第一話:海にいた影

 それで、叫びながらもう一度後ろを振り向いたら……その影みたいなやつ、どこにもいなくなってた。


 砂浜だから、障害物もないし隠れたりなんてできない場所なんだよ。


 でも、どこ見ても何もいなくてさ。すぐ従兄弟たちと合流して、自分が見た影のことを説明したんだけど、二人とも全然信じてくれなかったんだよね。


 さすがにもう薄気味悪過ぎて、僕だけ花火には混ざらないで家に帰ったけど、あの日ってお盆だったわけだしさ……やっぱり死んだ人が戻ってきてたとか、そういうことだったのかな?


 そんな経験をしたせいで、僕、今でも夜の海は恐くて近づけないんだよ。

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