第二話:最期は一緒に

 女同士ということもあって、若干気が緩み始めているのか、戸波が警戒心の薄れた口調でそんな言葉を挟んできた。


「それはあるかもしれませんね。ですが……私個人としては本当にあった話なのかと信じるように心がけて、毎回お話を拝聴しています。何と言うのか、信じて聞いた方が面白いですし。それに私個人も実際に数回ほど不思議な体験を過去にしていますから」


 女は戸波の言葉にクスリと笑いながら顔を戻すと、足を止めぬままに話を続ける。


「え? ひょっとして、幽霊とか見たことあるんですか?」


 意味深な言葉を吐き出す女へ、俺が好奇心を持った風に訊ねてみると、女は「ええ、あるんですよ」と小さく頷き、チラリと木々の生い茂る頭上を見上げるような仕草をした。


「そうですね……せっかくですから、私が聞いたお話を一つ語りましょうか」


 ザワリと、生ぬるく湿気しけった風が俺たちを撫でるようにして吹き抜ける。


「これは今年の春先に、三十代くらいの女性から聞いた話なのですが――」


 ヒグラシの鳴き声とガサガサと下草を踏み分ける音をBGMに、女が静かに語りだした。

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