第12話 殿下と愉快な影に会いました

 


「なぁ、どうせこれから国中を旅してまわるわけだし、体調がよくなったら城下町で飯でも食うか?人々の日常生活が知りたいんだろう。」


 お互いの身の上話がひと段落したところでアルが切り出す。


「行きたい!!楽しそう!他にも観光名所とか行ってみたい!」


 せっかく異世界に来たからにはおいしいグルメと素敵な街並みを楽しまなきゃ!ミコトの心は沸き立つ。


「そうか、なら陛下に許可を取って…」


「大丈夫だよー今から行こうぜ。俺のおすすめの所に連れて行ってやるよ!」


 いきなり後ろから声がしてよいしょっと隣に腰掛けてきた、第3王子ジークハルトだ。


「ごめんねぇ二人の語らいの邪魔をして。楽しそうな声が聞こえて気になっちゃって。城下町行くんだろ。誰よりもラスカロッサに詳しい俺が案内してやるよ。あ、もしかして2人でデートしたかった??ごめん~、少年聖女様が熱心に口説いてるところを…」


「別に口説かれてなどいない!男同士の自然な会話だ!!友人と飯に行くことの何が悪い!!」


 アルが顔を真っ赤にしながら反論する。


(きっとその反応がジークハルト殿下のツボに入ってるんだよ…)


 自分のせいではあるが…これから先もいじられるであろう友人へエールを送る。


「しかも今から行くとは、ミコトは病み上がりだ!日を改めて…」


「大丈夫だよアル!もうへっちゃらだって!でも今日いきなり陛下が許可くれるかな…」


「だからこっそり行けばいいんだよ!お忍びで!洋服ダンス開けるぞ!」


 止める間もなくジークハルトは服を選ぶ。


「ミコトはこれ着て、アルは…その騎士服から今ニッキーが持ってくる服に着替えて!」


(ニッキー?誰…?)


 ミコトとアルが疑問を浮かべた瞬間シュタッと目の前に影が舞い降りる。


「うわああああああぁぁぁぁ!!!」


「ミコト声でかい!バレちゃうでしょ。アルも剣をしまって!危ないでしょ。」


 何やってんの、仕方ないなという顔でジークハルトはぼやく。


(いや、天井から音もなく人が現れたらみんなこうなるって!!)


「こいつは俺の影?諜報員?ロナウド・ダールセン。ロナウドだから普通はロンって呼ぶんだけどね、ほら影ってバレちゃいけないじゃない?だからロナウドのナウからいろいろあってニッキーにした!かわいいでしょ!!」


「バレちゃいけないならそもそも俺の本名言わないでくれますかねぇ。クソ殿下。そして俺は何でも屋じゃねぇって言ってるだろ!!服くらい自分で用意しろよ!!」


 半ギレしながらアルに持ってきた服を渡すニッキー。


「えぇ~でもそしたら、ニッキーの名前の由来のもう一つの“毎日愉快な日記をつけているニッキー”って言わなきゃいけな…」


「てめぇなんで俺が日記書いてること知っている!!!読んだんかてめぇおいっ!というか潜入のプロからこっそり日記読むってどんな諜報力してんだ。今すぐ王子辞めてこっちに来い!おい!逃げんな!俺は愉快な日記を書いてねぇ!いたって大まじめだ!!待てコルァアアア!!!」



 着替えててね~15分後にまた来るね~と殿下と愉快なお供は部屋を出ていった。


(ニッキーさんきっと苦労人だ…あと日記読みたい…)


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