――怪談会へ――

 女が立ち止まり、前方を指差す。


 全員でそちらへ目を凝らせば、確かに何やら建物らしき輪郭りんかくと仄かに灯る人工的な明かりを見ることができた。


「ああ、良かった。やっと休める」


 安堵した戸波が、肩の力が抜けたような声を漏らすと、女はクルリと振り返り「家に着きましたら、すぐに何か冷たいものをご用意しますね」と告げてニコリと微笑んだ。


「ありがとうございますー!」


 嬉しそうにお礼を言う戸波へ小さく頷き、女はまた下草を踏み分け歩みを再開し、俺たちもすぐにそれを追った。


「さ、どうぞ。遠慮せず上がってください」


 雑草だらけのエリアを抜けると、こぢんまりとした庭へと辿り着き、俺は改めて目の前に建つ家を眺める。


 木造の平屋で、お世辞にも広いとは言えそうにない。


 それでも普段から手入れをしているのか、古さを隠しきれないなりにもしっかりと形を保ち、家としての機能を問題なく果たしているなと、建築にうとい俺にもよくわかった。


 ぐるりと周囲を見れば、庭は綺麗に草が刈られ、隅には何やら小さな畑が作られている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る