それぞれの夢

5 それぞれの夢

「ユメキ。ラボのほう、お願いできる?私、行かなきゃいけないところがある。」

私は、今スズナのことも心配だったが、もう一人この夢の世界に取り残されている人間で心配なやつがいたのだ。夢泥棒とか夢がつぶされるとかそういうことを考えていなさそうだけれども、その危険が今にも迫っている人間を助けなければいけなかった。

ユメキは、しばらく何かためらっていたが、私にドリームミラーを一つくれた。

「できるだけ早く戻ってこい。それから、万が一敵と遭遇したときにこれを使え。自分で手に入れたクライアントは自分で保護しろ。それが夢売りのやり方だ。」

私は、ミラーの表面にある検索機能を使って、クライアントの名前を検索した。彼の名前はすぐに見つかった。おそらくこの夢の世界で、彼の同姓同名が存在しないからだろう。だからすぐに彼の意識に入り込むことができた。

私が彼の意識に入り込んだとき、彼は楽屋で不思議な手紙を受け取っていた。楽屋には彼と一緒にバンドを組んでいる仲間たちも、その手紙をみている。

「ばらちゃん。この手紙、どういう意味かな?明日、ライブ会場を襲撃するって。」

ドラマーの日高恭介、通称キョロチャンが言う。

「どうする?今日のライブ、無事にできるのかな?」

ベースの湯ノ原千寿保、通称チズチャンが不安そうに言う。

「あんずることはない。我々はそれに屈せず、ただ音楽を楽しめば言いだけなのだから。」

リードギターとキーボードを担当する、甘いマスクの少女、今守ことみ、通称コウチャンが、マスクのしたから笑顔をのぞかせて言う。

リーダーの小原は、ほかのバンドメンバーのように悩ましげな顔をして議論したりはせず、イヤフォンで曲を聞いている。

「ちょっと、ばらちゃん、効いてる?」

キョロチャンが小原の型をたたいた。小原はその手紙にいまさら気づいたみたいに、あわてて目を落とす。

しかし、手紙をみても彼は表情を変えなかった。

「さ、そんなこと気にしてる暇、俺らにはないだろ?客が待ってるんだ。今日もみんなに夢を見せられるような、最高のライブにしようぜ。」

と虚勢を張っているのだった。もちろん、一番この中で不安を抱えているのは、ほかならぬ小原なのであるが。

彼は、その不安をなんとか和らげたかったからなのか、その手紙をポケットにしのばせたままマイクを握った。とにかく今は自分の夢におぼれたかったのである。

その日のライブは無事に成功した。私もそれはこの目で確認しているし、初めて小原のギターボーカルをみみにして、私の胸は少なくとも激しく震えた。それは、もちろん彼の音楽性に心から感動してしまったというのもある。だがそれだけではなく、自分の売った夢を全力で楽しんでくれている、クライアントとしての小原の姿をみて感動していた。やっぱり夢と言うのは、どんな危険も恐れずに、全力でかなえられたほうがずっといい。そういう危険が迫っているような状況の中で夢をみることほどもったいないことはない。だから今すぐにでも救わなければいけない。

ライブが終わると、観衆は熱狂的な完成に包まれる。小原はきっとこの歓声をエネルギーにして、この夢のライブをなんども成功させてきたのだろう。しかし私にとってその歓声は、彼を救うための戦い、いや具体的な戦闘行為は行わないかもしれないが、とりあえず大事な正念場の始まりとなったのだ。

楽屋へ戻ろうとする小原の背中を追いかける。そのとき私は頭の中で考える。自分には好きなアーティストやバンドはあっただろうかと。こんなふうに楽屋の手前までい追いかけていこうと思えるような、現実的にそれが可能なのかはおいておいて、そういうバンドなりアーティストがいただろうか。いるにせよいないにせよ、私にとってこういう経験は、少しだけ胸を高鳴らせるものだった。

「小原!」

バンドメンバーたちと並んで話している小原の背中わを、私はライブの客だということも忘れてひっつかんだ。

「ちょっとあんた。うちのばらちゃんに何すんだよ!」

キョロチャンが、その大きな目で私を見つめる。だが私にはそんなのは怖くなかった。なぜなら、私には夢売りの権力があるから、いざとなればドリームミラーを使って、キョロチャンを拘束したり倒したりすることができる。しかも、小原の背中を日っつかんだのは、小原の友人である私だ。彼が私のことを覚えて

いれば、何も事件は起きない。

案の定彼は私に背中を日っつかまれても平気な顔だった。

「あ、夢水。何、ライブに来てくれたの?ありがとな。ってか何?俺の夢におまえが出てきたってことか。なんかおもしろいな。」

興奮しているおバラとは対象的に、自分がすごく冷静な顔をしているのがなんだか申し訳なくなった。とにかくここから離れなければいけない。そうしなければ彼は興奮したまま夢におぼれ、最終的に夢泥棒に夢を盗まれかねない。

「うん…まあ悪くない演奏だったっていうか…普通にかっこよかったっていうか…。」

こんなところで油を売っている暇なんかないとわかっていても、なぜかいつもと素直になれない癖が私の邪魔をして、言葉がうまく出てこない。こういうのを、心のダムとかなんとかいうのだろうか。だから私は販社的に、話を前に進めようとする。

「どっちなんだよ。かっこよかったのかよ。それとも下手だと思ったのか?」

「尾原、ちょっと一瞬つきあってくれない?」

「つきあうって…まさかおまえ、俺に夢の中で告白とか…。」

赤くなる小原をみて、キョロチャンやチズチャンは後ずさりする。私は彼をまっすぐに見つめる。もちろん彼を恋愛対象になんて思ってはいない。しかもそんな

冗談を言っている暇はない。そのはずなのに、なぜか私の心臓はどんどん脈を早めていく。

「つまんない冗談はやめて。本当に大変なことが起きるんだから。」

自分の声が奇妙な生き物みたいな声になっていて、すごく恥ずかしい気持ちになっていた。

バンドメンバーたちが小原のことを呼んでいるが、そんなものにかまっている場合ではない。本当は彼らのこともつれてくるべきだったのかもしれないが、今助けられるのは小原だけだ。

私は戸惑っている尾原の腕をつかんでドリームミラーを使って彼を外に連れ出した。そこはもちろんドリーム顧問エリアである。

「尾原、あなた、変な人に襲われた理とか、何か危険なことは起きなかった。ライブの夢をみてる間に。」

私の単刀直入の質問に、尾原は一瞬なんのことだかわからなかったようだが、やがてそれを理解したのかそうでないかはさておき、大きくうなずいて、ポケットにしのばせた手紙を見せてくれた。その手紙は、おそらく小原の汗だらけの手に握られていたせいか、すでにかなりクシャクシャになっていた。

「今日、マネージャーからこの手紙をもらったんだ。俺宛に届いてるって。」

彼が見せてくれた手紙には、『あすのライブを中止せよ。さもなくばライブ会場に爆弾を仕掛ける。』と書いてあった。もちろん差出人の名前はない。筆跡官邸をすることもできるとも思ったが、おそらくこの字面はワープロで印刷されたものだろう。

夢の世界にももしかしたら脅迫をしてくる設定とかがあるのかもしれない。しかし、どちらにしてもこの脅迫はかなり怪しい。だれがどんな意図でしたものなのかはわからないし、下手をすれば夢というものの性質上、不合理で正当化できないようなことが起こっているだけと考えることもできるが、こういうときは最悪のシナリオを考えておかないと

私は本当に小原を殺してしまうかもしれない。せっかく私は、自分が殺し屋ではなかったことを、少しだけ自覚できたばかりなのに。

「ねえ、尾原。私と一緒に来てくれない?」

「なんでおまえとデートしなきゃなんねえんだよ。俺、明日もライブが…。」

「ごめん、尾原。協力してほしい。」

私は小原にここまで何か協力を要請したり、なにか強く詰め寄ったりしたことはなかった。だから彼にとってこういうことを私がするというのはあまり信じられないことだろう。

尾原はしばらく動かなかったが、やがて小さくうなずいた。

「しょうがないな。ただ一つだけ条件。」

やつは何かをたくらんでいるようだった。もちろんそれは本の些細な、ちょっとしたいたずらみたいなもの、もしくはちょっとした策略みたいなものだろうー。

「何よ。」

「ほら、俺の本気の夢、覚えてるだろ?」

彼は、テレビで昔よくやっていた、戦隊ヒーローのポーズをとってみせる。そんなんじゃわかんねえよと言ってやりたかったが、私はそういうものをみてしまうと嘘がつけなくなる。

「ヒーロー?」

「いいか夢水。ヒーローってのは、男なら絶対に1度はあこがれるものなんだよ。いいだろ、俺をそれにしてくれよ。そしたらおまえに協力してやんよ。」

そんな条件をいきなり突き付けられて、というか、そんな条件がかなえられるかどうかを考えている暇は私にはないというのが本音だった。協力してやると言っているんだからそれでいいじゃないと思いもするのだが、私にはなぜだか、彼のその条件が邪魔をして前に進むことができなかった。

ところがそのとき、私はふと思い出したのである。この条件に近いもの私はどこかで聞いたことがあったということを。

「わかった。私が尾原をヒーローにしてあげる。」

ユメキが私に言った、「お姫様やる」宣言を、私がどれだけ信頼をしていいのかはまだわらない。もしかしたらかなわない約束化もしれない。それはそれでもちろん悲しい。けれど、それをもしかなわない約束と割り切ることができたならば、尾原をヒーローにすることも私がお姫様になるという、難の保証もない夢と言う約束に託しても問題なさそうだ。

ふいに小原が私の肩に手を乗せてきた。こんなことはいままでになかった。少なくとも現実世界では。でも夢なんてそんなものだ。現実では起きたことがないことが連続して、意味のわからないところに飛ばされるみたいなおもしろい純粋な夢を、私は追い続けたい。そしてそんな夢をつぶしにかかる泥棒をなんとかしてやっつけることが私の使命なのだ。と言い聞かせてはみるのだが、小原が肩に手をおいてきたときの、私のこの鼓動の早さがどうも気になる、というか気に入らない。

「ありがとな、ゆ…アスナ。俺にいい夢見せてくれて。」

これが、私が夢売りとして、クライアントから初めてほめられた瞬間だった。いままで私が夢売りになってからは、大変な事件やよくわからない失跡、そして現実世界という悪夢からの蔑みを受けてきて、夢を捨てようとなんどもなんども心に誓った。それでも捨てられなかったのは、きっとこの瞬間のためにあったのだ。

「ばか!そんなこと行っても、なんも出ないからね。さあ、行くよ。」

自分の赤いほほを隠すように私はおバラの腕を引っ張ってラボに走った

「おいおい、この新人、今度は彼氏をつれてきたぞ。」

正夢さんが、私と小原の登場に驚いて、パソコンを捜査する手を止めている。しかし、大声で騒ぐ彼とは対象的に、ユメキとミアさんは深刻そうな顔で、私が以前寝かされたことのあるベッドに眠る少女の手当をしている。

「大きな声を出すな、正夢。それと、アスナ。おかえり。」

「おい、夢水。この男、だれ?」

私の耳元であわててささやく小原のことを放っておいて、私はベッドの近くに書けよった。

「その子は…。」

私はその少女の正体をなんとなく察していたけれど、状況をつかむために、心臓のあたりに何かを張り付けているミアさんに効いた。

「あんたのクライアントでしょ?」

ミアさんは、意識を失っているであろうその少女のほほを優しくなでる。少女は笑うことも泣くこともせずに、ずっと同じ体制のままでいる。

「この子、私の妹なんです。彼女は…死んだんですか?」

目からあふれそうになる涙を必至で抑える。なぜならミアさんもユメキも泣いていなかったからだ。

「いや…死んではいない。けど…かなり意識ショックを受けているみたい。」

「意識ショック?」

「悪夢をうえつけられそうになっていたからね、この子。」

私は、大体のことの成り行きを察した。しかしその成り行きを、ユメキは私に説明してくれた。

「この子はさっきまで、自分のの夢の意識の中にいた。けど、あるときに

夢泥棒に見つかったんだ。そしてそいつに夢を奪われそうになった。彼女は必至に抵抗した末、なんとかここまでたどり着いて、そしてミアが応戦してくれたというわけだ。けどやっぱりもともと現実世界で生きてきた人間だけあって、悪夢による意識の損傷が激しくてね。しばらくは目覚めないだろう?」

スズナの頬を手で沢ってみる。確かに、命の息吹が感じられるような温かさが伝わってくる。きっと体中を流れる血液は、彼女の意識の中にこんな問題が起こっていることなんか知らずに、その命を維持するために動き続けている。きっと今の彼女は、いや、もしかしたら現実は世界の人間はみんな、生きながら死んでいる。

「スズナ…。さっきまで、家族旅行の夢をみていたんです。彼女がみたいって言ってた家族旅行の夢。私とスズナの家は、二人がまだ幼いころに、母と父が別居状態になって、いつだったかは忘れたんですけど、離婚調停が成立してしまって。母は必至に働くことで精いっぱいなうえに、根っからの現実主義者。そういうわけで、スズナも私も、家族旅行なんてたいそうなことは経験したことがないし、これからも自分が結婚しない限り経験できない。だからスズナはこの夢をかなえてほしかったんだと思います…。でも、どうして、どうしてそれをあいつらは…。」

服の袖で涙を抑えながら、スズナのほほを、できるだけ優しく、それでも力を込めてなで続ける。私はスズナを死なせたくなかった。彼女の意識を殺したくはなかった。せめて、一瞬だけ生き返ってくれればそれでいい。そしてちゃんと誤りたかった。彼女に、夢の怖さなんて知ってほしくなかったのだ。彼女には夢を持って生きていてほしかった。

「なんだよ、それ。めっちゃ泣けるじゃん。でも、そんなのさ、家族旅行に行く夢なんてさお金と時間といろんな製薬さえ解決すればなんとかなりそうな

夢じゃん。俺なんてヒーローだぜ。ヒーローなんか簡単になれないんだからな。」

そう言ったのは、小原だった。彼は、正夢さんから受け取った契約書にサインをしているところだったのだ。

彼の発言には私も少なからず異議を覚えたが、私よりも強い怒りを覚えていた人間がいたようだ。

ユメキは彼のサインしかけの契約書を取り上げ、大きな音で机をたたく。こんなに怒ったユメキを、私はみたことがない。私が夢ラボをとぴ出して雨の名を走ったときですら、彼は怒りをあらわにしなかったというのに。

きっと彼の個と線に火を付けたのは…。

「おまえは、夢売りにはなれない。いや、夢を売る資格はない!帰れ!」

「はあ?なんだよ!俺はヒーローになりにきたんだ!それで、こいつ…夢水に言われてきたんだけど、なんで帰れって言われなきゃならねえんだよ。」

ユメキは起こっているとはいえ冷静だった。逆に小原は、突然怒られて興奮しているようだった。

「おまえは夢売りとして一番やってはいけないことを、今したからだよ。そんなことをする人間に、夢を取り扱ってもらっては困るんだ。」

「何がなんだかちんぷんかんぷんだ!俺はただヒーローになりたいだけなのに…。」

「人の夢を傷つけるやつに、ヒーローなんかできるのかなあ。」

ユメキの言葉は、まるで鋭い弾丸のように、小原の胸に命中した。そして、その弾丸は小原を通り越して、私の胸をも貫きそうになる。

私はいままで、自分の夢だけは大切に守ろうと思ってきた。だから、お姫様になりたいという夢だけは潰されたくなかったし、それを潰そうとする学校や社会にはいられなくなった。けれど、それと同時に、私は気づかないうちに、他人の夢を傷つけていた。傷つけるだけならよいが、自分の夢と比較をして、きれいじゃない形の夢をとことんなじってきた。それをやられた人間がどんな思いをして、自分の夢を引き出しにしまったかも知らずに。

「おまえは、ヒーローになりたいやつの気持ちなんかわかるのかよ。」

小原は、まだ自分の言っていることの政党制を貫こうとしているのか、どうしてもひるまない。ユメキはそんな小原をみて、初めて小さく笑った。

「君に、僕夢の話を使用。僕がこの世界を作ろうと思った理由の話だ。」

「もう、その話なら僕聞き飽きたよ。これでもう318回目だ。」

「よく覚えてるわね。でも、ちょうどこの子の子守歌になりそうな話だわ。」

ミアさんが、けだるげに、けれど少しだけ笑顔になって、スズナに布団をかぶせる。

その気持ちは私も同じだった。私は、彼がみていた夢、今も追いかけ続ける夢の話を聞くべきだと思ったのだ。


自分は世界で一番強くてなんでもできる人間だ。勉強だってスポーツだって音楽だって、どんなことをしたって、自分はどんな人間よりもできる。香山ユメキは、自分がなぜそんなに自分を過信しているのか、自分でもわからなかったが、物心ついた頃から、自分にはなんにでもなれる可能性があると思っていた。両親はそんなユメキに優しく、いや今から思えば冷たいのかもしれないが、そんな彼を否定せず育ててきた。

そんな彼の夢は決まっていた。それはもちろん、世界で一番なんでもできる強い存在である、と彼が思っている、「ヒーロー」だった。

幼稚園の頃は、戦隊ものやヒーローの出てくるアニメにかじりついた。親にはヒーローがプリントされたおもちゃをねだった。友達には、「俺、いつかヒーローになるんだ!」と自慢して回ったという。

けれど、もちろんそんな簡単にヒーローになれるわけがない。大人たちは、無意識に彼の夢を潰していく。

「ヒーローなんてそう簡単になれるもんじゃないぞ。」と。

彼はなんとか大人たちを見返したかった。そしていつか、あのアニメのように、世界中を救ってやれるヒーローになろうと思った。そしたら、子供ながらに発見したことがあった。それが、プロ野球の「ヒーローインタビュー」というやつである。あれはどうやらみんなから「ヒーロー」と称賛されるからそう呼ばれるらしい。ということは、俺もヒーローになれるんじゃないか。そう思った彼は、ヒーローになるために野球を始めたのである。

彼は必死に野球に打ち込んだ。小学校のころはピッチャーとしてマウンドで投げ抜いて、街で一躍有名な野球少年になる。おまけにそのころは勉強だってできたから、勉強もできる野球少年として、まあよくあることだが、女の子たちの注目の的にもなれた。

友達も多く、みんなからは本当に「ヒーロー」と呼ばれる日々が続いた。けれど彼はまだ満足していなかった。世界を救える存在にならなければ、世界で一番強くならなければ、ヒーローにはなれないんだと。

それに、回りの友人たちが自分をほめてくれる一方で、大人や年上の人間からの風当たり強くなる一方だった。

「君はどうして野球を続けるんだ?」

小学5年生のある日、大会前に彼が肩の怪我を起こして、その大会では投げられなくなったときのことだった。監督にそう効かれた彼は、胸を張ってその途方もない夢を語った。

「俺はヒーローになりたいんだ!だから野球を続ける。野球を使って、そして一生懸命勉強もして、強くて頭のいいヒーローになってやるんだ!」

監督は笑わなかった。そして無表情のまま、だれもい泣くなったグランドでこう言った。

「そんな夢、とっとと捨てて現実をみなさい。体に鞭打って練習をするから、そういうことになるんだよ。野球で世界を救うなんて、夢だけ大きくたって何もできないんだから。」

結局彼はその大会で1回もマウンドには上がれなかった。

負けず嫌いな彼は、夢を潰してくるやつらの言葉をけっして信じなかった。勉強を必至で頑張って有名な私立中学に合格したし、野球も受験と両立しながら続けた。親に頭を下げてギターも買ってもらって、これで一躍パワーがそろった、みたいな状態になる。

しかし、中学に入るとそんな負けず嫌いで夢だけを、ずっと遠くに放り投げた彼にとってはつらく苦しい日々が続いた。小学校までと違い中学の野球部には自分よりも強いやつもいっぱいいるし、上下関係だって厳しくなる。彼は、自分だけがヒーローになるなんてことができなくなる時期に突入したのだ。世界で一番できるのは自分じゃない。現実がそれを大きな声で突き付けてくるたびに、そんなのうそだ!と言い聞かせる。そのたびに、放り投げた夢だけがどんどん大きくなって、頑張ろうとすればするほど足が、手が、心が動かない。

そして、逆に回りの足を引っ張る結果となった。彼は自分の夢だけを追い続けて、ヒーローとは程遠い存在になってしまったのである。

しかし、その原因は、彼だけではなかった、と彼は語る。彼がそこまでしてやみくもに野球にに打ち込んだのは、期待をするくせに自分の夢をつぶしてくる回りにあった。自分が制を出せなかったり怪我をしたりすれば、「そんな夢とっとと捨てちゃえ。」とか、「ヒーローになるとかそんな子供っぽいこと言ってるんだったら投げ込みでもやってろ。」となじられるだけだった。

そして、中学最後の大会が終わって、自分のチームが惨敗を喫したとき、彼は叫んでいた。

「俺の夢をどうしてくれたんだよ!ヒーローになりたかっただけなのに!」と。すると

監督のこぶしが飛んできた。そのこぶしが、彼の中にあった

最後の一つだけ残っていた夢を完ぺきに潰した。

「夢なんかみるだけ無駄なんだよ!ヒーローになんかなるんじゃねえ!夢をみるなら現実をみろ!夢に向かって走るんじゃなくて塁に向かって走れ!!夢を語るなら球を投げろ!」

ヒーローは不滅だ。絶対に死んでたまるか!絶対に世界1の男になるんだ!誰かに罵倒されたり、自分の夢がつぶされても、信じ続ければいつか、いつか…。

「おまえをみてると、昔の俺を思い出す。おまえにとっては無意識なのかもしれないけど、人間誰しもそう思ってしまうものなんだ。世界で一番自分が強くて格好よくて頭もよくて優れてるって。そう思うのは勝手だし否定はしない。でもな

、それを押し付けてしまったら、いつかおまえの夢はつぶれるぞ。」

ユメキは、強い口調で言うと、まっすぐに小原を見つめながら話を続けた。その目はいままでのユメキよりもずっとときめいていて、そしてしっかりとしていた。

「それから俺は学校に行けなくなった。あんなふうに、また夢を潰されるような気がしたんだ。勉強をしても、野球をしても、ギターを弾いても。だから部屋にこもった。」

その話はどこかで聞いたことのある話だった。私は、耳を塞ぎたくもなった。でも、今この話にちゃんと向き合わなければ、夢に潰された自分のことも忘れそうになってしまう。だからこそ必死になってその苦しみに耐えた。

「そんなことを考えてたら、あるとき夢の世界で、俺は真っ暗なストリートに立っていた。目の前には、変な顔をして無心に歩く人間がたくさんいた。みんな無表情。みんな下を向いてあるいてた。でも妙にその足取りは軽そうだったんだ。なんでだと思う?やつらはあるものを持ってなかったんだ。一人の人間がつまずいて、後ろから銃を持ったやつがそいつの胸を打ち抜こうとしてた。俺も銃を取り出してそいつと向かい合って、それでその中の持ち主を打ちぬいた。うれしかったなあ。あのとき俺はヒーローになれたって思った。

でもよく見たらさ、そういうやつがたくさんいたんだ。俺はまだまだヒーローになれないんだって思ったよ。」

小原は黙って話を聞いていた。笑うこと泣く、怒ることなく。そして話が終わると、少しつまらなそうに、ユメキをみた。

「おまえ…やっぱ格好悪いぜ。そんな独りよがりなやつ…だれがヒーローだよ。俺はマジで、おまえみたいなヒーローにはならない。なるなら俺がヒーローだ。」

その顔は、とても悔しそうで、そして少年の顔だった。だからユメキも怒らなかった。

「じゃあ、他人の夢を傷つけない強いヒーローにならないとな。」

すると突然正夢さんがパソコンを閉じて大あくびをした。

「なんか、夢ちゃんの話を聞いてたらさ、僕も自分の夢の話をしたくなってきちゃった…。」

そういえば、私は正夢さんの夢も、ミアさんの夢も知らない。ただ彼らは、夢をかなえられなくて、ここにいることだけは知っている。ここに集う人たちは、みんなそれぞれの夢を持っているんだろう。

正夢さんは、突然足を伸ばしてみせた。

「ぼくはどうしてSEとしてパソコンに向かってると思う?僕は病気なんだ。なんの病気なのかは僕にもわからない。でも、だれの制でもないんだよ、きっとこれは。単刀直入に言おう。僕がかなえたい夢は、50メートル泳いで、ガッツポーズをすることなんだ。」

正夢さんこと、阿久津正夢はごく一般的な家庭に生まれた。そしてごく一般的な少年に育つ、はずだった。彼がまだ幼かったころ、幼稚園で遊んでいたら彼は突然倒れた。理由は彼にもわからない。ただ、医者は、一生つきあって行かなきゃならない難病にか買ったと両親に言ったという。

彼の夢は、自分の命によってほぼ禁じられた。ある程度成長するまでは、泳いだり走ったりしてはいけないと医者から言われてしまったのだ。おかげで、体育の授業は、臓器に負担のかからないマット運動などを除いて、ほとんどが見学や別メニューになった。

別に彼は、自分が走ったり球を投げたり鉄棒で遊んだりできないことには、そんなにうらやましさを覚えなかった。でも彼にとって一番うらやましかったのは、みんなが肌を焼きながら、プールで思いっきり泳いでいる姿だった。そういうとき、いつも彼は体育館で、先生とストレッチや筋トレをしていた。

「先生。みんなはいつか魚になって、遠くへ行ってしまうの?」

足を伸ばす運動をしているとき、彼は先生に尋ねたという。先生は笑って答えた。

「大丈夫。君は君だ。おいて行かれることはないよ。」と。

でもみんなは、その手で、その足で、悠々と泳いでいる。僕にだって手や足はある。でも、確かに少し運動しただけで息が苦しくなる。だから泳げないんだ。

「ねえ、ママ。僕は普通に生きてはいけないの?」

夏になると彼の口癖はいつもこれになった。そんなときに母は、先生と同じようなことを言うのだ。

「あなたはあなたなんだからそれでいいの。」と。

そんなことを言われても困る。そう反論したかった。なぜなら、自分は自分だと受け入れてしまったら、この虚弱で魚の真似事すらできないこの体を受け入れなければいけないんだ。そんなことはできない。どうしてみんなにはできて、自分にはできないものがあるんだろう。魔法をかなえたり、動物と話したり過去に巻き戻ることはみんなできないのに、どうしてみんなは水の中を自由に泳げるんだろう。どうして…。

彼は必死に勉強して、中学は進学校に入学した

。そこはスポーツでも有名な学校だった。彼はここでなら自分が魚になれると思った。

なぜなら、彼の体はもうだいぶ成長していたからだ。

学校には、小学校のプールよりも大きくてきれいなプールがあった。彼は両親と先生になんども頭を下げてやっと入れることになった。

しかし、やっぱり自分の体は思うように進んでくれない。少しでも苦しくなると顔を挙げてしまうし、水の中で手や足を頑張って動かそうとすると、やっぱり沈みそうになる。

それでも、先生たちの検診的な努力によって、なんとか少しは泳げるようになった。

中学2年の夏、ようやく彼は学校の水泳大会に出ることを許された。彼はもう飛び上がって喜んだものだった。

でも…。

水泳大会の前日、彼の街に台風が近づき、大会は中止されてしまう。彼は窓をたたく雨や風の音を聞きながら布団にもぐりこんで泣いた。せっかく練習したのだ。体も絶好調だった。両親も先生もお医者さんも、これなら泳げると言ってくれた。それなのに、

どうしてこんなときに、雨なんてフルのだろうか。風なんて吹くのだろうか。

友達にそう言うと、まじめそうな男の子がこう言った。

「大丈夫だよ。来年もあるんだからさ。」

「僕はそのとき知ってしまったんだ。現実世界の人間は、みらいをあてにしすぎなんじゃないかってさ。来年もまたきっとあるから大丈夫とか。明日になったらまたあえるからそのときに話すとか。落ち着いたらまた遊ぼうとか。もう少し頑張れば夢はかなうとか…。あと数分後に、数時間後に、数年後に自分が空の向うにいなくなって、頼っていた未来に裏切られるかもしれないって、みんな気づいてないのかなって思ったんだ。そりゃあ現実が許さないことだってあるけど。未来なんて、何も保証してくれないじゃない。そんな

ものに、僕は潰されたくなかったんだ。」

彼は、中学3年の夏を待った。それまでに自分が空の向こうまで行ってしまわないように、体のケアも頑張った。きっと来年もまたある。そうやって、未来を、そして自分を信じようとした。

でもある冬の日、友達と話しながら歩いていた彼は突然発作を起こしてそこに倒れた。直接的な原因は寒さの制だったようだが、医者の判断では、「もう限界かもしれない。」というものだった。

彼の体は音もなく衰弱していった。必至にリハビリを頑張ってもみた。でも動かせるところには限界があったし、泳ぐなんて程遠かった。

春が来て、夏が来ても、彼の具合は改善しなかった。必死に治療を続けているが、熱もすぐに上がってしまうし、もちろん外出もできなかった。

「死ぬ前に、少しでいいから泳ぎたい!」

彼は、医者に、そして両親に何度もお願いをした。

そしてある日、少しだけ体の具合がよくなったからと、病院のプールにつれて行ってもらえることになった。くしくもその日は、よく晴れた、そして本当なら水泳大会に出られる日だった。

少しずつ手を動かしてみる。いつもより体が軽い。いつもより前に進める。きっと神様が

やっと僕に力をくれたんだ。いままでさんざん僕にいたずらをして、夢を潰してきたこの世界が、やっと僕に力をくれたんだ。ありがとう。来年は僕にも来たね。明日は僕にもあったんだね。未来を信じることができてよかった…。

「僕は発作を起こしたままプールに沈んでたんだって。僕の意識が帰ることのできる体はもう燃やされて亡くなっているんだ。意識だけがこの夢の世界に飛んでいった。そして気づけば、夢ラボの前で立ちどまっていて、夢ちゃんが僕をスカウトしてくれたんだ。『絶望してるならうちで働かないか?』って。

僕は現実が許せないんじゃない。自分の弱いからだが許せないんじゃない。未来や明日を充てにして、前に進もうともしない馬鹿な人間たちを許せないんだ。現実が許してくれないからって嘘をついて、未来があるから大丈夫だって言い聞かせて、夢を隠して生きてるあいつらを許せない。そんなことをしてるうちに、いつか自分の夢をゴミ箱に捨てることなんて見え見えなんだから!悔しいよ、本当に!」

パソコンに涙を落とす正夢さんのことを、小原ですら黙ったままみていた。

「あんたたちの夢の話に比べれば、私なんか大したことはないんだけどね。」

かごから離れたミアさんが、机に戻ってきた。

「私、西野ミアの夢、それは簡単。医者になることよ。」

西野ミアは昔から、いわゆる弱い女の子だった。にもかかわらず彼女の家庭環境は最悪だった。父はアルコール中毒者でほぼ働くことができない。母が家庭を支えてくれていたが、パニックを起こしやすい気質があり、ミアは彼らのストレス発散材料にされた。暴力は日常だったと言う。

それでも彼女は気丈に振る舞っていた。学校で先生に殴られた傷を見つけられても、「やだ。ミアはママと離れ離れに暮らしたくない。」と笑っていたという。

でも、彼女の傷は、恐ろしいところに現れた。それは夜だった。

彼女は私以上に、夜というものに影響された。夜泣きは、21歳になった今も完治していない。おねしょが収まったのも高校3年生だったという。そんな自分の体をなんとかしたくて、そして自分の身は自分で守りたくて、高校からは一人暮らしをした。必死でバイトをして、勉強も頑張った。そしてなんとか国立大学のい学部に合格した。

しかし、必死で頑張ってきた彼女は、いざ大学に入ると、ただ勉強してきただけの、現実に立ち向かっていただけの自分に気づいた。空っぽの自分にとって、本当にやりたいことなんてほとんどないように思えたのだ。

そんな空っぽの自分に現実は厳しかった。現実にさまよって、やりたい

ことを手探りする彼女に、「やる気がないなら大学をやめろ!」とどなる母。

「やる気が感じられない。」とどなる教授。全然上がらない大学の成績。「あんたそれでも医学生?」とほくそ笑む仲間の学生。

できないやつに世間は厳しい。やる気がなかったり努力し続けられないやつに世間は厳しい。

ミアは努力と言う言葉が世界で一番嫌いだった。頑張れといわれるのが次に嫌いだった。泣くなといわれるのが3番目に嫌いだった。そうやってひたすらに自分を無にして突っ走って、努力して頑張っていた先にあるものは、きっと夢じゃなくてただの現実だ。夢をかなえたと思っても、それはただの肩書とかそういうものになってしか帰ってこない。夢って、そんなに陳腐で中身も何もないものなんだろうか。みんな昔、幼稚園や小学校のころに得に書いていたあの輝かしい夢は、そんな張りぼての努力と、押し込まれた知識と、苦い薬みたいになっての見込んだ涙と、血を流して頑張った時間でできているのだろうか?

パン屋さん、花屋さん、弁護士、パイロット、宇宙人、バスケの選手、発明家、夫人景観、建築家…。「そうだね。」とみんなが受け入れてくれたあのころは、どうして過去になってしまったんだろう…。

それはきっと、私をむしばむ努力や涙という悪夢のせいだ。こんな悪夢を食って、自分の泣きやおねしょを止めてくれるものがあれば…。

その日も彼女は泣いていた。そして、目の前を1匹の虫が飛んでいるのに気づいた。汚い羽を持った気持ち悪い形の虫だった。でもハチなんかと違って刺してくることはなさそうだ。彼女は涙にぬれた手でその虫を手のひらに乗せてみる。すると、突然その虫は、手のひらから姿を消して、まるで自分の体に入り込むように消えていった。

数分もしないうちに、彼女の夜泣きは止まって、そして夢ラボの前に彼女は立っていた。

「それ、俺が孵化させた夢食い虫だ。でも俺、生物はからきし弱くてさ、おまえ、もしそういうの得意なら、うちで働かないか?」

自分よりも年下に見えるその少年の言葉に、彼女はなぜか不安感や不信感を抱かなかったという。そして、まだ涙の後が残った顔をふいて笑った。そして、

「私の夢を食ってくれてありがとう…。」と小さくこぼした。

「夢にはいろんな種類がある。でも、現実世界の人たちがみてるのは、自分を縛る夢だけなんだ。もっときれいで、だれにも止められることのなかった純粋な夢を永遠に持てる人なんか存在しえない。私はそんな世界を変えたいだけ。全部落ち着いたら、私は、夢の治療をする病院を現実世界に立てるつもり。」

ミアさんはいつも無表情だ。でもそのときだけは笑顔だった。そう、ここにいる人たちは、夢を語るときだけは笑顔なのだ。

ふとみると、黙って話を聞いていた小原が笑っていた。

「なんか、ここにいる人たち、みんなすごいんだな。でも俺は…やっぱり俺は、絶対にヒーローになるからな。ユメキさん、俺と勝負してくれないか?」

「夢は勝負じゃかなわないと思うけど、まあそれも面白いな。」

ユメキも小さな笑顔を除かせる。すると、布団のうえで、小さな体が動いた。

私は急いでその布団に駆け込んだ。

布団の中には私の夢にも似た温かい息吹が動いていた。優しい笑顔で私を見つめている。こんな優しい目をしたスズナを、私は初めてみた。どんなに

現実に染まって、変な顔をした人にも、輝いた瞳は備わっている。

「おはよう、お姉ちゃん。いい夢見せてくれてありがとう。」

「スズナ…あたし、ごめんね。つらかったよね。私の

せいで…。」

「謝らないでよ、おねえちゃん。私、ありがとうって言ってるじゃない?おねえちゃんは私に教えてくれたんだよ。夢をみることの大切さ、面白さ、美しさを。ママもパパも教えてくれなかった。だから私、自分の夢を守っていきたいの。」

私はそのとき、小原にユメキが言われた言葉を思い出した。

「おまえには夢をみる資格なんかない。」

夢をみる資格はきっとみんなに備わっているし、はく奪されてはならないだろう。けれど、夢を本気で信じる人は、自分の夢を守って、他人の夢をつぶさずに、全力で今を生きようとする人たちのことなのだろう。たとえその夢が小さくても大きくても…。

私がそんなことを考えていたら、ユメキが突然深刻な顔でこう言った。

「スズナちゃん、起きてすぐで申し訳ないんだけど、襲われたときの話をしてくれ。」

そうだ。いくら夢の世界であっても私には厳しい現実がある。でも今の私は、現実世界に生きていたときの私よりもずっと、今の現実世界が好きだった。好きでいられた。なぜなら私はこの現実世界では、夢をみる資格を得ることを許されているのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る