第54話 幕間:女神の微笑み
「ちょっともう!!! あぁぁぁぁん!! 」
白く美しい、しなやかな筋肉に覆われた二の腕を握りしめながら、ベッドに倒れ込む。薄く開いた唇から、興奮した吐息が漏れた。
頬を薔薇色に染め、恍惚とした表情を浮かべながら、創世主エルカラーレは熱くなった身体を冷ますように、大きく息を吐きだした。
――あぁもう!! じれったいんだから!!
トキメキを逃すように両足をバタつかせる。状況的に仕方なかったとはいえ、このような事態になるなんて予想していなかった。
――相変わらず異世界の子どもたちは最高ね!!
前回の子どもが作ったメンテナンス装置は見事なもので、手を叩いて大喜びしたが、それ以来異世界の我が子と会うことはなかった。不謹慎かもしれないがこわれてよかったのかもと思う自分がいる。だってこんな胸躍る展開は久しぶりだ。このような物語をまた見れたことに全身が歓喜する。自分も図らずも関わってしまったこの物語が今後どう展開していくのか目が離せない。
――実琴が自覚するのは思ったより早かったわね。
ポヤァーっとした子だからもっと時間がかかると思っていたが……
あんなに畳みかけられちゃ無理もないか。私だって誰か特別な人に微笑んでもらいたい。
――それに比べて獣人くんは思ったよりも番いへの思いが強すぎて逆に曇っちゃっているのかしら。
まぁせいぜい悩んで惑わされてもらおう。イイ男を翻弄するのは大好きだ。
細くて柔らかい魅力的な身体に思わず手が伸びる気持ちもわかるので同情心も含んでいるが。
――涙を浮かべながら全身で縋り付いてこられたときって堪らないわよね。私はもっと泣かせて私のことしか考えられなくなるくらい、いっぱいいっぱいにしたくなるけど。
「あんまり煽っちゃ駄目よ実琴。もう少し我慢しなさい。」
今はまだ早い。もう少し、耐えてくれなきゃ。
「それにしても私の腕輪はいい仕事するじゃない。」
実琴の腕で光る腕輪を眺め呟く。この効果がわからないくらいがちょうどいい。わかるのは全てが終わってからだ。
そして厄介なことに、影くんが余計なことを思いついてしまった。再び熱い溜息を吐く。
実琴に女装をさせる……か……
――なんていい仕事するのよ!! 彼最高じゃない!!
想像するだけでワクワクが止まらない。影くんに向かって惜しみない拍手を送る。そんなことしちゃったら、あの堅物騎士は一体どんな反応をするのかしら。花の都でチンタラしてないでさっさと出発しなさいな!!
腕輪の効果をどのくらい加減するかが腕の見せ所だ。ギリギリを攻めていこう。
――彼の本能をあまり刺激しないように……ね……
ウフッと口角をあげて、女神は再び、愛し子たちを映しだした鏡面を見つめた。
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