――怪談会へ――
話しながら、羽切は自分のコップへ口をつけ唇をしめらせる。
「でも、さすがにもう慣れてしまいましたね。慣れた、と言うか諦めたと言うべきか。なるようにしかならないと、そういう結論に至ってしまうと言うか、そんな感じです」
「そこまで思うなら、引っ越ししようとか考えないんすか?」
羽切につられるようにして、渋沢もコップへ口をつけそう疑問を口にした。
「考えたこともありましたけれど、お金もかかりますし。それに、私一人でどこへ行けば良いのかもわからなくて、まごついているうちに時間だけが過ぎてしまいました」
「ああ……」
何がああ、なのかはわからなかったが、渋沢は曖昧な態度で頷くとばつが悪そうにそのまま黙り込んでしまった。
要は金銭的な事情など、ここに留まることを決めた背景には色々な問題があったということなのだろう。
空気を読まない渋沢のせいで微妙な間が生まれてしまい、俺は何か盛り上がれそうな話題はないかと必死に頭を働かせる。
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