ぶっコロナ!
仲崎 采 (なかさき うね)
第1話 飽きた
「さっぶ」
玄関から出た瞬間、12月上旬の冷たい空気が頬に触れてつい呟いてしまった。時刻は朝の7時半。今日から部活の朝練だ。
私は現在中高一貫校の高等部に通う1年生で、部活はダンス部。
この部活の部員は女子のみで19人と数こそは少ないが、年に3回のコンサートは中高関係なく結構人気だ。部員それぞれが振り付けをしたり、構成や衣装を考えたする、言わば創造する部活だ。
ダンス部なのにコンサートという言い方があるものか、と思うかもしれない。そう、一部の部員は歌もやっていて、私もそのうちの一人だ。歌とダンスと更には演劇も含めたものがこの学校のダンス部のコンサート、どちらかと言えばミュージカル系だ。
私がダンス部に入った理由はただ一つ。ダンスの経験者だから。私は6歳からダンスを始め、スキルには周りよりも自信がある。今年の夏には全国大会にも出場した。結果はイマイチだったが。
というわけで、取り柄がダンスにしかない私は、はっきりといつだったかは覚えていないが、結構早い段階からダンス部に入ることを決めていた。
はじめは楽しかった。まさに、青春とはこのことだろうと実感する毎日、中学3年まではずっとそうだった。
だった。そう、つまり今はそうでないということ。
今年の9月から私たち高校一年5人が最高学年となった時くらいからだ。誰よりも経験は積んできたはずの私は、はっきり言ってそこまで目立った存在ではない。あまりオープンでないその性格にも問題があるだろうが、やっぱりその状況は面白くないということを最近になって強く思い始めた。
要は、部活に対する飽きが来ていたのだ。
もっと言うと、休部することを現実的に考えていた。
退部までは流石に考えていなかった。来年9月の文化祭に引退を控えた高一の身としては最後の舞台に立っておきたいという思いはある。ただ、このタイミングで休部すると文化祭のコンサートで出られる曲数は減らされるんだろうなぁ、とは感じていた。私にとってそれはちょっとした打撃ではあるが、背に腹はかえられない。もう気持ち的に限界が来ていた。
決定的だったのは12月末のクリスマスコンサートの時の出来事だ。
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