――怪談会へ――

「すみません」


 お礼を言いながら移動し、俺たちはそれぞれ敷かれた座布団の上へ座り込んだ。


 壁に掛けられた古い柱時計がコッ……コッ……と規則的な音を響かせている。


 見たところ、テレビやパソコンは無く、家具も最低限のものしか置かれていない。


「そのままお待ちくださいね。今飲み物を用意しますので」


 俺たちが座るのを確認すると、女はそう言って隣に続く曇りガラスの引き戸――奥の座敷ではなく、玄関から見て右手側にあった戸だ――を開けて、その先へと姿を消した。


 開いた戸の隙間から一瞬だけ奥の様子を覗くと、どうやらそちらは台所になっているのが把握できた。


「……すげぇな。こんなとこであの人ずっと暮らしてんのか? いくら人それぞれっつってもよ、暇すぎてたまんねぇだろ。テレビどころか、雑誌も見当たらねぇぜ」


 遠慮がちに室内を眺めていた渋沢が、囁くようにして呟きをこぼした。


「買い物とか、どうしてるんだろうね。庭に車なかったみたいだし。移動販売とか来るのかな?」

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