傷つきながらも前に道を切り開くだけ

 新二年生になった頃だった。小学生みたいな感じは抜けてて、中学生で来年は自分たちが最高学年であるのだ自覚してしまう時期だった。

 僕は自己紹介で趣味だった音楽とアニメについて話した。人前に出ることはあまり好きではなく、苦手だった。それ以上に苦手なのが、『女子との会話』だった。

 アニメと漫画の読み過ぎのせいなのか、自分に自信が持てないからなのか、女子が頭の中では何を考えているのか恐怖心を持っていた。

 もし、キモイとか、気持ち悪いとか思われていたらどうしよう。臭いと思われていたらどうしようといつも怖くて、心の耳を必死になって閉じていた。男子と話す分には何の問題もなく、ゲームとか世間話とか、下ネタとか言って笑っていた。

 そんな僕だったから、自己紹介の後、女子に話しかけられた時は動揺してしまってオロオロしていた。

 すると、その女子が、


「僕くんもこの曲が好きなの?」


 と聞いて来た。僕は、


「う、うん」

「へぇーそうなんだ!じゃぁこの曲も聞いてきてよ!きっと僕くんが気に入ると思うよ!」

「わ、分かった。あ、ありぎゃとう」


 あ、噛んでしまった。僕は顔が熱くなるのが分かった。その女子は気にする様子は無く、


「どういたしまて」


 そういって僕に笑顔を向けてくれた。僕はその笑顔に思わず、好きだと思った。

 好きというのは定理もないし、うまく説明できる人はこの世にはいないと思う。多分唯一言えるなら、瞳孔がはち切れんばかりに開いていた思う。

 それから半年間ずっと自分の心にはその女子が好きだという気持ちがいつもあった。

 ある時、僕が所属していた部活の友達が、


「そいやぁ、クラスに○○さんいるだろ」


 僕が好きな女子の名前だった。僕は、


「あ、うん、いるね」

「○○さん、サッカー部の△△が好きで、その△△も○○さんのことが好きらしいぜ。いわゆる、両想いってやつだよ」

「へ、へぇそうなんだ。……」


 ここで黙っておけば良かったと後悔した。僕は思わず、


「僕も○○さんが好きなんだけどな」


 独り言のつもりでいったのが、聞かれていたらしく、部活の友達にはこの帰り道の間、追及を受けた。

・・・

 それから次の日。人気のないガリの先生が授業する理科の時、部活の友達が、


「そいやぁ、僕くんは、なんで○○さんが好きなの?」


 と大きな声で聞いてきた。僕は背筋が凍るとはこのことだと体験したと同時にクラスの中がざわざわし出した。

 わざわざ、今言う事はなかったのにと、部活の友達をかなり呪った。

 僕が好きな事はただ黙っていた。

 それから季節は過ぎて、最高学年である三年生になった時、僕は手紙である場所に呼び出された。

 体育館裏。そこに行くと、僕が好きなの子はいた。僕は、


「い、いきなりどうしたの、こんな場所に呼び出して?」

「ごめんね、忙しいのに、私ね、僕くんにどうしてもいいたいことがあったの」

「な、何?」


 胸が高鳴っていた。多分、これから僕は、この人にs


「ごめんなさい。あなたのことを好きと思えない。それ以上に生理的に無理」

「……そ、そうだよね。なんか、ごめんね勘違いっていうか好きだと思って、一人でなんか舞い上がってた。なんか、ほんとごめん…」

「それじゃぁね」


 好きだった、いや元好きだった女子は、俯きながら小走りで体育館裏を後にした。

 全部、全部自分の妄想だったんだ。自分がどれだけ思うだけなんじゃダメなんだ。

 もしかして、僕は半年間もキモイことをしてたのか。ずっと、ずっーと。好きな人を傷つけることをしていたのか。

 そう思うと今までの自分の気持ち悪さに溝へ吐いてしまった。

 死にたくもなった。何度も拳をコンクリートに打ち付けた。

 なんというか、いや、何と言えばいいのか分からない感情だった。

 どれだけ後悔したのか。好きになってしまったことが嫌になった。自分は人を好きになってはいけないと思った。

 それから僕は、淡々と仕事をこなすようになっていた。勉強も淡々とこなし、地元で有名な進学校ではなく、毎年定員がオーバーするほどの人気な総合学科の高校に入学した。そこでは、機械科を選択して、淡々と授業こなしていた。

 ある日、自分が機械科の実習で作ったものが県で表彰された。

 僕はこの時、物作りの楽しさに気が付いた。それからずっと誰もが使えて生活が便利なるもの開発しては、県で表彰されていった。

 僕はこのときから自分の会社をつくってみたいと思って、会社の経営についても学び、会社などにも積極的に見学や、学校に許可を得て働いたりした。

 高校を卒業するとき、ビジネス科の優秀だった女子に経理をしてもらいたいと頭を下げてお願いした。

 ビジネス科の女子は、


「じゃぁ、君の第二ボタンをくれたらいいよ」


 と、言ったから、僕は「分かった」と言って、制服の第二ボタンを引きちぎって、渡した。

 ビジネス科の女子の両親から、


「本当に大丈夫なのか?」


 と聞かれたので、場所の確保が出来ていることと、自分が受賞してきた賞の数を言って、これから開発しようと思っていた物の資料を見せると、その父親から、


「もし、この資料の物が出来たら、わが社に持って来てみないか?」


 と言って、名刺を渡された。そこには、誰もが一度は聞いたことがある車の大企業の名があった。

 それから、ビジネス科の女子は、父親の入れさせようと会社を辞退して、僕が作った会社に入社した。

 それから一年は、大変だった。馴れないことばかりだったが、諦めようとは思わなかった。

 そう思わなくなってしまうほどに人を雇っているという重圧は感じていた。

 だから、毎日、数時間しか寝ずに、研究に没頭した。

 そうして出来た物は、車の大企業に見てもらうとすぐに仕事の受注がもらえるようになり、各国の車メーカーなどからも仕事の受注が来て、若社長とネットや新聞、週刊誌、雑誌などで掲示されるようになった。

 僕はそう言った取材のときいつも言っていることがある。


「成功なんてのはないんです。僕がしたことは成功じゃなくて道を開いただけなんです。成功って言葉は、その上を目指そうと思わない人間の言葉だと思ってるんです。だから、僕は毎日道を開くために努力をしてきただけなんです。……それと」


 それからの言葉は、お腹を大きくしたビジネス科の女子、いや、秘書の子が隣にいて、


「僕には、守らないといけないものが人一倍あるだけですよ」


 とにっこり笑った。

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