――招きに応じて――

 ましてや、相手が嫌がっているのならダイレクトにアウトだ。


郁洋ふみひろ、あんまり恐がらせるようなこと言うなよ。茜本気で嫌がってるんだし」


 三人で協力し合わなければいけないこの状況で、ぎすぎすした空気になんかなってほしくない。


 そう思いながらフォローを入れる俺へ、戸波は味方を見つけたと言いたげな視線を向け、渋沢は苦笑しながら肩を竦めて顔を前に戻してしまった。


「さすが響平きょうへい、フミくんと違って優しいね」


 歩調を僅かに変えて俺と並ぶようにしながら、戸波は渋沢に聞こえるようわざとらしく言葉を紡ぐ。


「はいはい、どうせオレは佐久田さくたみてぇに優しくなんてねーよ。休める場所見つけたら、耳塞ぎたくなるくらい恐い話しまくってやるから覚悟し――」


 売り言葉に買い言葉。戸波の嫌味に反撃を試みようとしていた渋沢の声が、中途半端に途切れた。


 同時にその足も歩みを止め、何かを見つけたかのように前方を向いたまま動かなくなる。


「……? どうしたんだ?」

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