第39話
河原にあるベンチでおやつを食べている千夜ちゃんと環奈ちゃん。
フェルトが追加のお菓子を持ってくる。
千夜。
「久しぶりね。」
「弁論大会では楽しかったわ。」
フェルト。
「意見交換としては面白味があったわよ。」
「人それぞれ意見が違うし。」
千夜。
「意見が理にかなっていれば。」
「だけれど。」
フェルト。
「賢明な意見は誰でも欲しがるわ。」
環奈ちゃん。
世界史の地図を持ち出す。
世界の年表と地図が描かれている。
少し分厚い。
環奈。
「歴史に人類は示されている。」
千夜。
「歴史・世界史を見渡すと。」
「自国の繁栄。」
「物的な豊かさ。」
「よりよい暮らしを求めた人類の足跡がある。」
フェルト。
「戦争ですら。」
「自分たちの望み。」
「理想の為に。」
「邪悪な者を滅ぼす事もあるわ。」
千夜。
「日本では世の乱れが激しく。」
「乱世を治めるべき人物が常に必要とされた。」
「その政権がやがて廃れると。」
「また次の新しい政権が建てられた。」
環奈。
「彼らはまず王様を立てることによって。」
「自分たちの権利を保障してもらえると覚えた。」
「王様に委託すれば。」
「原始的な形態から脱出できると知ったから。」
「そのまま原始的な争いを続けるよりはずっと良かった。」
「これを自然に覚えた。」
千夜。
「人類に何かの望みはなく。」
「求めているものは何もない。」
「理想を掲げず。」
「現状維持に陥っている。」
「向上心はあるんだけれど。」
フェルト。
「まず自分たちの文明を確立させることに情熱を注いだから。」
「いにしえから受け継がれた教えは今日にも活きている。」
「天地創造の時から受け継がれてきた教えはいまもある。」
「教えを受けた人のみ。」
「自分の大黒柱を建てられる。」
環奈。
「世界史で行われてきた出来事は。」
「文明を確立し。」
「基本が出来上がる過程。」
「人類の歩みが記されている。」
フェルト。
「人や人類をよく説明する解説書なのよ。」
環奈。
「人類は何を理想としているの?」
「何を求めているの?」
「何が望みですか?」
「問われて初めて気付く。」
「答えを急いではならない。」
「人は賢明であったほうがいいのです。」
フェルト。
「文化はいにしえから受け継がれ。」
「ここにもあるから。」
「私は完全な新作は存在しないと思う。」
「受け継いできたものから創造される。」
千夜。
「文化を受け継ぐ。」
「これは基本。」
「歴史をおさらいしてみる?」
フェルト。
「賢者アリストテレス。」
「哲学者の元祖タレスから繋がる。」
「ソクラテス。」
「プラトンによる三賢者。」
環奈。
「フロネシス。」
「神知の気付き。」
「知恵は強過ぎると良くない。」
フェルト。
「高度な知性。」
「フロネシス。」
「自分の基本原理になる。」
環奈。
「フロネシスは言わば知性の高度化。」
「コントロールの高度化を意味するよね。」
千夜。
「フロネシスは高度な知性。」
「中庸の徳性。」
「たとえば。」
「臆病と無謀の中間は勇敢。」
「この徳性によって。」
「実践に向く知性へと成立する。」
フェルト。
「過剰や不足に偏らない。」
「専門書に書いてあるわよ。」
環奈。
「これは美しい知性です。」
「フロネシスでわたしは機能しているほど。」
千夜。
「やっと知性の真理に到達したのです。」
フェルト
「知性にも真理がある。」
「高度な知性があるのだと知ったわあ。」
千夜。
「到達点ですよ。」
環奈。
「最近戦争が多くないですか?」
フェルト。
「戦争中毒にならなければいいけれど。」
千夜。
「戦争も時に必要です。」
環奈。
「相容れない故に争う。」
「主権の為に。」
フェルト。
「負けたら主権を奪われる。」
「有史以前から戦ってきた。」
「いまもあるのです。」
「これは自然の摂理。」
千夜。
「しかし戦争に対する批判が無かった。」
「それで正義の為の戦争。」
「聖戦を知らなかった。」
フェルト。
「戦争は多いけれど。」
「義民のために。」
「正義のために身を投げ出して働く人たち。」
環奈。
「そうですよ義戦。」
「正義のために起こしたいくさ。」
千夜。
「常に義であるかに注意が必要。」
フェルト。
「義戦であれば戦争も正当なもの。」
「そうでなければ批判の的?」
環奈。
「ノーベル博士。」
「平和に対する考え方は他の活動家と違っていましたよ。」
「ズットナー夫人と手紙のやり取りをしつつ。」
「考え方の違いに疑問があったそうです。」
フェルト。
「ベルタという人の活動ではっきりして。」
「ズットナー夫人の著書。」
「武器を捨てよ。」
「これが大きな影響を与えているわ。」
千夜。
「その頃から慈善活動に目覚めて。」
「慈善家として活動していますので。」
「平和について正しい見解があったのだと思います。」
環奈。
「彼らはクリスチャンでも無いのに。」
「なぜ平和について語れたのかは知りませんが。」
「ノーベル博士は良い所を吸収して。」
「物にしていたみたい。」
千夜。
「戦争中毒になったらいけませんし。」
「でも戦争に参加した人ですから。」
「平和について悟った人だったかもしれません。」
「福祉の英雄です。」
フェルト。
「ノーベル博士については史実を基にした資料漫画があったり。」
「彼は神様が送り込んだ使者なのかしら。」
千夜。
「間違いありません。」
「偉人を称える賞を創設したのですから。」
「人類のために大きな貢献をした人々に毎年賞が与えられるのです。」
フェルト。
「では私利私欲ではなく。」
「受賞の基準は人類の為に大きな功績をしたのか?こういう意味です。」
環奈。
「道理からしてそうでしょう。」
「つまらない人物が受賞したら。」
「ノーベル賞の意味はありますか?」
フェルト。
「人類の為に大きな貢献をした人のみに与えられます。」
千夜。
「私利私欲で取ろうとする人間を非難します。」
「愚か者め。」
フェルト。
「にしても創造性って不思議よね。」
千夜。
「ポイエーシス。」
「製作に関する魂の状態。」
環奈。
「テオーレイン。」
「創造性について考察するという意味。」
「わたしはルネサンスの創造性の考え方を否定します。」
「創造性は神秘的なもので。」
「人間中心のものではないのです。」
「神様中心のものなのです。」
「よって。」
「とても不思議なものが創造性。」
「創造性は不思議なもの。」
千夜。
「やはり神様中心の文化は有り得るわあ。」
「芸術家がジーニアスではないから。」
「ジーニアスという名前の何かの助けがあるからジーニアスで居られる。」
フェルト。
「人間の知恵・理解が及ばない奥に入った所にジーニアスは居るわよ。」
環奈。
「神様中心の文化になると。」
「どうしても高度な知性や技術が確立されるよね。」
千夜。
「フロネシスもそのひとつ。」
「知性に真理あり。」
「わたしたちは高度な領域に足を踏み入れている。」
フェルト。
「フロネシスの要点のひとつ。」
「知性の真理。」
「高度な知性とはこのようなものだと説明してくれているのです。」
「知性の確立がアリストテレスのメインテーマだったんだよ。」
「適当に知性を持っていたら制御も使い方も分からない。」
「それを徹底的に研究して安全に使用・習得しようと言う試み。」
環奈。
「確かに知恵は放置すると何かしら振り回してしまったり。」
「そこまで上手に管理ができない。」
「知性の確立という点において必要な真理というわけですね。」
フェルト。
「知性を確立する?」
「素晴らしい。」
「この世で最高のモノ。」
「最高のひとつだわ。」
千夜。
「わたしたちは神様から訓練を受けているから。」
「天才でも早熟でも無さそう。」
「いにしえの賢者たちを理解できるのです。」
環奈。
「わたし達は花のように咲いて散るのではなく。」
「岩のように永く。」
「よって必要な訓練が生じている。」
千夜。
「そうですよ。」
「わたしたちは岩のように永く。」
「その為に必要な訓練を受けている。」
「神様に頼んだから。」
「最後に待つ永遠とはどんなもの?」
環奈。
「まだ道半ば。」
「ルネサンスが人間中心の文化なら。」
「神様中心の文化があっても良いはずだよね。」
「神様から教わっている。」
千夜。
「神様中心の文化?」
「それは大ありです。」
「悪影響の集大成ルネサンスの逆ですから。」
「やっぱり。」
「人にとっていちばん良いのは。」
「神様から教わることです。」
「すべて必要な事を教えてくれます。」
「ただこれだけで良いのです。」
フェルト。
「最近それを知って。」
「確かに。」
「人はいろいろ確立してきたけれど。」
「中には駄作とか迷作もあるから。」
「いにしえの教えも忘れかけていた。」
千夜。
「フロネシスもわたしの到達点。」
「神様から教わってようやく辿り着いた。」
「人から教わるものには間違いや愚見も少なくない。」
「そうやって積み重ねて。」
「人間色に染められるよりは。」
「全知全能なる神々に教えを乞うのがもっとも適切だと悟ったのです。」
フェルト。
「賛同するわ。」
「でも人が築いてきたものは無駄じゃないから。」
環奈。
「それはそうだよ。」
「正統なものはこの世にいくらでもあるよ。」
フェルト。
「私が見出したのは有神論者の結論。」
「神様から教えを受けるのがもっとも良いわ。」
千夜。
「神様は全知全能であられます。」
「それでもう言うことはありません。」
フェルト。
「まあ楽観視するわ。」
「ただ神殿に赴き。」
「言うとおりにする。」
「叛意を捨て。」
「なんとかやっていく。」
環奈。
「神様から教わる。」
「やっぱりこれが一番!」
フェルト。
「歩いていく過程で示される。」
「不思議な導きでそれは出てきて。」
「間接的な寺子屋のよう。」
千夜。
「それでいいんです。」
「それで。」
環奈。
「人として人らしく。」
「わたしたちって思想家?」
フェルト。
「たぶんそう。」
「自分の意見は言わないと。」
「しかし正しいとは限らない。」
千夜。
「結婚とかしますか?」
フェルト。
「無理にする必要はないと思うけれど。」
「個人によって違うわ。」
千夜。
「わたしは結婚する必要が無いわ。」
フェルト。
「私は競争が特に疎ましい。」
環奈。
「わたしは競争には加わらないことにした。」
フェルト。
「競争は常に勝者と敗者に分かれる。」
「全員が勝つわけではない。」
「必然として多くの人が敗北者になる。」
環奈。
「成功するのは一握り。」
「彼らは自分がその勝者になると思っているんです。」
「信じて疑わない。」
フェルト。
「あらまあお気の毒。」
千夜。
「人間中心主義だと。」
「大体が実力ではなく。」
「気に入られれば上へ。」
「媚びへつらいがすべて。」
「そんな簡単な構図が競争。」
「贔屓の引き倒し。」
「ひいきも度がすぎると、その人のためにならないこと。」
「むしろ、害を及ぼし、悪い結果を招くことが多い。」
環奈。
「愚かな人間の事ですから。」
フェルト。
「人間に対する批判が無いのが駄目なのよ。」
環奈。
「人類は自分の愚かさも乗り越えて行くのです。」
千夜。
「天の道理って知ってる?」
「それを適用してみて。」
環奈。
「ローマは一日にして成らず。」
「ローマ帝国が築かれるのに長い年月と努力が費やされた。」
「ということから。」
「大きな事業は長い努力の積み重ねがなければ。」
「成し遂げることはできないということのたとえ。」
「パリは一日でできたのではない。」
フェルト。
「一見有り得なさそうな事だけれど。」
「これが真実なのよ。」
「やるだけやれば。」
「人類が誤っても私の責任にはならないわ。」
環奈。
「それを悟ってからは楽観視できるようになったよ。」
千夜。
「天の道理に従ったらどう良くなるか?」
「そういうことよ。」
フェルト。
「自然の道理と天の道理が大切ね。」
「人類に失望したのは理解できるわ。」
「それはまともな人という意味なのでは?」
「人類を批判できる立場という意味。」
「あなたは別の存在だから。」
「失望して当然だし。」
「どうにでもなるのよ。」
環奈。
「なんの糸瓜。」
「わたしの思想。」
「人生・社会に対する見解は自然の道理によるもの。」
「自然由来の考え方。」
「道理に従っている事が順守される。」
「これがすべての思想です。」
さんにんでお菓子を食べて。
河原の風景を楽しみました。
魚が跳ねたり。
小鳥が飛んで来たり。
自然そのままが広がっています。
人と自然は元来ひとつなのかも?なんて。
汎神論。
小雨が降ってきましたが。
適度に雨に当たって気持ちがいいです。
雨を楽しむのも自然の恵み。
わたし達の夏休みは。
こうして有意義に過ぎ。
しっかりと記されて。
神様と共に。
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