第31話 冒険の旅は今ここに始まった!!


「よし!準備完璧!!」


肩から斜めにかけた鞄をポンッと叩き、ミコトは鏡の中の自身を見た。

昨日も今日もぐっすり眠ったため、元気爽快&顔色良好だ。


(寝ぐせだけは勘弁だけどね…)


今日も朝から寝癖を直すのに時間がかかった。これだからくせ毛は嫌いだ。直すのに水を使ったから若干髪が濡れているが短いしすぐ乾くだろう。早く風の魔法を覚えてドライヤーを生み出したいものだ…


「アル~大丈夫?」


「あぁ、あと少しだ。」


以外にもアルは朝に弱いらしい。昨日も今日も動きが緩慢だ。眠そうに何度か欠伸をして目をこする様子も見られる。眠気と戦っているせいか眉間のシワがいつもよりさらに深く刻まれ、今にも何人かヤりそうな雰囲気だ。


(まぁ昨日はジークたちと3人で楽しんでたんだろうしね。)


結局先に寝てしまったので何時に帰ってきたかはわからない。今日が早いと知っているのでそんなに遅くまで飲んでなかったと思うが…なんにせよ酒を飲んだのだ。ミコトが渇望してやまない異世界酒を!!少しくらいアルコールが残ってたっていい気味だ!!とフンッと鼻を鳴らしてアルを待つ。酒の恨みは怖いのだ…


それにしても異世界の鞄はすごい。あの未来から来た青いだるまロボットのポケットのようになんだって収納できる。何日かかるかわからないダンジョン攻略のために昨日ジークが買ってくれた。相当お高いのだろう…ニッキーとユキちゃんがジークに物凄いすり寄ってすり寄って…おねだりしていた。


(王子様が買い渋るって…相当だぞ…)


怖いので値段はみなかったがそれで正解だろう。

ジーク様万歳。

これで女ってことを隠すため着こむ必要がある、ミコトの無駄にかさばっていた洋服たちや見られたくなかった生理用品などについての問題も解決した。この鞄だけは離すもんか!!鞄の上からポンチョを着込み、準備の終わったアルと一緒に部屋を出た。



♢♢♢



「これがダンジョンか~。」


さすが人気ダンジョン。攻略を目的としている人はほとんどいないが、階数を重ねることなくレアキャラに会える確率があるので冒険者でにぎわっている。まぁその分リスクもかなり高いが…

周囲には屋台なども出ていて、まるでイベント会場だ。

それに至宝との噂もあることから、朝早くに出発したにも関わらず結構人がいる。ダンジョン入口に入るための列に並びながら、ミコトはジークに尋ねた。


「ねぇジーク、中に入るとどこの階に転移するかわからないんでしょう?」


「うん、そうだね。」


「じゃあもしもだよ。もしも仲間とバラバラで転移させられたらどうしたらいいの…?」


「……みんなで手でもつなぎながら攻略するかな。」


無策だった。

なにも起こりませんように!!オカマ女神に祈っといた。




♢♢♢



「おおおお…すごい…。」


ダンジョンの入口の外壁は荒削りの石で覆われていたが、一歩中をのぞくと洞窟だろうか、岩壁が続いているのが見えた。


「それでは、神秘の洞窟の未知なる冒険へ…いってらっしゃーい!!!」


列整理をしていたお姉さんに笑顔で送り出される。どっかのアトラクションかよ。

新米冒険者パーティの冒険の旅は今ここに始まった…!!

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