第35話 魔王爆誕と作戦会議

ミコトの頼りない道案内で一行は進み続ける。

明らかに今までとはモンスターのレベルが高くなっているので、だいぶ深くまで進んでいることが予測される。もうミコトが倒せるレベルの敵は現れず、みんなの背中に隠れながら応援し続けるミコトであった。


(頑張れ~!!)



そんな中、一体のスライムが行く手を阻む。

今まで出会ったスライムが、ふくらはぎの高さまでの大きさだったが、これはミコトと同じくらいの大きさだ。


(なんか大きいけど…私の出番かな?)

短剣を構え、張り切って前に出るミコト。


「待て、あれはキングスライムだ。お前の手には負えん。」


残念、アルに止められた。


「そんな短剣だと核に届く前に自分が取り込まれてしまう。ここはユキに任せておけ。」


思わず自分の手元の短剣を見つめた。

ミコトにとっては心強い相棒だが、確かにキングスライムを前にすると頼りなく感じてしまった…


ユキちゃんが左手に小さな竜巻を作り、スライムの方へ衝撃波を放った。

しかしスライムはプヨプヨの体を分裂させ、避けた後にまたくっつき再生する。

その場で踊るかのようにプヨプヨ跳ね、まるでユキちゃんをあざ笑っているみたいだ。


「くっ…ちょこまかと……」


攻撃を放ち、分裂して避けられる…の繰り返しをしている間に段々とユキちゃんが苛立ってくるのがわかった。


(分裂してもまたすぐにくっつくんだな…お互いが引き寄せあって磁石みたい…)


スライムは2分裂だけじゃなくかなり細かく分裂してもすぐにまたくっついた。どれに核があるかわからなくなるところが中々に厄介な敵である。



「フハハハハハッ!!!これでとどめだ…!!!」


魔王のような顔をしたユキちゃんが両手を頭の上に掲げ、特大級の火球を作り放ち、キングスライムはたちまち消し炭となった…



♢♢♢



今日もこの辺で野宿とする。


本日の夕飯は、ジークの水魔法を進化させた氷魔法によって冷凍して持ってきたロビー鳥やホロホロ牛の串焼きBBQだった。ジーク特製の甘辛タレが絶品である。どんなに疲れていてもおいしいご飯は裏切らない…今夜もお腹いっぱいになるまで食べた。


「ミコト、そんなんじゃ足りんだろう。もっと食え。大きくなれんぞ。」


「いや、アル。もう十分お腹いっぱいだから…」


「何言っている。ユキを見てみろ。お前の倍食べてるぞ。そんな小食じゃダメだぞ。立派な男になりたくないのか。」


なぜか今夜のアルは押しが強い。まるで久しぶりに遊びに行ったおばあちゃん家のようだ。


(食べ盛り育ちざかりの少年と比べないでくれませんかー!!私成長するとしても横にしかいかなーい!!)


もちろんアルおばあちゃんにそんなことは言えないので、久しぶりにミコトのお腹は限界突破した。




夕飯後に焚火を囲んで作戦会議をしながらのんびりタイムだ。

少々…いや、かなり苦しいお腹を抱えながら、ミコトも参加する。


「しかし今日みたいにいきなり飛ばされたとあったら大変だぞ。今日はみんな一緒だったからいいものを…」


アルが渋い顔をして考え込む。


「やっぱりみんなで手をつないで仲良く進むしか…」


「却下。」「断る。」「キショい。」


ジークの提案をニッキー、アル、ユキちゃんがすかさずぶった切る。そんな瞬時に否定しなくても…と思うが、もちろんミコトも却下だ。若干1名、気まずい相手がいる。誰とは言わないが!!


(それにしてもこの王子様はなぜ手をつなぎたがる…寂しがり屋か!!)


寂しんボーイは置いといて、ミコトはユキちゃんの方を向いた。


「ユキちゃん、なんかいい感じの魔法ない?」


「あったらもっと早くに使ってる。」


ブスッとしてユキちゃんが答える。


「そっか~、携帯みたいなのがあればよかったけどね~。」


「ケイタイ…?」


ミコトは携帯電話について話す。そのうちにユキちゃんが頬を上気させ、目をキラキラさせてきた。美少女かよ。


「よし、ユキちゃん!!今すぐそれ作れ!!」


名案だ!と言わんばかりに興奮したジークが指示を出す。


「作る!!作りたい!!けど無理だよぅ。研究室に戻させて…!!」


残念ながら現時点ではそれは無理な話だ。ダンジョンを攻略するか、うまい具合に入口付近に転移されることを待つしかない。ちなみにジークは食料を1年分持ってきたらしい。そんな長いことダンジョンにいたら世界滅亡シテルヨ!?


話は振り出しに戻った。

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