――招きに応じて――
「――とまぁ、そんな話だったんだけどよ。嘘つくような奴じゃなかったはずだし、マジでそういう体験したのかもな」
中野から聞いたという話を語り終え、渋沢は肩越しに俺と戸波を見てニヤリと笑った。
「ちょっとさぁ、こういうとこでそんな恐い話しないでよ。普通に恐くなるじゃん」
突然喋りだした渋沢の話を終始黙ったまま聞いていた戸波は、うんざりした声音と表情で非難を飛ばす。
「茜ってこういうの苦手だったっけか?」
「こんな状況でしないでって言ってるの。ただでさえ心細くなってきてるときにさ、何で余計不安になるようなこと話すのかな」
「心細いって、オレたちも一緒にいるだろうよ。一人きりじゃあるまいし、大丈夫だって」
硬い口調の戸波とは裏腹に、渋沢は緊張感の欠片も含まない軽い口調で返事をして、余計に戸波のまとう雰囲気を悪いものへ変質させる。
ただ黙って歩くのも、精神的に堪える。
だからと言って、こんな暗くなり始めた山中で怪談を語るのも少しデリカシーに欠けているかもしれない。
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