第38話
夏休みも残り僅か。
王国祭が開かれ。
みんな思い思いに楽しんでいますよ。
句会やお茶会。
軍事パレードに。
演武や舞を踊る女性たち。
スポーツの試合は特に。
素人2人でプロ1人に対して戦うテニスハンデバトルなど。
スポーツ選手は激戦の日になっているようで。
市民にとっては憩いの時。
みんな出し物を持っていて。
それを披露したりも。
芸人やマジシゃンをはじめ。
各種イベントが一斉に行われる。
その中でもっとも人気があるのが騎士同士の試合なのです。
闘技場で練習剣を使って。
しかも市民も参戦できるという破格のイベント。
わたしはじっくり鑑賞。
渚沙。
「予想以上に強いわね。」
麻友。
「いつの間にか接近していますよ。」
心玖。
「瞬間的にスピードを上げる歩行テクニック。」
「あと。」
「体の限界以上の動きもできるみたい。」
環奈。
「それを維持できるの?」
心玖。
「通常の1倍なら体がついていけるらしいよ。」
「体の上限を大きく上回ると故障するとか。」
環奈。
「そんな技もあるんだ・・・。」
渚沙。
「やけにシンプルな技を使うわね。」
環奈。
「実戦では難しい技とか仕掛ける暇が無いんだよ。」
「形にこだわっていると余計に弱くなったり。」
「形にこだわると抜けない。」
「高度な技を仕掛けようなんて。」
「実戦ではまずできないよ。」
渚沙。
「だからシンプルな技に絞られていくのね。」
麻友。
「確かに複雑な技をかける暇は戦闘において皆無です。」
「確かに形ばかりに囚われると弱くなります。」
環奈。
「臨機応変自由自在。」
「剣術の秘伝だったり。」
心玖。
「あのパワーはどうやって出しているの?」
環奈。
「筋肉は量じゃなくて質だから。」
「トレーニングではなく実践的な訓練であそこまでの怪力になるんだ。」
麻友。
「ああ。」
「大柄な男性が吹っ飛ばされた。」
「フィジカルが違うんですね。」
「次元が違う訓練を積んでいるのでしょう。」
環奈。
「チャレンジャーが全滅した?」
渚沙。
「あんだけ強ければ挑む者もいなくなるわよ。」
環奈。
「うふふ~♪」
「かんなが出て行って。」
「チャレンジしてみるのだ。」
心玖。
「ガールズパワー。」
「相手にパターンがあるみたい。」
環奈。
「見ていたよ。」
「でもあれは手加減している証拠。」
「行くよー。」
かんなちゃんが闘技場に降りました。
ルプス。
「ほう?相手は小十郎殿の娘じゃないか。」
環奈。
「わたしに倒される覚悟はよろしくて?」
ルプス。
「おもしろい。」
「やってみなよ。」
環奈。
「まさか手加減したりしないですよね?」
ルプス。
「してあげようか?」
環奈。
「後で言い訳にしないでくださいね。」
ルプス。
「倒せたらいいなあ?」
環奈。
「あらまあ。」
「いつから道化師になったのかな?」
ルプス。
「単なる無謀なだけでは?」
環奈。
「恐れているのかな?」
「これは情けない。」
ルプス。
「あなたの心配をしてあげているのだ。」
環奈。
「そんなかわいそうな台詞を言うのであれば。」
「お互いを思いやりましょう。」
ルプス。
「いいやそれは結構。」
「ただいつものように向こう見ずであると覚えがあるもんですから。」
環奈。
「まあそれを見分けられない辺り。」
「同情する他ないですよ。」
ルプス。
「なるほど大きく出たな。」
環奈。
「あなたのそれが名札でしたら。」
「そんな悲劇はないのですから。」
ルプス。
「よし分かった。」
「来るが良い。」
観客が盛り上がる。
歓声で満たされる闘技場。
カメラがズームイン。
練習剣を抜いて。
斬りかかるかんなちゃん。
軽く弾いて連撃を浴びせてくるが。
かんなちゃん。
ひらりと回避していく。
ルプス。
「!?」
環奈。
「考えてから動いたら遅いんです。」
「自然体。」
「自然に体が動かないと遅い遅い。」
ルプス空振りする。
反撃されて受けるのがやっとのルプス。
ルプス反撃するが。
横やナナメに動いて。
射程ギリギリに陣取り。
剣で弾きながら。
防御するかんなちゃんに苦戦。
ルプス。
「動きが読まれている・・・?」
環奈。
「相手の動きがわかる。」
冷静沈着なかんなちゃん。
ルプスは興奮しているので。
読み間違えたようだ。
環奈。
「戦いに興奮は禁物。」
ルプス。
「むう・・・思ったよりやるのか・・・。」
「侮ってしまった・・・。」
環奈。
「ペルソナ・ノン・グラータ。」
ガードした相手に対して。
剣を押し付けて。
ナナメに逸れながら。
肩や側面に一撃入れる連続技。
一撃離脱技のひとつ。
ルプスは防御に成功するが。
バランスを崩してしまう。
環奈。
「クォ・ヴァディス。」
ジャンプ気味に一撃入れたら。
それがフェイントで。
すぐに回転しながら相手の後ろに回り込んで。
斬りつける。
ルプス後退して避けて。
反撃するも。
既に射程外に一撃離脱されている。
環奈。
「ヤクタ・アーレア・エスト。」
今度はシンプルな技のみの攻撃。
コンパクトで鋭く。
攻撃と回避を同時に行い続けて。
ルプスはかんなちゃんを捉えられない。
ルプス距離を詰めて突進しようとするが。
読まれていて。
避け際に一撃。
有効の判定を受けてポイントを取られてしまう。
観客は大喜び。
ルプス。
「調子に乗ってくれたな・・・。」
今度は長期戦に持っていかれて。
興奮気味に剣を振るうルプスにミスが多くなる。
素早く。
同じ場所に留まらない。
蝶のように舞い。
蜂のように刺す。
クラスメイトでボクシングが上手な娘がいて。
そのような敏捷性も学んでいたのです。
むやみに接近すると投げられますが。
かんなちゃんは知っていて。
足や太腿。
腰や腹。
肩など。
頭まで。
いろんな部位に攻撃を繰り返し。
防戦一方なルプス。
鈍重な動きを訓練されていて。
どうしてもその場に留まって身構えてしまうようだ。
形を持たない変則的な剣術に大苦戦が続き。
ルプスは遂に崩されてしまう。
バランスを完全に崩して。
かんなちゃんのペースに呑まれる。
環奈。
「剣ってこういう使い方もできるんですよ?」
剣を突き上げて。
グリップを逆さに持ち替えて。
上から突き刺す。
ルプスなんとか打ち払うが。
向きを回転して後ろ振り返り斬りを食らう。
また有効の判定。
反撃でかんなちゃん。
一撃もらう。
2-1。
ルプス。
「私に謬錯が!?」
かんなちゃん。
足元を斬りつけて。
また有効の判定。
返し刀で振り降ろしをガードしつつ。
ジャンプして後退。
動きが鈍重なルプスが追いかけるが。
横から回り込まれる。
ルプス。
「なんと!!」
環奈。
「どうやら下段ががら空きみたいですなあ。」
討ち合いになると必ず横に逸れたり。
後退を繰り返すので。
ルプスはさすがに勝ち目を失った。
環奈。
「わたしは剣の使い方を知っている。」
「あなたは剣術を学んで戦い方を知っている。」
「剣そのものについて知らないのです。」
ルプス。
「なんとか討ち合いに持っていけば・・・。」
射程ギリギリで仕掛けてしまい。
ミスした所を。
連撃を入れられて。
ルプス一本を取られて敗北。
観客は大はしゃぎ。
環奈。
「さすがエリートでした。」
「ギリギリ勝てた。」
ルプス。
「さすがあのお方の娘だ。」
「よく鍛えられている。」
「それに自分でよく工夫しているし。」
「自分を高めた。」
「私が剣の天才ならば。」
「あなたは鍛錬の天才だ。」
環奈。
「これは光栄です。」
「ようやく自分を証明できたというもの。」
「元々は真理の為にやってきたこと。」
「実も結ぶものです。」
握手して。
観客に決めポーズ!!
みんなで拍手喝采。
階段で元の席に。
これを見てチャレンジャーが次々と出て行って。
30人中。
騎士が交代しながら。
3人ほどの勝利者が出ました。
フェルちゃんもそのひとり。
いつの間にいたのかな?
連絡無かったです。
自慢するため?
えー?
渚沙。
「やるじゃないの。」
環奈。
「あれでもギリギリ勝てるくらい。」
心玖。
「でもみんな称えているよ。」
麻友。
「武勇伝になりましたね!」
環奈。
「少なくともわたしは本物だそうです。」
「ひとつの到達点なのかな。」
渚沙。
「誰かが手本を見せないと。」
「それがあんたにまわってきたんだと思うわ。」
環奈。
「フローレンス・ナイチンゲール。」
「マザーテレサ。」
「ジャンヌ・ダルグ。」
「女性のお手本はいくらでもいらっしゃいました。」
「女性らしい女性でいたいです。」
「それがわたしの目標。」
「わたしを岩に刻め。」
国民の歓喜が顕現した王国祭。
エリート騎士相手に試合で勝利する。
期待の新星としての名声を高め。
他のエース女子と共に並ぶことができました。
実はわたしの他にも強力な女の子は多数いて。
少しでも手を抜くと負けちゃうんです。
先駆者めぐみちゃんとか。
グリズリーを多数仕留めたチャレンジャー結衣ちゃんとか。
ゲームマスター蒼井ちゃん。
天才哲学者の弟子である奈々ちゃんとか。
虹色アーティスト時雨ちゃんとか。
スーパーアイドル澪ちゃんとか。
遅れを取らないように注意しつつ。
しかし。
この夏休みは。
わたしにとって。
黄金時代なのでしたよ。
女性とはこうである。
なんて正解を定義付けると。
正しい女性とはなに?という問いまで行き着きません。
究極の女性。
しかし女神様は女性がなんであるかを教えてくれるのです。
ただわたしは習うだけ。
結論に辿り着きつつ。
わたしたちの時代が訪れます。
黄金時代の再来へ向けて。
そして。
わたしの存在が石板に刻まれて・・・。
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