第四話:鳴き声
そこには、たった今自分が抜け出した木々に覆われた暗い小道が、まるで闇のトンネルのようになってポッカリと黒い空間を作り上げていました。
その闇の中を、ジッと目を凝らし見つめていたお婆ちゃんは、本能的に何か嫌な予感がして身がすくんでしまい、足を動かすことができなかったそうです。
今の大きな鳴き声は、仔猫なんかじゃない。あんな大きな猫の鳴き声なんて聞いたことない。
ドキドキと心臓を鳴らしながら闇を凝視していると、不意に真っ暗なその道の奥で何かが動いたような気がして、お婆ちゃんが息を飲んだそのとき。
闇の中からぬぅ……っと大人の背丈よりも巨大な猫の顔だけが浮き出てくると、お婆ちゃんを見下ろしながら、低く不気味な声でニャア……と鳴きました。
その瞬間、お婆ちゃんは金縛りが解けたかのように悲鳴をあげ、無我夢中で家まで駆け戻ったそうです。
帰り着いてすぐ、巨大な猫のことを両親に話しましたが、当然と言うべきか信じてはもらえず、帰りが遅くなったことをただ叱られてしまっただけで、結局後にも先にもその巨大猫を見たのはお婆ちゃんだけ。
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