第36話 スライムさんとお友達になりました(一方的に)
作戦会議は行き詰っていた―――
「なんかいいアイテムないかなぁ…離れててもお互いを引き付けあう的な…」
「そんな都合のいいアイテムがダンジョン内に落ちているわけないでしょ…。もっと現実的に考えてよ…。」
あぁでもないこうでもないと議論は進まない。
♢♢♢
階層のレベルが高くなっているだけのことあって、ミコトたちの話し合っている横をモンスターたちがちょくちょく通り過ぎていく。ユキちゃんの結解によりモンスター側は気づいていないが…それでもミコトはビクビクしてしまう。
(あ、スライム…なんか癒されるな~)
獰猛なオークやまるでこっちに誰かいると言わんばかりの目で見つめながら飛んで行ったハーピーに比べたら、プヨプヨ跳ねるだけのスライムのなんとかわいいことか…
ボーっとスライムを見つめながらふとある考えに至る。
「そういえば、分裂してもすぐにくっついたヤツがいたよね…」
「…そういえばいたなぁ。お互いが離れたくないと言わんばかりにすぐに引き寄せられていた…」
グルンッと獰猛な10個の目がスライムを見据えた。
相手は見えなくても嫌な気配を感じ取ったのだろう。ビクッとスライムが震え上がり、倍速でプヨプヨしながら急いで遠ざかろうとする。
「ユキちゃん!!生け捕りだ!!」
「任せて!!!」
先ほどの戦いでコツをつかんだのか…ユキちゃんは結解の檻にすぐさまキングスライムを封じ込め戻ってきた。
♢♢♢
「いかがいたしましょうか隊長!!」
「よし、スライムは檻に入れたまま少し周囲を削り取り、この4つの空き瓶に入れるのだ!!」
「ラジャー!!」
各々小瓶を持ち、スライムを削り取っていく。しかしスライム側も最後の抵抗を見せる!ふたを閉めようとしたその時、ちびスライムはミコトめがけて飛び上がってきた。
「ミコトッ!!」
もちろんミコトに瞬時に避けれるような反射神経はなく…
スライムがミコトの首筋に張り付いた…
ジュワっとした鈍くて熱い痛みを首筋に感じ、ミコトはパニックになる。
「うわああああっ!!溶かされるぅぅぅぅ!!!」
「落ち着け!今とるから!!」
暴れるミコトを片腕で押さえつけ、アルは器用にスライムを掬い取り、瓶に詰めた。
スライムが取れたことで、安堵したミコトはふと冷静になる…
「うわあああああん!!!」
体勢が非常にまずい。地面に寝そべったミコトの上に、アルが覆いかぶさり―――まるで押し倒されているような…
「ゴフゥッ…!!!」
反射でアルの鳩尾に蹴りを入れてしまったが…仕方がない。
乙女には心も身体も―――守るべきものがいっぱいなのである。
♢♢♢
落ち着いたところで小瓶の状態を確認する。
“タスケテー”
“ココカラダシテー”
“クッツキタイヨー”
と言わんばかりにプヨプヨしながらキングスライム側の壁へ体当たりしてすり寄っている。ちょっとかわいくて、引き離したことに罪悪感を覚えるが背に腹は代えられない。
他の洞窟へ試しにニッキーが行ってみたけど、ちゃんとキングスライム側へプヨプヨしてくれた。実験は大成功である。
(早く至宝を見つけて、ここから出してあげるね!!)
勇者ミコトの、運命に引き裂かれたスライム親子救出も兼ねた旅が今ここに始まった―――!!
♢♢♢
「ミコト、さっきのところ赤くなってる。薬を塗るから―――。」
世話焼きアルがポーションをもってミコトの所へやってくる。
「え?赤くなってる??」
自分じゃ首筋はよく見えない…言われてみれば少しジクジクする気がしてくる。
「ああ…この辺……。」
「…ぅひゃ…ぁ!!」
アルの指がふいにミコトの首筋をなぞった。
硬い指の腹に、敏感になった皮膚を擦られて、背中をゾクゾクしたものが駆け上がり、思わず声が漏れた。慌てて口と首筋を抑える―――ジークとニッキーが目を丸くしてこちらを見ているのがアルの背中越しにわかって居たたまれなくなる。
(女の子の声上げちゃった…恥ずかしすぎ……)
当の原因のアルは―――親の仇かとでもいうような鋭い目でミコトを見ていた…
「―――っ…ほら、今塗るから…その手をどかせ…」
ミコトに向かって近づいてくる大きくてゴツゴツした手に、思わずピクリと肩が反応する。
(今触られたら…今あの手に撫でられたら…うわぁぁぁぁぁっ!!)
ピカァ―――
アルに触れられてはかなわん!!そんな必死の思いで…
ミコトの光魔法が上達した―――
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ユキちゃん
「やったねミコト!その調子でバリバリ魔法をマスターするんだ!!」
ニッキー
「何だったんっすか…今のアレ…」
ジーク
「………さぁ?」
アル
(……今、俺拒絶されたか…?)
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