をあげてください」


まさか陛下が頭を下げるとは思っていなかったため、焦った翠は陛下に頭をあげることを促す。このとき翠は、ここの王族はいい考えを持った人が多いんだなと考えていた。現代のラノベでは、偉そうな王族が登場することが多かった。そのためこの世界の王族も偉そうなものが多いのではと考えていた


ファルバール侯爵「陛下が容易に頭を下げるなどあってはなりません。他の者達に示しが!」


陛下「よい。そのぐらい感謝しているということだ。もう一度礼を言う。ありがとう」


翠「…いえ」


陛下「そこでだ!この者に褒美を与えたいと思う。何かほしいものはあるか?」


翠「褒美ですか…私はたまたま馬車を見つけて助けただけなので」


陛下「たまたまだとしても助けてくれたことに変わりはない」


翠「…まぁそうですけど」


陛下「だから欲しいものを言ってくれ」


翠「欲しいものと言われましても…」


欲しいものか…う〜ん…地球への帰還の方法とか教えてくれないかな?まぁ無理だよな。それに転移したことを言ったら大変なことになりそう…


陛下「ではこちらが提示するのもので良いか?」


それの方が考えなくて済むからありがたい

何かほしいものはないかと聞く陛下であったが急には浮かばない翠に対し、陛下はニヤッと笑いながら褒美を陛下側から提示すると言い出した


翠「…は、はい」


…何か嫌な予感がするけど


陛下「では娘を救ってくれたこの者に、1つ男爵の爵位を授与する。それにともない屋敷を譲渡する。2つ白金貨50枚を譲渡する。3つ私の娘シルフィードとの婚約、以上この3つを褒美とする」


陛下が褒美の内容を語ると、それを聞いていた貴族たちが騒ぎ出す。翠も貴族同様いきなりの話に驚いていた


翠「シルとのこ、婚約ぅー!!!!??」


陛下「そうだ。私は認めたくはないが、シルがどうしてもと言ってな…なんだ何か問題でも?」


陛下は私の可愛い娘に何か文句でもあるのかという目で翠を見る。シルフィードを見ると駄目なんですか?と言いたげな泣きそうな目で翠を見ていた


翠「いや、シル…第二王女様に問題があるわけではないのですが…」


他の点で問題おおありだよ!


翠「こんなどこの馬の骨かもわからない男と婚約なんて…」


陛下「お主名前を何と言う?」


翠「な、名前ですか?聖神翠といいます」


陛下「翠よ。貴殿の対応で其方が悪いものではないとわかる」


翠「…でも」


陛下「そんなに嫌か?」


翠「いや、そんなことはないですけど…」


翠がシルフィードを見ると今にも泣きそうな顔でこちらを見ていた


どうしよう。母さんの元に早く帰らないと行けないし。本当はこんなことしてる場合じゃないのに…だけどこの状況で断るの無理じゃん。どうしよう…ピー。どうしたらいいと思う?)


母親のもとに早く帰りたい翠はシルフィードとの婚約と言われどうするか悩んでいた。なかなかこの場でこれ断るのが難しくどうしようか悩んでいたためピーにどうしたらいいか尋ねてみた


ふんっ


…え?無視?なんかまた怒ってるし…はぁ…あ、でももしかしたらあっちの世界に帰ることが出来たら、こっちの世界と行き来出来る可能性も無くはないと思うけど…でもな確率は低いしな…そもそも帰れるかわからないし…でも、ソフィアさんが言ってたな…男だったらしっかりしなさいって。しょうがない覚悟を決めるか‥方法はまだわからないけど、どっちにしろこの状況ではやるしかないからな!


翠「陛下。いくつか変更・条件をつけさせて頂いても宜しいでしょうか?」


陛下「む…なんだ申してみよ」


翠「私は現在あちこちを旅をしています。目的は故郷にいる母親を探すためです。そしてその場所はどこにあるのか、どんな名前の土地なのか、私にもわかりません。そのためこの土地に常にいることも出来ないのです」


陛下「故郷なのに名前も場所もわからないと?」


翠「はい」


正確に言うとちょっと違うけど…


翠「そのため男爵位と屋敷を頂いても、この土地に常にいるわけではないので、責務を果たすことが出来ません。そしてシルフィード様との婚約についてですが、これもこの場に留まることが難しいため、お受けするのが難しいというのが現状です」


シルフィード様との婚約を覚悟を決めたんじゃなかったんですね


い、いやだって流石にシルを連れて帰るわけには行かないし…それに帰れるかまだわかってないのに婚約なんて出来ないでしょ。僕が決めた覚悟は陛下に物申す覚悟だよ


…ヘタレ


ピーちゃん酷い


ピーちゃんはやめてください


え〜


陛下が話し始めましたよ


陛下「なるほど。男爵位と屋敷の件は把握した。シルとの婚約の件は…シル!」


シルフィード「…はい。なんでしょうかお父様」


陛下「翠はこう申しているが、どうするシルよ?」


シルフィード「私は…私はそれでも翠様と一緒にいたいです!」


翠「で、ですが!」


シルフィード「私は翠様の故郷へでもどこにでもついていく覚悟です!」


翠「な!…王女様が王都を離れるのは良くないのではないですか?」


シルフィード「そ、それは…」


陛下「確かに王女が王都を離れることは基本的には難しい。だが幸いシルは第二王女であり、王位継承権は低い。そのため誰かに嫁ぐことになるだろう。それが翠だったと言うだけの話である」


翠「ですが…」


これ以上の否定はシルに失礼だよね…


翠「…シルフィード様にお聞きしたいことがござ

います」


シルフィード「なんでしょう」


翠「私は色々なところに旅をすることになると思います。その際に命の危険を伴うこともあると思います。シルフィード様は命を失う覚悟はございますか?」


卑怯だな…俺だって死ぬ覚悟なんてないのに…


シルフィード「大変なのはわかっています。ですがそれでも私はあなたについていきます!!」


なんでそこまで…ここまで言われて引き下がったら男じゃないですよね母さん


翠「…ハァ…シルフィード様のお気持ちが優先だと思います。そのシルフィード様が良いとおっしゃるなら有難くその話お請けしたいと思います」


陛下「そうか!!良かったなシル!」


シルフィード「はい!!!」


陛下「男爵位と屋敷に関しては褒美を変更し、名誉子爵とする」


翠「名誉子爵?」


陛下「名誉子爵は普通の爵位とは異なり、王国に対し労働や納税をする義務がなく所有する土地や屋敷を持たない爵位のことである。そのためこの場にとどまる必要もない。地位としても通常の子爵と違いはない。これなら問題あるまい?」


翠「お気遣い感謝致します」


陛下「うむ。褒美としては1つ名誉子爵の爵位を授与する。2つ白金貨50枚を譲渡する。3つシルフィードとの婚約とする。近々婚約祝いを行いたいと思う。諸君楽しみにしておけ!!」


ファルバール侯爵「少し待ってください!陛下」


陛下が話をまとめていると、横からファルバール侯爵が前に出てきて少し待てと言い放つ。陛下は娘の婚約が決まりご機嫌であったが、ファルバール侯爵の発言により眉間にシワが寄っている


陛下「…なんだね?ファルバール侯爵」


ファルバール侯爵「褒美の件いささか過剰ではありませんか?」


陛下「そうかね?」


ファルバール侯爵「はい。どこの馬の骨かもわからない者にいきなり名誉子爵の地位を渡すなどもってのほか」


まぁ…俺もそう思うよ


ファルバール侯爵「それから白金貨50枚。それは褒美としては多すぎます!白金貨50枚は男爵一年分の収入と変わりない額です!それをこんなものに!」


ファルバール侯爵が翠を睨む


えぇ…なんで…俺を睨むのはやめてくれ…


ファルバール侯爵「そして最後の第二王女様との婚約の件ですが、いくら王位継承権が低いと言っても第二王女様にはふさわしい爵位を持つ者と婚約するべきかと!」


陛下「…それはどんな人物かね?例えば君の息子のようなものとかか?」


ファルバール侯爵「はい!その通りで御座います」


陛下「シルフィードの意見も無視するというのか?」


ファルバール侯爵「私はそのほうが王女様のためになると思っています」


陛下「なるほど。貴殿の気持ちはわかった。だが…」


陛下が意見を聞くためシルフィードを見る


シルフィード「私の婚約は私が決めます!」


ファルバール侯爵「ですが!!」


シルフィード「これは決定事項です」


ファルバール侯爵「…わかりました」


ファルバール侯爵はまた翠を睨む。他の貴族たちも驚いていた。普段優しいシルフィードが自分の意見は曲げないと言い放ったからである


ファルバール侯爵「ですが、他の件も、、」


陛下「それは私からの決定事項である!」


ファルバール侯爵「な、それはあまりにも職権乱用が過ぎるのではありませんか!?」


陛下「恩人に褒美を渡せないのは他の国々や貴族、そして国民に示しがつかん。それともなにか私に恥を欠かせるつもりか?ファルバール侯爵よ」


ファルバール侯爵「い、いえそんなつもりは…」


陛下「貴殿に44人の盗賊を捉えることはできるか?」


ファルバール侯爵「44人ですか?私の私兵隊を使えば…」


陛下「お主1人でだ」


ファルバール侯爵「…それは不可能で御座います」


陛下「であろう。だがそれを翠はやってのけたの

だ」


ファルバール侯爵「な!!?」 


陛下が言い放ったたった1人で盗賊44人を倒すことができるという事実に貴族達がざわつきだす


陛下「シルフィードにつけていたうちの兵士14 人が亡くなり兵士隊長だけが残った。だが兵士隊長も拘束されてしまい、その後駆けつけた翠は1人で45人の盗賊と戦い、一瞬にして盗賊44人を気絶させ、盗賊の頭を討ち取ったそうだ」


その話を聞いて驚いたファルバール侯爵が翠を見る。翠はテレながらニコッという笑顔でファルバール侯爵を見るとファルバール侯爵は怯えた目で翠をみる


陛下「それが君にできるか?」


ファルバール侯爵「…私も兵隊を使用していいならば…可能で御座います」


陛下は呆れたようにため息をつく


陛下「使用しなければ?」


ファルバール侯爵「…不可能です」


陛下「なら異論はないな。式はこれにて終わりする。なにか他に異論がある者は?なければ私の娘を救ってくれたシルの婚約者であり、名誉子爵の翠に拍手を!!」


ファルバール侯爵、他数名の貴族以外は拍手をした

なんかいろいろ決まっちゃった…


陛下「翠よ。あとで応接間に来てくれるか?」


翠「…はい」


陛下「うむ。では下がって良いぞ」


翠「…はい」


応接間で何を話されるのだろうか…はぁ…


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通貨単位    

          

異世界 通貨単位


 鉄貨1枚=100円


 銅貨1枚=1000円


 銀貨1枚=1万円


 金貨1枚=10万円 


 白金貨1枚=100万円


 黒金貨1枚=1億円


 虹金貨1枚=100億円



         5話終わり

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