第80話 すったもんだの3つ目見つけました
「さぁ、あなたの心が一番求める場所はどこ? 」
アクアローラの低くて優しい声に導かれるまま、ゆっくりと辺りを見回す。崩れ落ちた瓦礫の隙間に、青く光るものが見えた気がした。心がドクンっと大きく鳴り響く。
足が誘われるまま、ゆっくりと移動してその場にしゃがみ込み、瓦礫を取りのぞく。
取りのぞく――取りのぞ――――
(取りのぞきたいのにちょっと重たいんですけど!? )
周りの小さいものから取り掛かるけど、ある程度どかしたらまた他のものが崩れてきて……上にある大きいものはどかせそうにないし、一体どうしたら……
「この下だな。」
「ニッキーそっち支えて、ユキちゃんはそこ……そうそうそれどかして。」
「確かこの辺前に嵐あったよな~、その時かなこんなに崩れたの。」
「ミコト、何ボーっとしてるのさ。さっさと手を動かしてよ。僕が頑張ってるのに君がサボるなよ。」
アルが、ジークが、ニッキーが、ユキちゃんが、困っているときは自然に手を差し伸べてくれる。
「いい男たち従えて……女冥利に尽きるじゃない♪ 」
最後の方は小声で、アクアローラが茶目っ気たっぷりにミコトに微笑む。
「えぇ――本当に――――」
騒がしいけれど、いろいろあったけれど、彼らとの旅は笑いが絶えない。
「ほら、ミコトも手を動かして。一人でやろうとせずに、こんな時はこのお兄さんたちを頼らないと。」
石を抱えながら言われたジークの言葉に、思わず吹き出した。
「それ、自分の考えをギリギリまで言わないでニヤニヤしているヤツに言われたくないなぁ~。」
「言わないくせに人をこき使うだけ使うしなぁ~。」
「もう少し、君のドス黒い腹の中を見せてほしいよ。」
地道な作業だけど、たまにはこういうのも悪くない。まだ、私はこの国にとって頼りない聖女だけど、支えてくれる仲間がいるから、なんとかなる気がしてきた。
「あんまり、気負い過ぎるなよ。お前はお前のペースで、ゆっくりやればいい。」
相変わらず、アルには私の考えていることがお見通しみたいだ。
「わかってるよ。経験上、無理をしすぎるとパンクするタイプの男ですし!! 」
この肩にのしかかった責任を放り出すことはしないけど、彼らと一緒にその荷物はわけっこしながら進んでいこう。
取り除かれた瓦礫の下――他とは異なる色をした明らかに新しい石をどかすと、海底とおなじ色、青と紫が混ざりあった、深い深い世界を映した楕円形の宝石。波のしぶきのような、流れ落ちる流星のような、白いラインがところどころに入ってキラキラ輝いている、見ているだけで吸い込まれそうな――海の至宝があった。
「そのまま――その周りの魔導具ごと――取り出して!! 」
「駄目だ。これはあの巨大な渦を起こした危険な魔導具だ! ミコト、至宝だけ取り出してその魔導具を停止させろ!! 」
「なんだよジークのケチ!! せめて1回くらいこの魔導具が作動して渦を起こすところを……離してよアルぅ!! 」
「駄目に決まってるだろう、この大馬鹿子イノシシ!! 」
「カゲボーイ、取っちゃいなさいな。」
「うっす。」
ウリボーイの勢いにミコボーイが引いている間に、胸毛に命令されたカゲボーイが容赦なく至宝を引っこ抜いた。
これにて……
海の都 クリア!!
「いいえ、まだよ! 毎年、戦士ちゃんと巫女ちゃんには、お茶会のお礼を兼ねて、帰る前に祝福を授けているの♪ 」
「祝福……!? 」
この優しい女神から与えられる祝福は効きそうだ。ママからの腕輪はよくわからないし、もらえるもんはもらっておこう。
「そうですね、俺もまだ聞きたいことが山ほどあります。」
ジークが一歩前へ進み出る。そういえばさっきもいろいろ言ってたもんな――なんで国外に持ち出さなかったとか、至宝についての情報が伝わってないのかとか――
「シビス・マクラ――「じゃあまずはジクボーイからね♪ んっ……」」
(きゃあぁぁぁぁぁっ!! )
ジークの薄くて形のいい唇を、胸毛人魚の桜色リップが覆う。大きく見開かれた、第3王子の目――胸毛の髭で、あまりよく見えないけれど、あれは確実に触れ合っている。固まったままの王子を、その力強い腕で引き寄せ抱き締めながら、長い長い接吻は続く。
「フフフ……ジクボーイの唇ってとっても柔らかくて美味しいわね。」
チロリとローズ色の舌を出して、ごちそうさまとでも言わんばかりに、人魚はその唇を舐めた。
「さぁ、次は誰に――「ありがとうございましたぁぁぁっ!! 」」
興奮したミコトをアルが抱え、固まったままの王子をニッキーとユキちゃんが引きずりながら、一目散にハルちゃん号へ乗り込む。
「ルパート・ハインツ!! 急げ!! 全速力で出来るだけ遠くへーー」
「大丈夫か若ぁ!! しっかりしろぉっ!! 」
「ちょっとアル、痛い! 腕の力緩めて!! 」
「あぁ、すまん……思わずつい……」
ガクガクとニッキーに揺さぶられているジークからは、いつもの輝きが全く感じられない。
「なぁ、ミコト――」
「ど、どうしたのジーク? 」
いつも自信たっぷりのジークから発せられたとは思えない、弱々しい声で呼び止められて、思わずドキッとする。
「この国に来る前に、創世主エルカラーレにあったと言っていたな。エルカラーレも……その……あれなのか? 」
「うん……あの、その……とっても綺麗な、オカマでした。」
「そうか……フフフフフ……フハハハハハ…………」
キラキラ第3王子がついに壊れた。
「俺はもう二度と、女神など信じないっ!! 」
どこまでも暗く澱んだ眼をした、無神論者が誕生した瞬間であった。
(キラキラ王子が
何はともあれ、3つ目の至宝見つけました。
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