――招きに応じて――

 日守湖。この山にある一番大きな湖で、今日はそこを目的地として訪れていた。


 特に珍しい景色やスポットがあるわけではないが、周囲は綺麗に整備され登山好きなカップルの密かなデートスポットになったりしている場所で、俺たちも先程まで日守湖の周辺を散策していたのだが、その帰り道でどこをどう間違えたのか、こんなおかしな所へ迷い込んでしまった。


「日守湖ですか? それでしたら、尚更時間がかかりますよ。皆さんが来られた方角とは逆ですから、今からあそこへ続く道へ戻るのはやはり危険かと思います」


「え? 逆? 嘘ぉ……ちょっとフミくん、勘弁してよぉ。思いっきり道間違えまくってるじゃん」


 女の説明を聞いて、戸波がうんざりしたように渋沢の背中へ文句をぶつける。


「んなこと言われても仕方ねぇだろうがよ。オレだって初めて来たんだし、大体茜だって何も言わないで後ろついてきてただけなんだから、そんな一方的に責められる立場じゃねぇだろ」


「はぁ? 何? あたしが悪いって?」

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