第2話 なぜ

12月末のクリスマスコンサート。私はオープニング曲の振り付けを担当した。

私はプロではないものの、一応ダンサーのプライドのようなものがあり、毎回の担当曲の振り付けは相当真剣に取り組んでいた。

今回は初めてオープニングを任せられるということで、どうにか例年とは違うことがしたいと強く思い、その結果考えついたのが、曲に合わせるダンスで1つの物語を完成させるというものだった。


ストーリーは単純。クリスマスプレゼントを楽しみにしていた子供たちがいて、サンタは子供たちにプレゼントを届けるが、そのプレゼントの中身を間違えてしまい、中身を見た子供たちは困惑していた。それに気付いたサンタは慌ててプレゼントを回収し、正しい中身を確認してもう一度届け直し、子供たちは喜ぶ。


単純にも程があるだろう、今自分でもそう思った。でもたった1分半に収まるように編集させられた曲内で創られる話なんてこんなもんだろう。


こういう構成は部内で初めてであり、自信作だった。


迎えた本番でも、このオープニングはお客さんに好評だった。


ただ、お客さんに、だ。


部活ではコンサート毎に反省会を行う。

皆、機材でトラブっただの小物を落としてしまっただの自分の中での反省点ばかりを挙げ、いつも通りのただ真面目なだけの反省会だった。


しかし、まとめ役の主顧問が述べた言葉で空気は一変した。


「お疲れ様。今回もお客さんいっぱい集まってくれて、本当にこの部活は皆に愛されてるんだなぁと思いました。

……でも何かがいつもと違う、って思って。何かなぁってずっと考えてたんだけど、そうだ。今回のお客さんの声援って「カッコいい」じゃなくて、ずーっと「カワイイ」だったなって。

もちろんカワイイも大事かもしれないけど、ダンス部ってそれだけじゃない、本当にカッコいいんだよなぁってすっごく思ってた。カワイイじゃない、カッコいいんだ!って叫びたくなっちゃった。

それで、何が原因なのかってまた考えたんだけど、1番の原因といえば……

オープニングだと私は思いました。」


熱く語る先生を見て、私は圧倒された。本当にこの先生は部活のことを真剣に考えてくれてるんだと思った。

主顧問はいつもそうだ。事ある毎の語り方は熱い。大きな身振り手振りと共に心の奥からの声が直接部員の胸を突く。


その後主顧問が何を熱く語ったのかよく覚えていない。


自分の責任だ、という思考が回路をぐるぐると回り他の言葉を一切として脳が受け入れなかった。

確かに、今回の私の振り付けにカッコ良さは無かったというのはわかる。私はそれでもいい、それがいい、なんて思っていた。


主顧問は私のダンスをよく褒めてくれる。わざわざ二人きりの時に私のダンスが好きだとか、発表会に行ってみたいと言ってくれた。私はそういうことを嘘でも言ってくれるだけでかなりのモチベーションとなる。

そんな先生からの言葉だからこそ、私の胸を深く抉った。


主顧問が去った後、私は同学年4人に深々と頭を下げた。


「ごめん。私のセンスが無いばっかりにぶち壊してごめん。本当にごめん。」


顔を上げられなかった。涙が出そうだったから。


「そんなことないって。私らもオープニングの構成ずっといいなって思ってたから。先生のも別に悪いっていう意味じゃないはずだし。」


負の思考回路が邪魔して、部長の言葉すらまともに飲み込めなかった。顔を上げられないまま、目の裏を熱くしていたものが溢れ出た。

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ぶっコロナ! 仲崎 采 (なかさき うね) @nakaruusandesu

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