第五話:カーナビ案内

 だが、俺が聞きたいのはそんな姉弟きょうだいののろけ話ではなく怪談とやらの方だ。


 話を先へと促すと、姉は「それでね……」と続きを話しだした。


「夜景を見終わって、それじゃあ帰ろうかってことになって車に乗り込んだんだけど、走り始めてすぐに触ってもいないのにカーナビが勝手に動き始めて……この先二百メートル先を右です、みたいなこと喋ってさ、あたしも彼もビックリして」


 その時のことを思い返してか、姉の視線がテレビから自分の足元へと落ちた。


「故障かななんて言いながら、そのまま走ってたら、少ししてまた、この先百メートル先を右ですって、案内してきて。彼氏がこいつどこに案内する気でいるんだって笑いながら言ってたんだけど……本当に、カーナビが言った場所に右折できる道があったんだよね。細い道で、あからさまに山の奥にしか繋がってないような真っ暗い所で、彼はふざけて行ってみるか? なんて言ってきたけど、恐いからあたしは嫌だって断って、そのまま無視して通り過ぎたの。そしたらその途端、目的地を通り過ぎました、Uターンしてくださいみたいなことカーナビが言いだして。それも、連続して何回も何回もだよ? さすがに不気味になって、彼も黙り込んじゃって。……その後、峠道から出た途端、ピタっとカーナビが止まったの。それまでは壊れたみたいにうるさかったのに」

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