――怪談会へ――

「それわかるわ。冬場なら余計にな。大雪とか降ったらどうしてんだろうな?」


「やっぱり、買いだめとかじゃない? 大雪じゃ、車があったって身動きとれないよ」


 女の生活について、二人があれこれと議論し始めそうになった矢先、台所へ続く戸が静かに開いた。


「お待たせいたしました。どうぞ」


 お盆にお茶の入ったコップを四つ載せて戻ってきた女は、俺たちの前にコップを置いていく。


 そうして、自分の分のコップを置きながら自分も座り込むと、改めて俺たちへ挨拶を口にしてきた。


「ご挨拶が遅れてしまいました。私、羽切はぎり葛杷くずはと申します。先程も言いましたように、主人が亡くなってからは、ずっとここで一人暮らしをしておりまして。たまにいらっしゃるお客様をもてなすのが、唯一の楽しみなんですよ」


「はぁ……。羽切さん、ですか。この辺り、他に民家とかはないんですか?」


 目の前に置かれた氷が入ったお茶と羽切を交互に見つめながら、とりあえず俺はそんな問いを口にする。

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