第13話 隠し通路通ってみました

 


 ジークハルト殿下を先頭に一行は暗い通路を進む。


「おい、いいのか…これ王族に伝わる隠し通路だろ…」


「俺もやばいと思う…ねぇ殿下、部外者に知られたら非常にまずいんじゃないかな…??」


 驚いたまさかあの部屋のあの絵の後ろが開いて…


「いいわけねぇだろ。でもこうなったら殿下はもう聞かないんだよ…今までも何度もあったぜ…どうすんだよ~…」


 ニッキーさんの苦労度合いは想像よりもはるかに重症みたいだ。


「ん~まぁ大丈夫でしょ。何かあればニッキーが首ちょんぱ!してくれるし。」


 ひょえぇ!思わずミコトは首を抑える。


「よくねぇよ!俺の仕事を増やすな!!なぁあんたらも頼むぜぇ…この通路のことは…なぁあ……」


 同情を誘うトーンの声で話しながらその目は笑っていない。


(怖い!怖すぎる!!本物忍者に確実に殺られる!!)


 コクコクとミコトは必死に首を振った。



 ♢♢♢


 地下通路というか迷路をジークハルト殿下は迷わず進む。


(これ絶対一人で帰れないなぁ…)


 ミコトは早々に思考を放棄した。覚えていて、ニッキーさんに首ちょんぱされたくないしね!


「あんた大変だな…殿下のあの様子だと頻繁に使っているんだろ…」


「わかりますぅ!?そうなんっすよ、マジでもうしんどい…ガキの頃からあっちへフラフラこっちへフラフラ…お願いします。うまく変装するんで第3騎士団副団長の職と交代してください。大丈夫です。絶対誰にもバレない自信があります。」


「断る!!」


「そんなつれないこと言わないで…っつーかどうします?俺も旦那も物理攻撃が基本でしょ。聖女様は殿下と違って魔法障壁シールド張れないし…もし魔法攻撃で襲われたら…」


「むぅ…そのことなんだがな…」


 なにやら後ろの護衛2人が盛り上がっている。護る者にしかわかりあえない何かがあるのだろう…


「はいはーい、そろそろ着きますよー。町に行ったら俺のことはジーク、もしくはハルちゃんって呼んでね。」


(うん。ジーク一択だな。)



 ♢♢♢


 着いた先はさびれた教会の裏だった。

 ジークは慣れた様子で町の市場まで案内してくれた。


「じゃあ俺のおすすめ片っ端食べまくろうツアーを始め…」


「あぁー!ジークじゃん!!ジーク!!」


 ドーンッと子どもがジークに抱き着いた。その子を皮切りにあれよあれよと子どもがジークに群がる。


「ねぇージーク!かくれんぼしよっ!」


「おままごとやろ!ジークはワンちゃんね。」


「ジーク!この前のお話聞かせて!あれから海賊サムはどうなったの??」


「あぁあ~これじゃ若はもう仕方ないっすね。ミコっさん、アルさんすいませんが行先変更していいっすか?」



 ♢♢♢


 行きついた先は庭のついた大きな屋敷でそこにはたくさんの子どもたちがいた。そしてもれなく全員からジークへのラブコールだ。アイドルかよ…


「保育園…?」


「いや、孤児院。訳があって親と暮らせない子どもたちがいるんだ。」


 大勢の子どもたちに群がられながらジークが答える。背中に3人、お腹に2人、足に4人、両腕に…人気者は大変だね…


「まぁジークにニッキー、また来てくれたのね。今日はお友達も一緒なの?嬉しいわ。」


 屋敷からふくよかな女性が出てきた。



 ここではシスターたちが孤児院を運営しているらしい。先ほどの女性はシスター・アンナだ。こっちがくたくたになるまで走り回っても、子どもたちは無限に動き続ける。ちびっこパワー恐ろしや。ミコトは久しぶりに大声で笑った。ジークとニッキーさん、アルが子どもたちをお風呂に入れている間にミコトは料理の手伝いをさせてもらう。異世界食材は初めて触ったがシスターの優しい指導と子どもたちのお手本でなんとか“ハッシュ”という野菜を切ることが出来た。カブのような形をしているが人参のように甘い。そして目を離すとコロコロと逃げ出すのだ。まな板に乗せるときは真っ二つにするまで絶対に油断してはいけない…


 ハッシュのスープと丸パン、トーベンという豚肉のような肉のステーキが今夜の夕食だ。城では何が使われているのかもわからず食べていたから、異世界食材びっくりだ。またやりたい。そしていつか作るぜ“ハッシュドハッシュ”!ミコトは再戦を誓った。


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