第四話:鳴き声

 おかしいなぁ、気のせいだったのかなぁ。


 そう思い首を傾げながら、お婆ちゃんはまた前へ向き直ると、家に向かい歩きだします。


 辺りには木々が密集している細い道で、微かに吹き抜ける風が枝葉をざわざわと揺らし、小さな子供が暗くなってから一人で通るにはかなり勇気のいる場所だったらしいのですが、早くそこを抜けてしまおうと速足になって歩いていると、また背後でニャア……と猫の鳴き声が聞こえました。


 やっぱり、猫がいる。付いてきてるんだ。


 このまま家まで付いてこられては、自分が親に叱られてしまうかもしれない。


 そう思ったお婆ちゃんは、これは困ったなぁと思いつつも今更また仔猫を連れて河原まで戻るのも恐いと考え、意を決したように前を向くと、そのまま全力で駆けだしてしまいました。


 走って行けば、追いついてはこないだろう。


 そう思いながら必死に足を動かし、ようやく木々に囲まれた不気味な道を抜けた正にその瞬間。


 ニャアァァァ!! っと、今度は異様に大きな鳴き声がすぐ後ろから響いてきて、お婆ちゃんは心臓を跳ねさせながら再び後ろを振り返りました。

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