第23話 何はともあれ、1つ目見つけました
「このバカ聖女ぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「ユキちゃぁぁぁぁん!!!!」
間一髪、ユキちゃんが風の魔法で至宝の落下を止めてくれた。
しでかしたことの重大さに心臓が飛び出るかと思った。
登るときに感じた恐怖を感じる間もなく、アルとミコトは急いで下に降りた。
♢♢♢
ユキちゃんのとっさの魔法のおかげで、誰も傷つくことなく、そして無事だった。
下にはジークや姫様以外にも、騎士団や劇団員など多くの人が、ミコトとアルの動向を見守っていた。もしも誰かの頭に加速した石の塊が落ちていたら…と考えるとヒヤッとする。そしてもし至宝が砕け散っていたら……
天才魔導士様様だ。
「申し訳ありませんでした!!!」
平身低頭してミコトは謝る。
あと少しで取り返しもつかないことになるところだった。
「ま、まぁ落ち着けユキちゃん。誰にも当たってないし、至宝も無事だったんだから…」
ジークがユキちゃんをなだめようとする。
「そりゃ、僕がとっさに動いたからだよね!!!どうすんのさ!砕け散って自動浄化装置が二度と動かないなんてことになったら!!!それになに!!ユキちゃんって!!!変な呼び方しないでくれる!?」
ブチギレていらっしゃる。無理もない。ミコトは心の中で大反省会をした。
そして…もう駄目だ、と思ったその時に助けてくれたユキちゃんに感動して…つい勢いで…心の中でしか読んでなかったユキちゃん呼びをしてしまった…
(他の人ならともかく、ジークに聞かれてしまったからには、一生呼ばれ続けるんだろうな…)
恩人に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
落ち着かせようとしている割には、ジークはユキちゃん呼びを止めない。確実に煽りに来ている。
(すみませんでしたぁぁぁぁっ!!)
♢♢♢
ひと悶着あったが、1つ目の至宝を見つけ出すことが出来た。
至宝に込められた高濃度魔力を利用して、新たな魔導具が作られていたらしい。魔導士が至宝を持ち出し、亡くなったのは49年前、そしてロザリーが魔導具を手に入れたのが20数年前…
このタイムラグがどんな意味を持っているのか謎に包まれているが…
1つ目の至宝が聖女によって発見されたことは国民を大いに沸かせた。
そしてここ50年で出てきた強力な魔導具、他の至宝の力によって動かされているかもしれない魔導具について、王城は大々的に情報を求めた。
国中から集まった情報を元に、騎士団が検証しに行く。そうすることで、至宝が使われているかもしれない魔導具のありかについて、いくつか絞られてきた。
♢♢♢
「というわけで、俺たちで旅に出ようと思います!」
ジークの部屋に、ミコト、アル、ニッキー、ユキちゃんの4人が集められた。
「アルだけじゃないんだ!!」
「ん?アルと二人っきりでがよかった??」
ジークがニヤリとしながら茶化してくる。
「いやいやいや、ほら、最初の説明では2人っぽい雰囲気だったから…」
ジークが基本的に面白そうなことに対して目敏くからかってくる性格なのはこの短い付き合いで知っていたが、指摘されて恥ずかしいものは恥ずかしい。顔が赤くなっていることを感じたがミコトにはどうすることも出来なかった。
「二人でアバンチュールは至宝が見つかった後にしてね。魔導具が関わっている以上、専門家のユキちゃんがいたほうが都合いいし、今回のロザリー団長みたいに知らずに使っている人もいれば、知っていて己の利益のために使っている人もいるかもしれないでしょ。その時には俺の権力とニッキーの情報収集力と潜入力が必要だと思わない?場所さえ見つけりゃニッキーがサクッと盗ってくることだって出来るし。」
「ア、アバンチュールって!!!」
「ユキちゃん言うな!!!」
「なんか俺の負担デカくねぇか?あと常々言ってるけど俺に犯罪スレスレのことを強制すんじゃねぇっ!!!」
ジークの発言はツッコみどころ満載だが一理ある。
一週間後、この5人で最初の目的地、“風の都 ウィンドザック”へ向かうことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます