第五話:カーナビ案内

「――ねぇ、ちょっと聞いてほしい話があるんだけどさ」


 夕食を終え、リビングでスマホをいじりながらテレビを見ていた俺の横に、飲みかけのジュースを持った姉が座り込んできた。


 明日までに仕事の資料をまとめないといけないとかで、父親は自室へ戻りパソコンを叩いている最中で、母親は台所で食器を洗う音を響かせている。


「ん? 何の話?」


 いきなり何だろうと疑問符を浮かべながら姉を見ると、困っているようなでもどこか得意気なようにも窺える表情で、俺を見つめ返してくる。


「あのさ、あたし昨日の夜に彼氏とドライブに行ってたじゃない? その時に、実はおかしな体験しちゃったんだよね。……聞きたいでしょ?」


「恐い話?」


「そう。結構恐かったよ」


 怪談自体は嫌いでもないため、俺は僅かに姿勢を正してスマホを太ももの上へ置き、姉の方へ上体を捻るようにして向けた。

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