第2話 出会い

覚悟を決めた男は、そろ~りと廊下の安全確認をして部屋から出る。

辺りをビクビクしながら廊下をゆっくり歩く。


男:

「出るなよ~出るなよ~何も出るなよ~、お願いだから何も出ないでぇ~」


しかし男の願いは虚しく、ドアを勢いよく開ける音と女の悲鳴で叶わない。


女:

「きゃああーー!!」

男:

「いやああーー!!」

謎の生物:「ぉぉお~あ~」


床に倒れた女性を覆い被さるように、襲おうとする謎の生物。

とっさに男は刀で押さえ込む。女性に気を使い話しかけようとした直後、

女性は悲鳴を上げ階段の方向へと走り去る。


男:「ちょっと待ってーー!!こんなのと1人っきりにしないでぇ~!!」


さらにもう一匹部屋から出て来て、男の絶望感の濃度が上がる。


「嘘でしょ?!勘弁してよ!!3Pする趣味なんか無いよ!至ってノーマルな性癖だよ!!」


押さえ込んでいた生物を蹴っ飛ばし、ふらついた隙を狙い刀で頭を横に掻っ切る。

次ぎに来た奴も少しパニクって

無心不乱で刀を振ったら、奇跡的に頭に当たり倒す。


「はぁはぁ、コイツら頭が弱いのかな?……そうだ!あの女性は?無事かな」


女性が逃げたであろう階段へ走って向かい、階段の踊り場で止まる。


「どっちへ行ったのかな?下は……火の手が上がってるから下りれない、じゃあ屋上か!」


駆け足で階段を上がり、屋上へ到着する。

先に来ていた女性は外の惨状を始めて見たのか、呆然と立っていた。


女:

「いやあ!来ないで!!」


男:

「待ってください!僕は怪しい者じゃありません!」


女:

「あ、怪しくない人は刀なんて持ってないと思います……」


男:

「あ、確かに……」


女性になんて説明をしたらいいか困惑していると、後ろから謎の生物に襲われ、地面に倒れる。


女:

「嫌ぁああーー!!」


男:

「あーもう!説明くらいさせてよぉ~!!」

謎の生物:「ぅう~ぉおお~」


馬乗りになられ、蚊の注射器のような口で顔を刺そうとするのを必死で抵抗する。

瞬間、 ズドン と銃声が鳴り、馬乗りになっていた謎の生物が力なく地面に倒れる。屋上の出入り口には銃を握り締めたベルボーイが立っていた。


ベルボーイ:

「お客様!大丈夫ですか?」


男:

「た、助かりました。ありがとうございます」


ベルボーイ:

「そちらのお客様も無事ですか?」


女:

「あ、はい、なんとか」


ベルボーイは倒れた男を立ち上がらせながら、2人を気遣う。


「あ、あの、さっきはすいませんでした。パニクって取り乱しました。

私、宮部 雅(みやべ みやび)といいます。

こんな時に自己紹介もなんですけど……」


宮部と名乗った女性はよく見ると、髪をポニーテールにした金髪碧眼のかなりの美人だ。服装も赤色のジャケットに、ピンク色のミニスカートでお洒落な人のようだ。


ペルボーイ:

「えっと、僕は、落合 統治(おちあい とうじ)と申します。自己紹介はアレですが、名無しの権兵衛ってのも変ですし。」


落合と名乗ったベルボーイは、以外と顔が整っており、清潔そうな整えられた短髪、鋭い目付き。ベルボーイをしていなければモデルをしていたであろう、

かなりのイケメンである。


男:

「宮部さんに落合さん、ですね、よろしくお願いします。」


宮部&落合:

「「…………」」


宮部と落合は男性を凝視し、自己紹介を促す。無言の圧力である。


男:

「……俺は…… ……太郎……」


宮部:

「太郎?」


男:

「…………山田……」


落合:

「山田?」


男:

「山田太郎、です……」


宮部&落合:

「「……名無しの権兵衛の方がマシでしたね。」」


山田:

「よく言われます。」


一斉に吹き出し、3人で笑い合う。


遠くの方から大きな爆発音が聞こえ、3人とも我に返る。


山田:

「そういえば落合さん、どうして銃なんて持ってるんですか?」


落合:

「僕、銃コレクターでして……趣味で集めていたんです。

職場のロッカーに置き忘れていたのを何個かあって助かりました。」


山田:

「職場に持って来るって相当重症ですね。」


落合:

「そういう貴方も刀を持ってますけど?」


山田:

「知り合いにヤクザが居ましてね。」


落合:

「貴方も相当重傷のようですね。」


2人して笑い合うが、宮部が会話に参加して来ない事に気づいて、振り返ると宮部は謎の生物の死骸を凝視していた。


山田:

「宮部さん?どうかしましたか?」


宮部:

「え?あ、いえ…… ……その、この化け物どこかで見た記憶があるんです。」


山田&落合:

「「どこで?いつ?どのように?」」


2人で一緒に食い気味に質問する。


宮部:

「いつどのようにかは分からないんですが……叔父の私物の紙に、この化け物に

似た落書きがあったのを思い出しました。」


山田:

「叔父さん何者(なにもん)?!」


宮部:

「デジモン」


山田:

「古い!!」


落合:

「因に、その私物の紙はどこで見たんですか?」


落合のその質問に対して、宮部を後ろを向きKSコーポレーションを指差す。


落合:
「……え?まさか、その叔父さんというのは……」



宮部:
「黒田総一郎です」



山田:
「ええええーーー??!!」



落合:
「山田さん、そんなに驚きますか。」




左耳を抑えながら、山田の驚きぶりに驚く落合。




山田:
「だって黒田総一郎ですよ?!世界の寄生虫研究のリーダーじゃないですか!! 12年前のテレビ中継された、国会での演説は伝説じゃないですか!!


すごく格好良かったのを覚えていて、俺の憧れの人なんですよ。」



落合:
「テレビ中継?その時僕はアニメを見てましたね。」



宮部:
「その日私は、叔父さんと喧嘩してふて寝してましたね。」



山田:
「もったいない!実にもったいない!」




2人のいまいちな反応に少し頭を抱えて残念そうな顔をする山田。


落合:
「それで話を戻しますけど、黒田さんのその私物の紙には何て書かれてあったんですか?」



宮部:
「確か……『寄生虫:ノーミン』と『寄生された人間:ヒューミンについて』だった気がします……」



山田:
「寄生虫ノーミン? 寄生された人間、ヒューマンだからヒューミン?」



落合:
「ネーミングセンス……」




飽きれ顔でツッコんだ後、宮部に向き直る。




「因に、黒田さんとは連絡は取れますか?」



宮部:
「それが……電話しても出ないんです、だから心配で……」



山田:
「きっとあの人の身に何かあったんです!危機的状況にあるのなら、助けに行きましょう!!」



宮部:
「でもどこに?」



山田:
「もちろん!KSコーポレーションです!!」




勢い良くKSコーポレーションの方を指を指す。




落合:
「そうなりますか、まぁ確かに今回の件について、色々聞きたい事が増えましたし向かいましょう。このモンスター達の名前も分かった事ですし。」



宮部:
「無事かどうか分からないのに、そこまでして頂いてありがとうございます。」



山田:
「感謝は全てが終わってからで、さぁ行きましょう!!」




全員頷き踵を返し、屋上の出入り口へ入る。


この出会いが、3人の運命の時を刻み始める。

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