第17話

剣術道場。


激しく打ち合う訓練生。


フェルトは大人に交じって。


厳しい鍛錬を積んでいる。


訓練生。

「フェルトもう上がりな。」


フェルト。

「いいえ。」

「もう少しやります。」


訓練生。

「なんて熱心な。」


フェルト。

「剣士という剣士に試合を申し込み。」

「一日に200試合をこなした剣豪も居ます。」

「並の鍛錬では並の人にしかなりません。」


訓練生。

「さすが名家だけあるか・・・。」


師範。

「この前とある女の子に負けた時から。」

「戦法の見直し。」

「猛特訓をしているな。」


訓練生。

「ああいう人が雲の上に行くんですかね。」


師範。

「まあ見ていなさい。」


次の日。


フェルトは大荷物を背負って。


中身は重り。


動きのトレーニングをしておりました。


フェルト。

「推力重量比。」

「体も身軽じゃないと。」


桜花。

「その様子だと環奈をすぐ追い越しちゃうわね。」


フェルト。

「いいえ。」

「あの娘は信じられないトレーニングをしているから。」

「そんな簡単ではないわ。」


桜花。

「才能ってやつ?」


フェルト。

「才は才に溺れる。」

「肝心なのは心構え。」

「才能は初期値があって。」

「自分を活かした人だけが優れた人物になれる。」

「神童と呼ばれる人を見て。」

「鍛錬したことなんてないはずよ。」


桜花。

「本物はストレートな強さがある。」

「才能だけでは勝てない。」


フェルト。

「才能の定義を知っておくべきね。」


詩織。

「おや。」

「凄まじいトレーニングですね。」


杏桜。

「それだけ鍛えて振り向いて欲しい人が居るとか?」

「ああ!なんて尊き刹那!」


フェルト。

「偉人のようになれなくても。」

「自分のオリジナルを追求すれば。」

「優れた人物よりも優位になる。」

「みんな努力努力言うけれど。」

「それでは方向性を失っているわ。」

「自分を活かす事を知らないんですもの。」


詩織。

「偉人はお手本。」

「こうなると。」

「才能は心構え次第ということでしょうか。」


桜花。

「才能が無いと主張する人は決まって何もしないから。」


杏桜。

「その芸にふられちゃうよ。」

「その年で失恋!?」

「花は早々に散ってしまうの!?」


フェルト。

「私は才能が無いと喚く人を哀れむ。」

「人の力の限界だから。」

「天からの助けが必要なのよ。」


桜花。

「人の限界とは中々悲しいものです。」

「才能は限界を突破できるかが焦点よね。」


詩織。

「本当は可能なものを。」

「見出せないから。」


フェルト。

「凡人が凡人で居るのはその人が凡人だからよ。」


詩織。

「それって言い換えますと。」

「平凡な存在だから平凡にしかならない。」

「存在的に平凡だから平凡以上にはならない。」

「という意味ですよね。」


フェルト。

「あなたレシプロ戦闘機に乗っていて。」

「敵の戦闘機のほうが性能が上回っていたらどうする?」


詩織。

「技量でなんとかしますね。」


フェルト。

「結論としては。」

「自分の可能性を徹底的に追及した人が。」

「圧倒的な力を持つに至る。」


桜花。

「多くの人は適当にやってそれが才能の限界だと言っています。」


杏桜。

「そんな中途半端にお付き合いしたら。」

「失礼でしょ!」


フェルト。

「そう。」

「やり方次第よ。」

「中々有益な議論よね。」


詩織。

「ではわたしたちはトレーニングの邪魔をしないように。」

「あくまでお手本として見ていましたから。」


桜花。

「邪魔しちゃったわね。」


杏桜。

「馬に蹴られないように退散しなくちゃ。」


一同退場。


フェルト。

「もう3セットやりましょ。」

「次は勉学に励みますか。」


フェルトは成績優秀です。


学校は教師中心ではなく。


生徒中心で。


内容は。


たとえば。


この歴史史実に何を見出すかとか。


いろんなアーカイブを見て。


理解を深めたり。


芸術に触れあって。


見識を広めたりも。


教師はテーマを決めて。


生徒が何に行き着くかとか。


集団主義教育ではなく。


自主性を重んじる教育になっています。


小学校は基礎を徹底的に学びますが。


それ以降は自由主義の教育になっているのです。


フェルトの家は国中で知られる名家。


むかしから多くの手柄を立て。


国王に信頼される家柄。


重圧もあるけれど。


それ以上にフェルトが打ち勝ってきて。


少女のうちからスカウトが見に来るほどです。


寝室。


フェルト。

「私は力という概念をよく知っている。」

「だからここまで強くなれた。」

「まだ向上の余地はたくさんある。」

「環奈も踏み台になったりして。」

「でもあの娘だけは侮れない。」

「何か他とは違うから。」

「私が見出したのは。」

「人の力という概念への無知。」

「普通に練習すれば上に行けるという妄想。」

「自分には自分なりの姿があって。」

「自分を追及すること・・・。」


机に向かいながら。


古風なランプを灯して。


「力は人に必要不可欠なものだけれど。」

「人は扱い切れず。」

「しかし力そのものは。」

「自分を受け入れる者にその身を宿す。」

「力を肯定した結果は強者であり。」

「力を否定した結果は弱者であり。」

「力こそ人の基本原理のひとつ。」


ノートを開く。


本のページを開く。


何かの参考書がいくつか。


フェルト。

「誰もが力という概念について蒙昧であり。」

「力こそ人を人らしくする。」

「やっぱりこれね。」


参考書を閉じました。


真摯に自分に向き合い続け。


己の力を増大させていきます。


フェルト。

「力は他の分野にも活きる。」

「結論としては。」

「強さや力は大切なものだから。」

「けなしてはいけない。」

「人が人であるために力や強さはあるから。」


フェルトはノートを閉じて。


剣を磨いています。


フェルト。

「真剣ってなんでこんなに美しいのかしら。」

「人の力の象徴だから?」

「ならいっそう美しいわ。」


武器に見惚れています。


翌日も鍛錬の日々です。


自分の基盤固めを怠らず。


ひたむきに走り続ける。


フェルトが見出したのは人らしさ。


女の子のひとつの可能性です・・・。

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