通りすがり

@yugamori

なにそれ

 とある道。よくある住宅街の、なんの変哲も無いどこにでもある道。子供たちがなにか話しながら近づいてくる。男の子が3人、おそらく小学校3、4年くらい。3人でなにかを話し合っている。ケンカとまではいかないが、かなり大きな声で言い合っている。近づくにつれて声がハッキリしてくる。

「ぜったいにあれは犬だよ犬! ただ毛が長かっただけなんだって」

「いやあんなの犬なわけないだろ! クマだよクマ! 真っ黒で大きかったもん」

「そんなのが公園にいるわけねえじゃん。よく見えなかったんだろ? ホームレスのおっさんだったんじゃないのか」

 どうやらどこかの公園で不審なものを見かけた話題らしい。真っ黒で大きななにか。とにかくクマではないと思うけど、その正体はたしかに気になった。

「犬が『ぶひひひひ』って鳴くわけねえじゃん。犬じゃねえだろ犬じゃ!」

「じゃあクマでもないだろ! クマってなんて鳴くか知らないけど『ぶひひひひ』なんて言うのかよ!」

「じゃあブタだったんじゃないのか。それかやっぱりホームレスのおっさんだよ」

「公園に真っ黒のブタなんているのかよ! ていうかなんでお前はホームレスのおっさん推しなんだよ!」

「人間だったら『ぶひひひひ』って鳴いててもおかしくないだろ」

「おかしいよ! ホームレスで真っ黒で『ぶひひひ』って鳴くなんてどの動物よりも怖いよ!」

 少年たちが横を通り過ぎていきながらどんどんヒートアップして話し合っている。最後の少年の意見に心のなかで全力で賛同した。

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