第19話

杏桜ちゃんがフットサルをしています。


杏桜。

「ボールさんは渡しません!」

「私のものだから!」

「マイハニー!」


選手。

「中々取れないよー。」


杏桜。

「私の彼氏をあなたに託します。」


味方。

「ゴール!」


麻友。

「すごいボールキープ力ですね。」


杏桜。

「私の彼氏は誰にも渡さないわ!」


麻友。

「彼氏?」


杏桜。

「一度モノにした彼。」

「麗しき球体。」

「私だけにもたらされたもの!」


味方。

「駄目です。」

「情念だけが暴走しています。」


選手。

「手ごわいなー。」


試合終了。


スポーツホールにて。


麻友。

「なんでも恋にたとえますね。」


杏桜。

「いつか見たの。」

「両親に連れられてみたあの桜。」

「綺麗だった。」

「この世の美に魅せられて。」

「あの時の甘美なときめきが私をこうも突き動かす。」


麻友。

「わー手に負えない。」


杏桜。

「麻友ちゃんも好きよ。」


麻友。

「えー!?」


杏桜。

「いつか人が好きになったの。」

「だから麻友ちゃんみたいな人も好きよ。」


麻友。

「私ですか?」


杏桜。

「私の活躍を見に来てくれたじゃない。」

「本当の友達ってこういう所に居るのね。」


麻友。

「こんな言葉があります。」

「あなたがピンチの時に助けてくれる人が本当の友達である。」

「その時に友達では無い人は去っていく。」


杏桜。

「見せかけだけの友情なんて友情じゃないわ。」


フェルト。

「そのとおりよ。」

「仲がいいだけで友達というのは違うわね。」


麻友。

「しっかり友情を心に秘めていないと。」


フェルト。

「共に喜べなければ。」

「単なるつるんでいる知人。」


杏桜。

「一枚剥けば無くなる関係なんてばかばかしいわ。」


フェルト。

「このあと一緒に昼食どう?」


麻友。

「お弁当ありますよ。」

「お花見的な。」


杏桜。

「ぜひご一緒に。」


さんにんで昼食。


フェルトがちょっかいを出す。


麻友釣られる。


杏桜。

「女の子同士でいちゃいちゃだなんて。」

「何か生まれる!生まれる!」


フェルト。

「ちょっと♪」

「何言ってんのよ~。」


麻友。

「そのまま恋に発展したりして。」


杏桜。

「キャー!!」

「ここから男子は読んじゃダメ!」

「男子禁制の女の園!」


フェルト。

「ふふふ♪」

「おもしろい人♪」


麻友。

「一緒に居ると楽しいですね。」


杏桜。

「キャー!!」

「何かのフラグが立った!?」

「ここから何の分岐!?」

「そのまま百合に突入!?」

「展開が読めません!」


フェルト。

「真顔で冗談を言うんですもの。」


麻友。

「どこまでが本当か分からないです。」


なんにでも恋をして。


なんでも恋にたとえる。


本人は冗談で言っているらしいです。


もしかしたら。


生粋の道化師なのかもしれません。


謎多き杏桜ちゃん。


変化球の達人です。

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