第37話 ニッキー爆発しました
モンスターを倒して進み…転移され…どこにいるのかわからない場所からまた再スタートをする…
そんな毎日が一体どのくらい続いたのだろか…
正直気がめいってくる…
(太陽の光が浴びたい…鬱になる…)
みんな懸命に明るくふるまっているが、どこか疲れている様子が見え隠れしていた…
転移されるたびに少しずつ魔法陣を書き写してウハウハしてるユキちゃんだけがこのダンジョン内の癒しだった…
(もちろん君も大事だよ…)
首から下げた小瓶の中のちびスライムも大事な癒しだ。最近ではプヨプヨ跳ねながらミコトたちにエールを送っているのだ…娯楽も何もない空間でずっと見つめているとそんな気がしてくる。
良いこともある。毎日実践をしているからか、ミコトの魔法の腕が上がってきた。それはそれで楽しい。
(いつまでもアルに守ってもらうわけにはいかないもんな…)
チラリと横目でアルを見る。もし、ダンジョンから帰還して…例えばロイズの町にアルの運命の番いがいたら…アルは旅を離脱するのだろうか―――ふとした瞬間にそんなネガティブな考えがミコトを襲う。
(アルが他の人の所へ行っちゃうなら…このままずっと……)
心の奥底の感情に気づいてしまったときから、自分自身が怖くて恐ろしくて仕方がない。
(なんで女神は私を選んだんだろう…もっと清廉潔白で器用で素敵な女性はいっぱいいたでしょ…!!)
寝袋に入ってこの一通りの自問自答をして、
オカマに悪態ついて眠るのが最近の日課となってきた―――
♢♢♢
通路を進んでいると、オーク3体が転移して突如目の前に現れた。
前衛のアルとニッキーが剣を構えながらそれぞれ1体ずつ相手にし、ユキちゃんが魔法でもう1体相手にする。ジークはそれぞれの状況を見ながら適宜矢を放ち支援する。
そしてミコトは…
オークの髪の毛を火魔法で燃やして気を反らせたり、水と土魔法で泥を作ってオークを滑らせ転ばせたりと…少々姑息な手を使いながらも順調に支援できるようになっていた。
「いきなり目の前にモンスターが現れることにも慣れてきたっすね…
モンスターのど真ん中に放り出されることにも…
でももういいっすか…
早く外に出たーい!!!!」
オークを倒して一息ついた後、
とうとうニッキーが禁句を口にした…
「わかってる…みんな一生懸命堪えていたのはわかってる…でももう限界なんだ―――うわあああああん!!」
若くて優秀な我らが
「ちょっ…ニッキー!!」
ミコトは心配になりニッキーの後を追いかける。
「おい、ミコトッ!!」
もちろんアルも追いかける。
「……まぁあの二人に任せておけば大丈夫デショ…ニッキーの好物を作って待ってよう。さぁユキちゃん手伝ってくれる?」
「えぇ~なんで僕が…まぁたまにはいいけど…」
全力疾走したニッキーはしばらくいった岩場の陰で力尽きていた。
途中で力尽きたミコトはヘロヘロになりながらやっとの思いでニッキーに追いつく。
アルは余裕で追いつく。
「ごめんなぁ~みんな限界なのはわかってたんだけど…どうしても叫びたくなってしまって…」
ジークに苦労を掛けられているせいで…老けて見えるがニッキーは20歳だ。若さゆえのエネルギーが爆発したのだろう。ちなみにもう一人の若者は転移魔法解読に向けてエネルギー爆発させてるから心配いらない。そしてニッキーより若いと思ってたキラキラ王子は23歳だ。ミコトとタメである。あまり年下に苦労を掛けるな…
「うん。大丈夫だよ。わかってるよ。むしろニッキーがみんなの気持ちを代弁してくれたことで…少し楽になったよ。」
普段は頼りっぱなしだが、たまには年長者として、ミコトは話を聞いてあげた。
「ありがとう、ミコト、アル。話せてすげぇ楽になったわ。こんな年下の少年に悩み相談なんて恥ずかしいけどな!まるで年上のお姉さんみたいな包容力だな!!」
ハハハッといつもの調子を取り戻したニッキーが明るく笑う。
ハハハ…とミコトも乾いた笑いを返した。
(ニッキーこえぇぇぇ。何なの!?忍者の勘ッ!?)
「よし、戻るか。ジークの飯もそろそろ出来上がっているだろう。」
アルに促され、ニッキーとミコトは立ち上がった。
その時だ。
ブウォーーーーン
再び転移音が響き渡る。
現れた魔法陣は…3人の足元だった。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
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