第41話 認めざるをえませんでした


「それはそうと…またすごい場所があったもんだね…」


 ジークが神殿を見上げながらつぶやく。


「そうなんだよ!今は明るいからいいけど夜はめちゃくちゃ怖かったからね!!」


 昨日発見した地下室の部屋を案内しながら解読内容を話す。



「というわけで、聖女は何らかの理由でこの神殿内で1ヶ月過ごさなきゃいけなかったみたいなんだけど…なぜかわかる?儀式の一環だとは思うけど…」


「……さぁ。儀式に関しては驚くほど伝わってることが少ないんだ。」


 ジークが眉を顰め言う。


「指摘されるまでそれが当たり前だと思っていたけど…言われれば何かおかしいな。国の最優先事項であるはずの聖女にまつわる話と浄化の儀式が正式に伝わってないなんて…」


(もしかしたら歴代の王族やユースタリア国民はのんびり屋さんなのかな~)


 おとぼけ聖女の残念な頭ではそこまでしか考えられなかった。


「よし、とにかくここを出なきゃ始まらない…

 ミコト!至宝はありそうかい?」



「うん。あるとしたらきっとここしかない…!!!」



 ♢♢♢


 一行は地下から出て

 ―――昨日は絶対に近づきたくないと思っていた祭壇の前に集まった。


 四角い大きな石だと思っていた祭壇は近づいてみると本体部分と蓋部分に分かれ、どちらかと言えば棺のようだった。


 背中をゾクゾクした感じが駆け上がる。


(劇場の時もこんなんだっけなぁ…もう少しわかりやすくしてくれぃ!!)


 心の中で誰にも届かないお願いをしながら祭壇に手をかけ、ありったけの力で祭壇の上部の蓋を外そうと試みる。


「んんんーっ!!!!」


「……ミコト、何やってんだ。」


「ん?何って…とりあえず祭壇があって蓋があるならそれを開けてみるのが鉄板だろ?」


「そういうもんか…?なら代われ。」


 選手交代、アルとニッキー、ジークにバトンパスする。ユキちゃんと2人で応援だ。


(たぶんこういうところにはお宝が…それか呪いのミイラの2択だよね!!)


 ゴゴゴゴゴゴゴッ…

 少しずつ蓋がずれていく。


 ガバァッ!!!

 隙間から白骨の手が勢いよく隙間から出てきた!!


「嘘!!2択外した!?」


「このバカ聖女ォォォォッ!!!」




 ミイラたちは自分で蓋をずらしグチャグチャ音を鳴らしながら次から次に湧き出てくる。

 最初の1体がミコトに近づき手を伸ばす。とっさのことで対処できずにそのまま腕をつかまれ、骨から冷えてくるような冷たさとねっちょりしたミイラの手の感触。地獄の奥深くで渦巻く怨念のような悪寒がミコトに一気に流れ込んでくる。


「ぎゃああああああ!!!」



 やだ。怖い。助けて。

 この世の絶望と悲壮を強制的に注ぎ込まれたようで、頭が真っ白になる。


「ミコト!!」


 ミイラたちを焼き払いながらアルがすぐにミコトの側に駆け寄り、片手で抱きかかえ地面を強く蹴りあげジャンプする。そのままサルの石像の頭部へ着地した。


「無事かっ!?」


「アルゥゥゥゥッ!!!」


 恐怖で半泣きになりながらアルに抱き着く。うちの護衛騎士マジ最強。


「よしよし、大丈夫だ…」


 低音ボイスで大丈夫だと言われると…すごく安心する。泣いているミコトの頭部に時折スリッとアルの頬が寄せられ、まるで頭を撫でられているみたいだ。


 少しずつ落ち着いてきたところで、ミコトはアルの首筋に回していた手をそっと放す。


(―――またやっちゃった…)


 なんでこの騎士は誰よりも先にミコトの所へ来てくれるのだろうか―――

 最後は他の人を選ぶくせに―――


「―――うん。もう大丈夫。落ち着いた。―――降りるね。」


「……気をつけろよ。」


 ゆっくり足を下ろし、サルの角を掴んでバランスをとる。

 それにしてもアルは―――

 片手でミコトを抱きながら、空いた手で剣も持ちつつ角で2人を支えてたのか。

 鍛えられた騎士だから出来る芸当に胸が高鳴る。


 そっと顔を上げた。


 心配の色を隠さずにこちらを伺っていた眼差しは優しくてーーーー

なのにその奥で燃えている熱を知った瞬間、絡めとられるかのように身体が動かなくなり、心臓が早鐘を打った。




(あぁ―――もう…惚れてまうやろぉぉぉぉ!!!!)


 認めた。ついに自分の気持ちを認めてしまった。


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