cycle days ~君と僕の運命と~
霜月晴人
第1話 9月12日×???=???
……たい。
……寒い。
……にたい。
……僕は無力だ。愚かだ。
……僕は、彼女を守れなかった。
……神様、何故彼女を選んだのですか?
「ほら、これあげるから泣かないで、裕樹。」
彼女の柔らかく美しい手は僕の顔に触れそのままゆっくりと垂れ落ちた。
「夏希、夏希ッ!!」
目の前に広がる光景は地獄絵図、脳の回転が追い付かない、僕は呼吸のしてない夏希に人工呼吸器をする、それでも呼吸は戻らない。何故なら彼女の下半身は歩行者通路に乗り込んできた、トラックと電柱と挟まれたことによって引きちぎられているからだ。それでもなお僕は息を送り続ける。いつからか口の中に広がるのはは、ほんのりとしょっぱく、皆人生で一度は感じたことのある後悔や失敗の味、その少年はいたるところに擦り傷ができている。頭から流している赤い血はこの惨劇が生々しいものだと物語っている。僕はその場に立ち尽くすことしかできなかった。今にも飛びそうな朦朧とした意識の中、ただ現実を受け止めきれずに立ち尽くす。ほんの少ししてから、あたり一面に鳴り響く救急車のサイレン。ようやく意識が覚醒し始めてきたころ、周りの野次馬の声とその携帯からでる沢山のカメラ音が彼女を僕から更に遠ざける気がした。僕は掠れた声で言う。
「……て、くれ。」
その音はやまない、むしろ救急車がやってきたことに対して外野の野次馬が増えてきたようだ。こいつら、この光景を何だと思っているのだ。
「……全員この場から、消えてくれって言ってんだよ!!」
その声は、誰にも届くことのなく静かにききけされた。流れ落ちるように僕もその場に倒れてしまった。……
※ ※ ※
僕が目覚めた時には大好きな君がいない世界だった、僕が目覚めたの事件発生から3時間後、現時刻は23時を少しすぎた頃、幸いと言っていいものか軽い脳震盪で済んだみたいだ。経過観察のために2日間は安静のようだがそんなことはどうでもいい、心は空っぽだ。もしあの時手を引くことができたのなら、もし僕がもう一歩前にでいたのなら。大切な君は死ななかったのであろう。後悔してももう遅いそれでもわかっているのに涙があふれてやまない。夏希は昔から注意力があり、しっかりと周りが見えていた。勉強もできるし、容姿も可愛い誰もがうらやむ完璧幼馴染だった。そんな夏希が大好きだった。でも彼女はもういない僕には太陽がいないのだ。月は太陽がないと輝けない、照らしてくれる夏希はもういない。そんな僕のいる部屋に二人組の警察が駆け寄ってきた。事件の概要を聞きたいようだ。なぜ僕が事件に巻き込まれたのか聞いて見たところ、先程の事故がSNSで拡散されているようだった。
「すいません。少しトイレに」
そういって僕は病室を抜け出した。この行き場のない怒りの矛先は誰に向ければいいのか?後悔、悲しみ、怒りこの3つが混ざった僕は何も考えれなくなった。ただ一つの回答を除いて、
「そうだ、死のう。そして天国で夏希に会うんだ、夏希ならきっと待っててくれてる。」
僕は思い足取りで、病院の屋上へと会談を駆け上がる。そこにいたの先程会話してた、お巡りさんと一緒にいた別のお巡りさんだった。
「君は今から死ぬつもり、なんだね。」
覚悟を決めた僕はその首を縦に振る。
「見たところ譲渡はできているようだな。今ならまだ揺り戻しができるはずだ。時沢祐樹、時間がないから簡潔に言う。白髪夏希を救いたいなら、首を切って死ぬんだ。その時に戻りたい時間をしっかりとイメージすること。イメージに失敗したら彼女は救えないぞ。さぁ時間がない、やるならあと30秒で決めろ!!」
そう言って男が投げてきたものは病院によくおいてあるメス。時間がない?揺り戻しってなんだ?30秒では解決できない問題だらけだ。それでも夏希を救うチャンスがあるなら、僕は……思いっきり首を掻っ切った。残された警察官はそれを見て思ったのだ。消えた少年と共に警察官はその場から消えた。何もない屋上に声が聞こえた。
「やっといったか、さぁ、頑張れ僕。その手で未来を掴んでこい。」
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