第16話 【緊急企画】ルートヴィッヒ生誕祭2021

※間に合いませんでした……。


「皆、急な呼び出しに応じてくれて感謝する」


「構わない。少し物語の構想で詰まってしまっていたから、ちょうどいいタイミングだった。それで、僕たちを呼んだ理由は?」


「ルーイの誕生日を祝うための手伝いをしてもらいたいんだ。誕生日は今日なんだけど、僕たち2人じゃ準備が終わりそうになくて……」


「ほぉ、あの末弟、今日が誕生日だったのか。別に手伝ってやってもいいが、それならばそれ相応の態度というのをだな……」


「シャルル、そんな意地悪言わないの。私はもちろん手伝うわ。皆で豪華なお誕生日会にして、ルーイに喜んでもらいましょうね」


「まったく、貴嬢はいつも通りだな………………………………ド、ドロテア!!??」


「ふふ、細かい事はいいじゃない。それで、何をすればいいのかしら?」


「あとは部屋の飾りつけと、料理だね。ケーキはウィリアムとルイスが持ってきてくれるはずだけど……あ、戻ってきたみたいだね」


「ヴィルヘルム、ヤーコプ! どういう事だあれは!」


「どうしたんだウィリアム」


「私は、フォルテムの想区から誕生日用のケーキを持ってくるように頼まれたはずなのだがな! お前たちの弟は結婚式でも開くつもりか⁉」


「何を言って……」


「いいから来てみろ!」


「……これは……またずいぶんと」


「大きいな」


「あ、ウィリアムにヤーコプ。これが依頼の品でいいんだよね? 誕生日用にしては少し大きすぎる気もするけど」


「まったく、これを運んでくるのにどれほど手間がかかった事か。山賊にクラーケン、ヴィランの相手までする羽目になったのだぞ? 頼むからストーリーテラーから異物認定されるような物を作らせるな……」


「……? 僕が頼んだのは普通のケーキのはずなんだけど……あれ、何か紙が挟まってる。なになに……『ルードヴィッヒ君の誕生日という事で少しサービスさせてもらった。私は参加する事ができないが、良き誕生日になるよう願っている。―—オスカーより』」


「あいつか……!」


「まぁオスカーさんも悪気があったわけじゃないだろうし。でもこの大きさじゃ家の中に入らないな……」


「だったら庭でやるのはどうかしら。お外でやる誕生日会も楽しそうじゃない?」


「それもそうだな。椅子や机は家の中から持ってくればいいし、なにより今日は雲一つない晴天。シチュエーションとしては申し分ない」


「誕生日会を始める頃には綺麗な星空が見えそうだね。そうと決まれば早速準備だ!」







「ウィリアム、そこのスプーン取ってくれない?」


「あぁ。しかし意外だな。お前に料理が出来るとは」


「ふっふーん。普段からちょっとずつ練習していたんだよね。びっくりしたでしょ?」


「そうだな。お前が役に立つという事実に私はひどく驚いている」


「それどういう意味⁉」


「ウィリアム、ルイス。手が空いたらハンスの手伝いをしてくれないか? ケーキにフルーツを飾り付けたいんだ」


「オッケー。盛り付けが終わったらすぐ行くよ」




「うーん。椅子と机の配置はこれでいいとして、灯りはどうしよう……ん? こんなランプ、家にあったっけ?」


「それは吾輩の物だ。どうせ貴公らは灯りの事まで考えが回ってないだろうと思って、前もって用意してやったぞ」


「そうだったんだ。シャルル、ありがとう」


「なに、感謝するようなことでもあるまい。まぁそのランプは吾輩の持ち物の中でもかなりの高級品で、穏やかな光で星明かりとも共存できる優れもの……っておい! 吾輩の話を最後まで聞かないか!」


「シャルル、こっちに来てもらっていい? スープの味見をお願いしたいのだけど」


「もちろんだ。……うむ。美味だと思うぞ」


「そう言ってもらえると私も嬉しいわ。よぉし、もっと一杯作っちゃううわよ!」


「それは楽しみだな。ただ……ピーマンは抜いてもらうようお願いしたいところだが……」


「あら、好き嫌いはダメよ?」


「……う、うむ」




「ハンス、進捗はどうだ?」


「もう少しで終わりそうだ。ルートヴィッヒくんはどこに?」


「まだアトリエにいるはずだ。準備ができたら呼びに行く」


「ハンスー! 手伝いにきたよー!」


「改めて見るとふざけた大きさだな。見ているだけで胸やけがする」


「2人ともありがとう。あとは最上段にイチゴを置けばいいだけだ」


「……料理はすでにできている。ケーキの飾りつけもすぐに終わるだろうし、そろそろ呼びに行くとするか」





「ルートヴィッヒ、いるか?」


「兄さん。どうしたの急に」


「夕食の準備ができた」


「そっか、もうそんな時間か。すぐに行くよ」




「あれ、テーブルがない? 椅子とかも無くなっているし……兄さんたちが持って行ったのかな?」


「ルーイ、こっちこっち。今日は庭で食べる事にしたんだ」


「庭で? なんでまた――」


 パーンッ‼


「「「お誕生日おめでとう‼」」」


「うわっ、びっくりした……って誕生日?」


「そうだ。おめでとう、ルートヴィッヒ」


「さぁさぁ、呆けた顔していないで座るといい。吾輩たちが手伝ったのだ。楽しまなければ承知せんぞ」


「またシャルルはそんなこと言って……。ルーイ、一杯食べてね。今日の主役は貴方なんだから」


「僕たちからのプレゼントもあるからね。喜んでくれると嬉しいな」






「皆……ありがとう。嬉しいよ」


 そう言って、ルートヴィッヒはとびっきりの笑顔を見せた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る