第4話 死の町

サイレンが鳴り響く


アナウンス:「こちら市役所です、非常事態が発生。非常事態宣言を発令中。市民の皆さんはお近くの、自治体、警察、KS社の指示に従ってください。」


町中に響き渡るアナウンス。繰り返し流される機械的なその声は、どこか冷たく他人事で現実を非現実たらしめるような、そんな錯覚を起こす。

しかし耳をつんざかん程のけたたましいサイレンの音、鼻を塞ぎたくなる様な異臭と血の匂いで、山田は現実に引き戻される。


宮部:

「山田さん、早く行きましょう。この裏路地は危険です、大通りへ出ないと囲まれます。」


山田:

「え、ええ」


呆然としている山田に声を掛け、手を引っ張って行動を促す。山田は宮部の行動力の高さに少し狼狽する。

そそくさと歩き、狭い裏路地から大通りに出る。何体かヒューミンが出現したのか、複数の屍が横たわっている。先に出ていた落合が撃ったようだ。


落合:

「人影は無し、いるのはモンスターばかり。人はいても血塗れの遺体がそこかしこで転がってるだけ、気が滅入りますね……」


宮部:

「何より嫌なのは、真っすぐ行けば着くのにこの事故車両のワゴン車が邪魔で、回り道になる事ですね……」


竹林:「そんな事はどうでもいい!回り道でもなんでもさっさと警察署へ行くぞ。 でないと俺達もあの死体共と同じようにボロクズの仲間入りだ。」


そう吐き捨て警察署方向へと歩き出す竹林を、軽蔑と飽きれ顔で首を振る落合が後を追う。

山田は道を塞いでいるひっくり返ったワゴン車が気になり凝視する。どうやら燃えていたようで煤けている。車体にKS社のロゴが確認出来た。

どうやらKS社の所有車が事故り、炎上したのだろう。

ただし他の事故車両がまだ燃えているのに対して、この車は鎮火しているので、何時の時点で事故ったのかは定かではない。


山田:

「……… ………」


気になりつつも疑問を置いて立ち去らなければ、己の身が危険と察した山田は後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にして宮部の背中を追いかける。


事故車両を裂けジグザグ進む。


竹林:「チッ!道をクネクネクネクネと……ああ~鬱陶しい!!真っすぐ風切って歩きたいって言うのにぃ」


落合:

「……それが出来れば苦労しないんですけどね」


竹林:「黙れ!部下の分際で分かった様なことを言うんじゃない!」


落合:

「申し訳ないです……」


イライラしている自分の上司である竹林をなだめようとするが、うまくいかない。


竹林:「大体貴様はいつもそうだ!使えないクセして口だけはいつも達者だ。選ぶ仕事を間違えたんじゃないか?それが分かっていればいつでも俺は貴様をクビに……

うわぁあーー!!」


落合:

「竹林さん!!」


落合の方を向いて喋りながら歩いていた竹林は、銃声が聞こえたかと思うとすぐに腕を抑えて地面に横たわる。


竹林:「う、撃たれた!撃たれた!!うわぁああ」


落合:

「腕見せてください!………でも掠っただけですよ?」


山田:

「どうしたんですか?!今の悲鳴は一体?」


竹林:「撃たれたんだよ!!襲撃だ!狙撃だ!!ゴルゴの化け物がいるぞ!!」


宮部:

「でもどこから?」


2人に追いついた山田と宮部が駆けつける。半狂乱になってる竹林を見ず、辺りを気にする。


落合:

「あそこです!あの人影!」


山田:

「あれは……警官?」


前方に目をこらしてよく見ると、拳銃を持ち警察官の制服を維持したままのヒューミンがいた。銃を握ったまま寄生されたからか、フラフラ動くたびに銃弾が所構わず発射される。竹林は適当に撃った流れ弾に当たったようだ。銃弾の一つが傍の車にも当たり、火花が散る。


落合:

「うおっ!危ね!!……何とかしないと、ずっと車に身を隠している訳じゃ行けませんし……」


宮部:

「警察官、警察、ポリス、ヒューミン…… ……ポーミンでいいですか?」


山田:

「何で今命名?!」


落合:

「ネーミングセンスって遺伝するんですね……」


竹林:「いいからさっさと撃ったらどうだ役立たず共!!」


竹林の言葉に腹を立たせながら、山田はポーミンに狙いを付け数発撃つ。


ポーミン:「ぅぅう~ぁああ?」

山田:

「あれ?ダメージ無し?」


落合:

「……防弾チョッキ1!防弾チョッキですよ!暴動を鎮圧していたなら着ていた筈ですし……」


宮部:

「頭!頭です!頭を狙ってください」


気を取りなして山田は球を狙って数発撃つ。

しかし頭が仰け反るだけで倒れず、再度予測不能な銃弾が襲って来る。


落合:

「助太刀します!!」


宮部:

「私も!!」

ポーミン:「ぁぁ~ぅうういい~」


二人掛かりで頭を撃ち続けやっと倒す。


宮部:

「やった!倒れた」


落合:

「……結構体力高かったですね。厄介でした」


山田:

「体力高いとか……走るゾンビ並みに勘弁してほしい」


宮部:

「それに武器持ちですしね……」


倒れたポーミンの傍まで行き、確実に死んでいるのを確認した後、銃を貰い寿弾を補給する。その直後ヒューミンが複数で襲って来る。


ヒューミン達:「あ~ぅぅ~あ~」

山田:

「……もう今となってはこいつらは脅威とは思えない!」

落合:

「もはやただの雑魚って感じですね!」

宮部:

「もう怖くない!」


3人並んで一斉射撃でヒューミン達を撃退する。

3人は銃を構え、辺りを気にしながら先に酢進む。

竹林は腕を抑えながら後をついて行く。


警察署の出入り口にたどり着く


山田:

「警察署、ここだ……」


宮部:

「お友達無事だと良いですね」


落合:

「では、入りましょう」


警察署へ入って行く。


・警察署




署内は荒らされている。

床や壁には手形の血や引っかき傷、ファイルや書類が多数散らばり、蛍光灯が壊れショートし、火花が散る。


非常階段前や、エレベーター前に火の手が上がり燃えている。もはや警察署の見る影はない。





落合:


「……酷い有様ですね」



竹林:「チッ!ここまで来た意味無いじゃないか!!警察ならなんとかしてくれると言うから、ここまで来てやったのにこれじゃ俺は……」



山田;


「署長ーー?!署長ーー?!どこですか~!無事ですかー??」




山田は竹林が喋っているのを構わず、知り合いである署長の姿を呼び探す。




宮部:


「山田さん!!いました、署長さんが!」



山田:


「そこか!」




宮部の呼びかけに山田が駆け寄る。署長は総合案内窓口の裏で血塗れで倒れていた。胸に銃弾を食らい、背中から床に血が広がっている。


デタラメに撃たれたのではなく、しっかりと署長の胸に狙いを定め、撃たれた銃弾であると分かる。




宮部:
「ひどい……」



山田:


「……まだ息がある!! 署長!署長!起きてください署長!」



署長:「…………ぅ……ぅぅ」



山田:


「しっかりしてください署長!! 一体コレは……」



署長:「……なぜ……裏切った…………」



山田:


「え?……裏切った?俺が、ですか?」



署長:「………裏切られた……私は……君の………何故だ……私は、間違って……」



山田:


「署長、一体何の話ですか?」



署長:「……ぁぁベアトリーチェ、私を……連れて行ってくれ…………淡く脆い希望亡き、この地獄から………何も、苛む事無き……素晴らしき世界へ……煉獄山の…………頂上から、手を引いて…… …………」



山田:


「署長?署長ーー!!」




署長は事切れた。

会話は噛み合っていなかったようだが、署長は何かを知っていたのかもしれない。



山田:

「……ベアトリーチェ?何かの暗号?」


宮部:

「ダンテの神曲ですね。 何か意味があるのか、分かりませんけど。」


山田:

「しかし、何で署長が……」


落合:

「皆さん、ショットガンがありました。ですが2丁だけでした、誰がどれを使います?」


宮部:

「……落合さん、空気読んでください。」


落合:

「えっと、ごめんなさい」


竹林:「おい」


山田:

「いえいえ謝らないでください、こういう事態ですし武器は必要です。調達は仕方ないですよ……」


落合:

「ああ~山田さんは分かってくれます?ありがたいです。」


宮部:

「でもだからと言って、知り合いを亡くしたこんな時に、武器の話をしなくてもいいんじゃないですか?」


竹林:「おい」


落合:

「宮部さんって結構細かい人なんですね。喧嘩する時譲らなそうですし、自分が間違っていても謝らないタイプですか?」


宮部:

「何ですか?女だから感情的、感情でしか動けないって言ってるんですか?」


落合:

「い、いえ……そんなつもりで言った訳じゃないですけど。」


山田:

「2人共、喧嘩は止めましょう。こんな時くらい男だとか女だとか、争わずに……」


竹林:「おいって言ってんだろ!!俺の話を聞け貴様ら!これは何だ?」


竹林はイラついた言動で、近くの柱に付いている妙な機械を指差す。画面からは数字がカウントされている。30,29,28,27,26,25,24,23


山田:

「…………これは……」


宮部:

「…………見るからに……」


落合:

「………爆弾ですね……」


全員:

「「「……… ………」」」


山田:

「………全員逃げろーーー!!!」


宮部:

「賛成ーー!!」


落合&竹林:

「「うわぁああーーー!!!!」」


15,14,13,12,11,10と数字をカウントを続ける機械を尻目に、出口に向かって一目散に走って逃げる。その途中宮部が転倒する。


宮部:

「あう!」


山田:

「宮部さん!!」


竹林:「放っておけ!貴様も死ぬぞ!!」


山田:

「…………」


竹林は振り返りもせずに落合に続いて警察署から出る。山田は踵を返し、宮部の元へ駆け寄り体を起こす。 5,4,3


山田:

「宮部さんしっかり!」


宮部:

「あ、ありがとうございます。」


1,0 警察署は大爆発を起こす。間一髪で外に出た山田と宮部は爆風によって、先に出ていた落合達を下敷きにして着地する。


竹林:「がは!」


落合:

「ぎゃふ!!」


山田:

「……何とか……助かりましたね……」


宮部:

「……山田さんのお陰です、本当にありがとうございます。」


山田:

「いえいえ、礼には及びませんよ。」 二コ


落合:

「………あの~……さっき言った事は謝るので、そろそろ下りてもらえませんか……圧死しそうです。」


宮部:

「あ、ごめんなさい」


落合:

「いえ、こちらこそごめんなさい。 さっきは言いすぎました。」


宮部;

「いえいえ、謝罪には及びませんよ。」 二コ


山田:

「………」


竹林:「………さっさと下りろ小僧、俺を殺す気か……?」


山田:

「あ、ごめんなさい」


跡形も無くなった警察署を呆然と眺めていた。すると後ろから物音がして振り向くと、大軍のヒューミンが押し寄せて来た。


ヒューミン達:「ぁぁ~うぁあ~」


宮部:

「こ、こんなに沢山!!」


落合:

「銃が足りない……こ、このままじゃ……」


山田:

「……全滅!」


一斉にヒューミン達が襲ってこうとした刹那、銃弾の嵐がヒューミン達に降り注ぐ。悲鳴を上げながら次々と駆逐されて行く大群のヒューミン達は、瞬く間に全滅する。


山田:

「…………何だ?」


宮部:

「何か来ました!」


宮部が指差す先には、大通りの向こうから装甲車(軽装甲機動車)が数台横並びにやって来る。山田達の目の前に止まり、機関銃を持った部隊が下りて来る。


隊員:「標的殲滅!オールクリアー」

隊員2:「前方標的無し、セーフティ」

隊員3:「後方標的無し、セーフティ」

隊員4:「建物内に標的無し、セーフティ」


?:

「うむご苦労、君達大丈夫か?どこも怪我をしていないか?」


山田:

「あ、どうも。 ありがとうございます、助かりました。」


宮部:

「危うく死ぬかと思いました……」


落合:

「いや~よかった、軍が来てくれれば問題ないですね。」


?:

「イヤ、厳密に言えば我々は軍ではない。」


全員:

「「「え?」」」


?:

「自己紹介をしよう。KS社 私設特殊部隊 BCSK(バスク)隊長、三木秀一(みき しゅういち) 階級は大佐だ。」


自らを三木と名乗った隊長は、敬礼をする。


三木:

「以後よろしく。」


宮部:

「宮部 雅といいます、よろしくお願いします。」


落合:

「落合 統治と申します、お願いします。」


竹林:「………竹林だ、名前を言うつもりは無い。」


宮部と落合は名乗った後、深々と頭を下げ竹林は視線を逸らす。


山田:

「俺は………__!__」


名乗ろうとした直後、近くで大爆発した音を聞き振り返る。そして我が目を疑った。

自分達がいた超高層マンションビルが、音を立てて前のめりに崩れ落ちて行く光景を目の当たりにする。


三木:

「何だ?すごい崩壊だな」


宮部:

「……私達の……マンションが……」


三木:

「うん?君達の住まいだったのか?」


落合:

「仕事場でもあったんですけど……物の見事に無くなっちゃいましたよ……」


竹林:「フン、他人に媚び諂うクソみたいな仕事だったが、これで清々する」


山田:

「……… ……」


三木:

「ショックの所申し訳ないが、君の名前を聞いていなかったな。今後の事に支障を

来かねないので、名前を聞いても良いかな?」


驚愕の顔で呆然としている山田に向き直り、気を使いながら名前を尋ねる。


山田:

「……あ、はいすみません。 山田です、山田太郎」


三木:

「山田太郎?これはまたずいぶんと古風な名前だな」


山田:

「よく言われます……」


落合:

「ところで三木大佐」


三木:

「大佐だけで結構だ」


落合:

「大佐、KS社に何故特殊部隊なんか有してるんですか?」


宮部:

「あ、それ私も聞きたかったです。只の会社なのに私設部隊なんか……」


三木:

「只の会社じゃないからだ。KS社は世界的に発展してる、だから狙われやすい。 我々は有事の再迅速に対応出来るよう、訓練された。」


落合:

「………つまり、政府に属さないKS社所属の、非政府組織っていう訳ですか……」


三木:

「簡単に言えばそう言う事だ。」


山田:

「すごい!KS社はすごい力を持ってるんですね、流石です!!」


キラキラと目を輝かせている山田を、冷めた目で睨んだ落合はゴホン、とわざとらしく咳をし話を戻す。


落合:

「大佐、あなた方の任務は具体的にどのような任務でしょうか?」


三木:

「うむ、KS社の関係者並びに、その協力者の保護、安全地帯への護送、その他を主に任務とする。」


落合:

「それでしたら、ここまで来る必要は無いのでは?」


三木:

「実は署長が我が社の協力者でね、非常事態が発生した時、安否確認しようとしたが音信不通で、それで確認のためここに来たのだが………」


チラッと更地と化した警察署を観て溜息を漏らす。


「どうやら遅かったようだ。」


宮部:

「署長さん、誰かに撃たれていて可哀想でした……」


三木:

「それは本当かね?不審者が近くにまだいるようなら、君たちも危険だ。我々が保護しよう。」


宮部:

「本当ですか?!ありがとうございます!」


落合:

「いいんですか?僕達はKS社の協力者じゃありませんよ?」


三木:

「構わんよ、民間人をこのまま放っておく事は出来ない。」


そう言って三木大佐は無線を取り出し、誰かと連絡を取り始める。


三木:

「こちらウォーカー・ワン、警察署前で民間人3名を保護、護送を求む。」


無線:『こちらイーグル、了解。すぐ向かう。』


落合:

「…… ……」


山田:

「落合さん何を考えてるんですか?」


落合:

「彼らの任務ですよ、本当に保護だけの任務なんでしょうか?」


宮部:

「本当は違う目的の任務があると?」


落合:

「その可能性も捨てきれないかと……」


山田:

「落合さんも細かい人ですねぇ、宮部さんの事言えないですよ?」


落合:

「いや、そういうことじゃなくてですね……」


竹林:「グチグチと五月蝿いぞ落合!細かい事は良い、


さっさと保護をしてもらって、さっさとこの下らん町から出るぞ!」


山田:

「そうですよ落合さん、グチグチと細かいですよ。折角保護してもらえるんですから、邪推は行けませんよ。」


落合:

「何で仲良くなってんですか……」


気づけば爆音を轟かせたヘリが近づいて来る。

ヘリが上空でホバリング待機をした後、少しずつ下降して来る。


三木:

「では君達、ヘリが着陸してから乗りたまえ。まずは女性から、男性諸君はその後から。」


山田:

「さっすが!KS社はレディーファーストを弁えてる。」


落合:

「それはKS社関係ないのでは?」


宮部:

「ん?あれは?」


ふとビルが崩壊した方向から、ヘリに向かって何かが飛んで来るのが見えた。


三木:

「あれは…………ロケット弾!!」


そう言った直後ヘリに着弾。

ドカーンとヘリが爆発炎上、地面に墜落という形で虚しく着陸する。


山田:

「そんな!!」


宮部:

「ひどい………」


落合:

「一体誰がこんな事……」


三木:

「……誰かが妨害しているのは確かだ、君達も我々から離れないように。」


宮部:

「でも装甲車だけで、この町を脱出は無理なんじゃ……」


三木:

「安心したまえ、この近くにもう一つ脱出用のヘリがある。そこまで行ければこの町から脱出出来る。」


山田:

「脱出………そういえば!黒田さんは脱出はしたんですか?」


三木:

「黒田博士?いやそういう報告は受けていない。それに救助に向かった別部隊との連絡もつかない状況だと言う。」


山田:

「やっぱり!!何かあったんだ……」


宮部:

「叔父さん……」


三木:

「叔父さん?君は……」

隊員:「大佐!!後ろ!!」


ヘリの消火活動をしていた隊員の一人が、山田達の後ろを指差す。後ろを振り向くと、大きなトラックが、事故車両を蹴散らし、蛇行運転をしながらこちらに向かってくるのが見えた。

運転手は酔っぱらっているのかと見間違う程だが、運転席を見ると帽子をかぶった運転手がノーミンに寄生されている最中のようで、そのまま突っ込んで来る。


三木:

「全員端へ避けろ!!」


山田:

「うわぁあーー!!」


宮部:

「きゃああーー!!」


落合&竹林:

「「うひぃいいーー!!」」


隊員達:「わぁーー!!」


制御を失った暴走トラックは、装甲車の列に突っ込み横転、装甲車を巻き込み大爆発をして炎上する。大きな炎が天まで届く。


三木:

「………諸君悪い知らせだ、ここからは歩きだ。徒歩でヘリまで向かう。」


山田:

「……大佐、先に行っててください。」


三木:

「何?!君達はどうするつもりだ?」


山田:

「俺達は黒田さんを探すので、KSコーポレーション本部に向かうつもりです。」


三木:

「君達のような民間人だけで、乗り越えられるとは思えないぞ。我々も……」


落合:

「別行動をした方が効率的だと思います。それにヘリに危険が無いか心配です。」


宮部:

「そのヘリが唯一の脱出手段なんですから、安全に期してください。叔父さんを保護した後、合流しましょう!」


三木:

「……分かったそうするとしよう。」


竹林:「クソ!マジかよ……」


三木:

「君達には聞きたい事が出来た。死なせる訳にはいかん、兵長!隊員を数人連れて、彼らと行動しろ。」

兵長:

「分かりました。」


兵長と呼ばれた男が隊員を、3人引き連れ近づいて来る。


兵長:

「高橋 守(たかはし まもる)職務は通信兵長だ。名前の通り君達を守るよ。」


山田&宮部&落合:

「「「よろしくお願いします。」」」


三木:

「何かあれば無線で連絡してくれ。くれぐれも無茶な行動はしないように、では幸運を祈る!」


大佐は数十人の隊員を引き連れ、行動を開始する。山田達も兵長と連れ立って裏路地へと歩き出す。大通りは炎に包まれ、進めなくなってしまったからだ。

ついでに言うと竹林も、山田達と一緒にのこのこ付いて行く。


裏路地を注意深く慎重に歩く。
前方に隊員2名、後方に隊員1名、中心に山田達と高橋を陣形に進んで行く。




高橋:


「しかし君達は肝が据わってるね、町がこんな状況だって言うのに、まだ脱出しないなんて。」



山田:


「真実を知りたい、そして守りたいから……ですかね?」



高橋:


「真実を知りたい、か……たとえそれがどんな残酷な事でもかい?」



山田:


「ええ!」



高橋:


「青いね、だが嫌いじゃない」



山田:


「俺の好きな色は赤ですよ」



宮部:


「私はピンクです」



落合:


「僕は黒です」



高橋:


「そういうことじゃなくてね」




つっこんだ後笑い合う。

しかしそれすらも許さないとばかりに、前方の窓という窓からヒューミンが涌き出す。前方にいる2名の隊員がサブマシンガンで応戦。




隊員:「目標出現!数は不明!応戦します!!」


高橋:


「やはり出たか!君達は下がって、応戦は我々が……」


隊員2:「兵長!!後ろからも目標が出現!!」



高橋:


「何?!」




後ろからは前と同じように、ヒューミン達がうじゃうじゃと涌き出し、山田達も銃で応戦する。




高橋:


「くっ!囲まれたか!」



竹林:「ほら見ろ!ほら見ろ!クソみたいな正義感で、別行動をするからこうなるんだ!!もう俺達は死ぬんだ!!終わりだ!」


隊員3:「兵長!!弾が切れそうです!」


隊員2:「こちらも同じく!!」




撃っても撃っても殺しても殺しても、次から次へと湧き続けるヒューミン達。徐々に距離を詰められ、全員が背中合わせになる。




山田:


「お、おしくらまんじゅう……押されて泣くな?」



宮部:


「泣きそうです……」



落合:


「これがどうあがいても絶望って奴か?出来れば体験したくなかったな……」



高橋:


「クソ!どうすれば……」



山田:


「……ま、マンホール!!この下へなら逃げられる!!」



高橋:


「地下の下水道へ?……急いで開けろ!!」




隊員3名が必死にマンホールの蓋を外す。




高橋:


「早く下へ!!急げ急げ!!」



宮部:


「下水へ?……それしかないよね!ひい!!」



落合&竹林:


「「あーー!!落ちるぅううーー!!」」



山田:


「うわぁあーー!!」



高橋:


「それ!」




ヒューミン達に掴まれる間一髪の所で、全員が下水道へと落ちる。

深き地下の深淵へと

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る