最終話 運命共同体
「だからさぁ、それはひどいなーって思ってさ。祐樹?聞いてる?」
「あぁ、ごめん。何だっけ??」
「だから、昨日のドラマであそこでヒロインを殺すところだよ。」
「あぁ、そうだな。」
「祐樹なんか、変だね?なんかあったの?私が聞いてあげるよ?」
心配そうにこちらの顔を伺う夏希、本人は知らないであろうが彼女はこの後、居眠り運転しているトラックにひかれて死んでしまうのだ。そのことを知っている僕が少しおかしいのは当然であろう。上手く隠していたつもりだが、やはり幼馴染の夏希にはばれてしまっていたのであろう。運命なのか、あの警察官の男が言っていた通りもう一度彼女が死ぬ前に戻ってこれたあの男の正体が気になるところだが、この際は何でもいい、僕は何に変えても夏希を救わなければならない。彼女には言いたい事もある。いなくなって初めて自分の気持ちに素直になれた。昔から夏希は凄い奴だった、中学の時、二人で遊びに行ったハイキングでで彼女は僕が渡ろうとした橋が崩れると言った。そのまま「この橋渡るな!!」と書いた看板を立てて僕ら立ち去ったが、案の定その数日後、ニュースで崩れ落ちたと報道していた。幸いケガ人はいないようで、夏希が看板を立てていなかったら今頃誰かが死んでいたかもしれない。そんな観察力、判断力が高い彼女が死んでしまったんだ。僕も最新の注意をはらわなければならない。そんなことを考えていたら夏希が死ぬまでもう1分もない。こうなったら……
「なあ夏希、俺はお前が好きだ。」
「ふぇ。」
変な声を上げる夏希、僕は無視して彼女に抱き着く、動揺して顔が真っ赤になる。だがそんなことは気にしない。僕は体を離さないよう強く抱きしめる。その後ろで大きな音がした、トラックが電柱に激突した音だ。その音を聞いた途端、僕は力なくその場から崩れ落ちた。彼女を救うことができた。そう考えたら体から力が抜けたのだ。
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落ち着いてきたとこで公園のベンチに座って二人で話す。何を話していいかわからなくしどろもどろしていた僕にあきれた夏希が意外な言葉をかけてきた。
「揺り戻しできたんだね?」
「なんでそのこと知ってんだ?」
「実はね……」
夏希は語った。二人でハイキングに向かう前日、一人の男が自分のもとにやってきたと、彼はこう言った。
「明日、時沢祐樹は死ぬ。嘘だと思うかもしれないがその目で確かめてくれ、もし救いたいと思うなら君にこの力をやる。そしてこの力で救うことが出来たら今度は君が死にそうになったら、祐樹にこの力を譲渡してやってくれ。」
その言葉のように実際に事件が起きた。その力を信じた夏希はあの時僕に力を譲渡したのだと。肝心な男の正体は僕だった、この力を渡されたのは僕だったということはその前に夏希に力を渡したのは、未来の僕だ。ありがとう僕。
※ ※ ※
5年後、
「やっといったか、さぁ、頑張れ僕。その手で未来を掴んでこい。」
これで僕の役目は終わった。彼に揺り戻しのことは教えた。あとは自分を信じるだけだ。高校生活で一番の思い出?というべきなのか?まぁ、僕と彼女が付き合うきっかけになった9月12日。僕はけして忘れないであろう。
・・・・・・さて、皆さんには取り戻したい過去はありますか?
cycle days ~君と僕の運命と~ 霜月晴人 @haretan
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