___混沌の微睡み___

・山田太郎


いつも雪が降ると、ふと思う事がある。


白い雪のように世界は本当は白いのではないかと。

誰もが絆や友情や仲間を信じるように、人は捨てたものじゃないと希望を持って

支え合い笑い合う、そんな白い世界。


だが俺は黒い世界も知っている。

諍い 争い 競い 戦争 飢餓 政治家や警察の不正、汚職 性の乱れ 人種問題 友の裏切り 親戚同士の醜い喧嘩。

「歴史は繰り返す」という言葉があるように人間は学ばず、同じ事を永遠繰り返す

混沌の輪廻。


信じていた事が裏切られ、期待していた事がまた裏切られ

希望を抱けば絶望を与え心を殺す。そんな黒き世界。


そんな二つの世界を知っているが故に、俺は世界が灰色だと思うのだ。

だからこそ白い雪を見れば、その美しさに惹かれ世界が白い世界だと願わずには

いられないのかもしれない。


白とも黒ともはっきりとしない混沌とした世界でそんな事を願っても、触れれば溶ける雪のように手にした願いも、想いも水蒸気のように消え失せる。


後に残るのは虚無感だけだ。

そして悟るのだ。虚無こそが素晴らしい友人であると。


___今日もまた虚無の世界を生きて行く。___

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